グループウェア/ファイルサーバーに散在する「非構造化データ」管理を刷新すると情報管理はどう変わる?
作成者:野田 瑞佳 投稿日:2013年6月21日
こんにちは、SAPジャパンの野田です。今回は、社内のファイルサーバー内の個人フォルダやパソコンに埋もれてしまっているファイルに代表される「非構造化データ」管理の仕組みを刷新し、エンタープライズコンテンツマネジメント(ECM)の世界へと発展させていくための手段と効果について、事例を交えながらご紹介したいと思います。
まず、企業における情報管理の区分けとして、「構造化データと非構造化データ」という種別があります。 (当ブログ「非構造化データの連携による究極のリアルタイムの実現」を参照)
構造化データは、基幹システムのような特定のアプリケーションによりデータが意味ある形で体系立ててセキュアに管理されますが、非構造化データは、文書管理に代表されるようにタイトルやインデックスは付与されるものの、“紙やファイル”のまま管理されるのが通常です。例えば、構造化データをSAPのソフトウェアで管理する場合、「構造化データと非構造化データ」を比較すると下記の通りです。
構造化データは、システムにおけるルールに基づき集中管理されますが、非構造化データに関しては、データ量が圧倒的に多いにもかかわらずその内容の精査がなされないまま散在し、情報漏洩や自然災害によって破損してしまうリスクに常にさらされています。昨今、このように蓄積され続けてきた非構造化データを再編成し、いかに、
- 効率的に非構造化データを管理し、業務効率を向上させるか?
- 非構造化データに蓄積された情報を資産として活用し、インフォメーションワーカーの知識向上に繋げるか?
- 非構造化データに潜む機密情報のセキュリティを強化するか?
- 不要な非構造化データを廃棄してTCO削減を図るか?
が重要なテーマとなっています。以下では、事例を取り上げながらさらに説明したいと思います。
ある製造業のお客様の課題
ある製造業のお客様では、研究開発・設計・製造・販売・サポート・品質管理といった製品のライフサイクルに合わせて、文書・書類の管理、ワークフロー、ノウハウや技術情報の共有をすることが、製品の生命線を支える重要なタスクです。しかし、上述の通り、非構造化情報はファイルサーバーやグループウェアなど、ストレージに溜めこまれているだけで、このような重要なタスクに対し、競争力を付加できずリアクティブに管理しているだけのケースが多いのではないでしょうか?
これから紹介する“製造業のお客様”でも、非構造化データや文書類は長年グループウェアで管理され、企業の成長と共に膨大に蓄積された情報は、現行の仕組みでは立ち行かなくなっていらっしゃいました。
*以降、「非構造化データ」を本掲載の中では分かりやすくするために、“コンテンツ”、 “情報”という表現に変えさせていただきます。
この製造業のお客様が抱えられていた課題は主に以下の7つです。
- 年々増加するデータと共に増え続けるサーバー
- 組織・部門を横断した情報共有の壁によって引き起こされる類似情報の重複や冗長化への対応
- グローバル共通基盤の欠落(サイロ化されたグループウェアシステム)
- 必要に応じて、必要な機能を、必要なだけ作り込んできた結果、時間の経過とともに複雑さが増してしまったグループウェアシステム
- 業務スピードに追い付けないグループウェアシステム(業務の変更に伴いシステム改修が必要になっても、リードタイムが長くかかり業務の変更にシステムがついて行けない)
- 脆弱なグループウェアシステム・情報ガバナンスの欠落
- 老朽化したグループウェアシステムと属人化された運用
これらの課題を抱えたまま運用を続けると、ビジネスチャンスの損失、非効率な業務体質、企業の信頼損失、とビジネスの存続を脅かす危機を引き起こし兼ねない由々しき局面に立たされていました。
お客様の取り組み
上述のような課題を解決し、情報活用の強化による更なる競争力向上を図るために、お客様は以下のことに取り組まれました。
- 情報管理ルール・ビジネスプロセスの改革と全社共通ルールの浸透
- 情報管理システムの改革と全社共通基盤の導入
■情報管理ルール・ビジネスプロセスの改革と全社共通ルールの浸透
1. 情報に対するカテゴリ(分類)を企業内で統一
既存のグループウェアで管理されている情報、今後新たに作成される情報に対して、企業内で共通の分類を付与し、分類に応じた管理方法を適用するルールを設けました。
2. 分類に応じた情報の管理方法の定義
次に、情報を機能というフレームに定義づけ、既存コンテンツの分類を行います。
更に、情報の機能別に「入れ物」(コンテンツの格納先)とルールを定めます。
このように、“情報の分類”→“情報の機能化”→“機能別に情報の格納先を定義”→“格納先の管理ルールを定義”という順でルールを設け、これを全社に浸透させるという一大プロジェクトを遂行されました。プロジェクトの途中、各部門の個別要求が膨らみ過ぎ、“情報の機能”が細分化され過ぎたことに伴い、開発要件が膨らんでしまったこともありましたが、その都度プロジェクトの基本方針である「全社共通のルールと基盤」に立ち返り、個別要件を極力減らす努力をされました。
■情報管理システムの改革と全社共通基盤の導入
お客様の取り組みの実現と情報管理システムの改革のために、全社共通基盤としてSAPが提案させていただいたのは以下のソリューションでした。
SAP Extended Enterprise Contents Management by OpenText (以下、xECM)
企業内に存在する膨大、かつ多種多様なコンテンツを有効的に管理し、インフォメーションワーカーのワークスタイルを改善するために、xECMは以下の機能を提供します。
それではここから少し、xECMの代表的な機能を紹介しましょう。
■文書管理
- 文書の更新に併せて自動的にバージョン管理し、常に最新を表示
- さまざまな種類の文書を扱え、柔軟なカテゴリ設定や更新時の配布・通知が可能
- 複数ファイルでのバージョン管理(バインダーなど)
- Windows Exploreなどのクライアントアプリケーションとの連携
■検索機能
「必要な時に欲しい情報がすぐに見つかる」というのはインフォメーションワーカーにとって、仕事の効率化を図る上では大変重要なポイントです。xECMでは様々な切り口での検索をサポートし、新入社員でも簡単に検索できる仕組みを提供します。
- 全文検索によるファイル内のキーワード検索
- 任意の属性による属性検索
- 属性による動的フォルダ検索
■ワークフロー機能
- 高度な条件分岐やユーザー割り当て、メール通知・自動保管・トレースが可能
- フォームの利用により文書の承認だけでなく、データの承認プロセス管理にも利用
- ドラッグ&ドロップなど簡単かつグラフィカルな定義
■セキュリティ設定
- コンテンツに対して、9つのレベルで権限を設定
- LDAPやADなどの統合認証と、ユーザーを統合管理
- サードパーティ製品との組み合わせで印刷不可制御も可能
■監査証跡
- 文書に対するアクションはすべて自動的に記録され、文書から監査が可能
- ユーザーやワークフロー等でもアクションは記録され、人や業務から監査が可能
■記録管理とアーカイブ
- 文書に対してアーカイブ・廃棄期限など、各種ステータスを設定し管理
- 確定した文書には、外部システムに保管することにより、長期保存を実現
- UDOやアーカイブストレージなどの改ざん防止媒体への管理
■スキャニング
- 紙のスキャンによる取込・保管・ワークフロー連携に対する機能を提供
- バーコードや属性値の利用によるSAPデータとの連携も可能
■プロジェクト管理
- プロジェクトワークスペースの活用による社内外のプロジェクト管理と情報共有
- タスク・担当・期限などによる進捗管理
- プロジェクトテンプレートを使用した効率的な新規プロジェクトの立ち上げ
- ディスカッション機能の活用によるノウハウの集約
■SAPソフトウェアとの連携
冒頭述べた「構造化データと非構造化データ」は、決して相反する分断された世界で管理されるべきものではありません。両者を統合して管理することでユーザーのマニュアルオペレーションを軽減することが可能になります。なぜなら、ユーザーの日々の業務において、一つの業務の中で(例えば出荷業務)、SAPソフトウェアに登録するデータ(出荷伝票)もあれば文書として管理するもの(PDFで出力する納品書)もあり、それらを断続的に見ながら業務を進めているからです。
- OpenText内のコンテンツとSAP ERPなどの基幹システムのデータおよびプロセスと連携した管理を実現
- 基幹システムからの検索参照、及びOpenTextからの検索など密接に連携
- Document Access(データ・帳票・証憑アーカイブ)の機能も利用可能
■コラボレーション機能
- 組織階層とは異なるグループでコンテンツ管理を可能にするプロジェクトワークスペース提供
- プロジェクトワークスペース内でのタスク管理、掲示板、成果物管理
導入の効果と今後の取り組み
長年にわたり運用し続けてきたグループウェアを脱却し、新たにエンタープライズコンテンツマネジメントの仕組みを導入されたお客様は、これまでIT部門でリアクティブに対応してきた運用時間の削減、エンドユーザー部門からの新システムへの満足度、ともに高い効果を得られています。
効果のポイント1:テンプレートによる情報統制
これまで個別ばらばらに作られてきたコンテンツは、テンプレートを適用することにより全社で共通のフォーマットで運用を統一され運用ルールの徹底と共に、情報統制が強化されました。
効果のポイント2:蓄積された情報の一元的管理
これまでグループウェアでは類似の文書が散在していましたが、エンタープライズコンテンツマネジメントシステムにより情報は一か所で管理され、様々な切り口でViewを作ることで、情報を知識として組織を横断的に活用できるようになりました。結果、各地に点在していたサーバーも撤去し、TCOが削減されました。
効果のポイント3:情報漏洩の防止
ファイルサーバーやグループウェアでは詳細な権限管理、詳細な証跡ができませんでしたが(ファイルの「参照・登録・変更・削除」のレベルでしか権限、証跡ログが管理できなかった)、エンタープライズコンテンツマネジメントシステムにより管理レベルが向上し、情報漏洩対策が強化されました。
効果のポイント4:インフォメーションワーカーの業務効率化
エンタープライズコンテンツマネジメントシステムにより、以下の理由からインフォメーションワーカーの業務効率が効率化されました。
- ユーザーが見る情報の鮮度と正確性の向上
- 検索性能の向上により必要な情報に適格かつタイムリーにアクセス
- 「構造化データと非構造化データ」の融合により、これまでのマニュアルオペレーションや情報の不整合による手戻りの低減。
冒頭の「構造化データと非構造化データ」の比較にある通り、非構造化データは企業が保持する情報のうち、全体の8割を占めると言われています。つまり、大部分のユーザーが触れるデータを取り扱うシステムを刷新するということは、ユーザーへの影響度も大きく、簡単に決断を下せるものではありません。また、決断の後も、その推進には少なからずパワーが必要です。
しかし、これを乗り越え新たにエンタープライズコンテンツマネジメントの世界へと一歩踏み出すことにより、検索や文書管理、セキュリティなど、単なる情報管理の質を改善するだけではなく、これまでとは異なる情報のライフサイクル管理、新たなワークスタイルをユーザーに提供できるのではないでしょうか。
本掲載が貴社の情報管理システムやグループウェアの運用、文書管理、コンテンツ管理の仕組みの見直しに、少しでもヒントを提供できれば幸いです。
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