SAP S/4HANAへのシステムコンバージョンの基礎知識:第2回 システムコンバージョンの計画やアセスメントに使用するツールとシステムコンバージョンのステップ


SAP  S/4HANAへのシステムコンバージョンの基礎知識を4回に分けてご紹介します。今回は「システムコンバージョンの計画やアセスメントに使用するツールとシステムコンバージョンのステップ」についてお伝えします。なお、本ブログの内容は2020年12月の技術情報に基づくものであり、将来変更となる可能性があります。

第1回 SAP S/4HANAへの移行オプションとシステムコンバージョンプロジェクトの進め方
第2回 システムコンバージョンの計画やアセスメントに使用するツールとシステムコンバージョンのステップ
第3回 主に気を付けるべきSAP ERPとSAP S/4HANAの機能の相違点
第4回 カスタムコード(アドオン)の移行

システムコンバージョンの計画やアセスメントに使用するツール  

システムコンバージョンを計画するに当たって、まずはSAP ERPからSAP S/4HANAに移行した際にどのような価値向上が見込めるかという情報を収集する必要があります。そのためにBusiness Scenario Recommendations (BSR)というツールが役に立ちます。

BSR

お客様のシステム使用実績情報に基づき、ビジネスシナリオ毎に現在抱えていると思われるビジネス課題・制限事項とSAP S/4HANAにより期待できるビジネス改善機能を提示します。例えば、納期遵守率向上や在庫日数削減が課題として抽出された場合、その課題解決のためのSAP S/4HANAの新機能やアプリを紹介します。これによりSAP S/4HANA化により期待できる効果を理解することができます。

BSRレポートはお客様システムから使用実績の情報を取り出し、SAPにお申込みいただくことで作成することができます。
詳細はBSRブログをご参照ください。

システムコンバージョンによりSAP S/4HANAへ移行する場合の技術的影響と必要なアクションを確認するためのツールがSAP Readiness Check for SAP S/4HANAです。この実行結果はコンバージョンを計画するに当たって最も重要な基礎情報であり、必須のステップとなります。

RC

SAP Readiness Check for SAP S/4HANAはお客様システムの情報を元に、シンプル化される項目の影響・Add-onコンポーネント(SAPまたはサードパーティーにより追加インストールされたコンポーネント)・ビジネスファンクションの互換性・SAP HANAに必要なメモリー・データベースサイズ等の情報を抽出します。

例えば、シンプル化される項目としてGL勘定と原価要素の統合(SI7: FIN_CO)が洗い出され、取るべきアクションとしてプロセス設計・ユーザ教育・カスタムコード調整等が提示されます。このように移行により影響のある項目と、取るべきアクションの方向性が提示されるため、移行計画のための重要な基礎情報となります。

SAP Readiness Check for S/4HANAはセルフサービスで本番機または本番機相当の環境にて実行します。詳細はReadiness Checkブログをご参照ください。
またReadiness Checkは日々進化し、分析できる内容が追加されていますので、実行に当たっては最新のヘルプをご参照ください。

システムコンバージョン計画ではBSR、 SAP Readiness Check for SAP S/4HANAに加えてカスタムコード(アドオン)影響を分析するABAP Test Cockpit (ATC)ツールも重要になりますが、こちらは第4回カスタムコードのブログをご参照ください。

SAPサービス:SAP S/4HANA移行アセスメントサービス

SAP S/4HANA移行アセスメントサービスは上記ツール群の実行結果に基づいて、システムコンバージョン計画立案をご支援します。

Readiness CheckやATCの実行結果に加え、実機の解析やお客様とのディスカッションを実施した上で、移行する為に必要となる作業や検討が必要となるポイントを整理し、分析結果を報告いたします。移行プロジェクトにて考慮すべき機能や設定、アドオン等が洗い出され、プロジェクト計画の策定に寄与します。

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システムコンバージョンのステップ

システムコンバージョンのステップ(準備フェーズ、SUM、後処理)についてご紹介します。

steps

準備フェーズ:

  • Maintenance Plannerでは、Add-onコンポーネントやビジネスファンクションのSAP S/4HANAでの適合性確認を行います。SUMで使用するスタックファイルも作成するので、必須ステップになります。
  • Simplification Item-Checkでは、現行システムをコンバージョンする際の影響範囲を事前に調査します。具体的には、Simplification Itemの関連性チェックと整合性問題の存在チェックを行います。整合性チェックでエラーを解消していることがSUMの前提になります。
  • Custom Code Migrationでは、カスタマ追加開発をSimplification Listと照合し修正必要箇所を抽出します。不要または使用しなくなったカスタマ開発を削除することも検討します。Custom Code Migrationプロセスは、 ①SUMフェーズ前の「カスタムコード分析ステップ」と、②SUMフェーズ後の「カスタムコード調整ステップ」で構成されています。
  • Cross-app & Application-Specific Preparationsでは、システムやアプリケーション依存で必要な事前マニュアル処理を実施します。この中で重要性の高い処理としてCustomer Vendor Integration (CVI)と呼ばれる得意先・仕入先をビジネスパートナーとして登録する処理があり、SUM前の完了が必須となります。(CVI cookbook参照)。また、アプリケーションのデータに不整合があるとデータ移行時にエラーが発生するため、準備段階で早期に整合性確認することを推奨しています。(SAP Note 275536028964002887318参照)

コンバージョン (SUM):

  • テクニカルコンバージョンを Software Update Manager (SUM)で実行します。自動化された一連のコンバージョンプロセスを実施して、対象システムをSAP S/4HANA化します。ソフトウェアがSAP ERPからSAP S/4HANAになり、データのSAP S/4HANAのテーブル構造に合わせた変換も行われます。ロジスティックスのデータ変換はこのステップで実行されます。
    SAP ERPのデータベースがSAP HANAではない場合にはSAP HANAへのDB MigrationがSUM前に必要となります。SUM with DMO(Database Migration Option)を使用するとSAP HANA化とSAP S/4HANA化を一連の処理として実行することができます。

後処理:

  • システムやアプリケーション依存で必要な事後のマニュアル処理を実施します。会計カスタマイズの変換、会計データ変換、また一部のロジスティクスマスターの登録・設定はこのステップで実行します。

コンバージョンステップの詳細については、SAP Help Portalのコンバージョンガイドを確認ください。

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まとめ

システムコンバージョンの計画に使用する主なツールとSAPサービスによる移行アセスメントサービス及びシステムコンバージョンのステップについて概要を記載いたしました。システムコンバージョンに向けて実施するべき内容にご理解いただけたと思います。

下記後続のブログ投稿で、SAP ERPとSAP S/4HANAの機能差分の勘所、アドオン(カスタムコード)の移行についてご説明しておりますので、是非、ご参照ください。

以前・後続のブログ投稿

第1回 SAP S/4HANAへの移行オプションとシステムコンバージョンプロジェクトの進め方
第3回 主に気を付けるべきSAP ERPとSAP S/4HANAの機能の相違点
第4回 カスタムコード(アドオン)の移行