SAP S/4HANAへのシステムコンバージョンの基礎知識:第3回 主に気を付けるべきSAP ERPとSAP S/4HANAの機能の相違点

作成者:内藤 崇投稿日:2021年2月4日

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SAP S/4HANAへのシステムコンバージョンの基礎知識について4回に分けてご紹介します。今回は「主に気を付けるべきSAP ERPとSAP S/4HANAの機能の相違点」についてお伝えします。なお、本ブログの内容は2020年12月の技術情報に基づくものであり、将来変更となる可能性があります。

第1回 SAP S/4HANAへの移行オプションとシステムコンバージョンプロジェクトの進め方
第2回 システムコンバージョンの計画やアセスメントに使用するツールとシステムコンバージョンのステップ
第3回 主に気を付けるべきSAP ERPとSAP S/4HANAの機能の相違点
第4回 カスタムコード(アドオン)の移行

SAP S/4HANAにおける主要変更点情報(標準機能)

現在SAP ERPをご利用いただいているお客様にとって、ご利用いただいている機能がSAP S/4HANAでも同じように利用できるかどうかという点は最も懸念される事項かと思います。SAP ERPとSAP S/4HANAは別製品機能によっては別機能に再配置されているものがあるものの、SAP ERP利用可能な機能スコープはSAP S/4HANAでも概ね提供されています。その上で、SAP ERPからの変更箇所はシンプル化項目 と呼ばれ、Simplification listという文書に全ての変更点が記載されています。Simplification listに加え、変更点を検索しやすくする目的でシンプル化項目カタログというサイトも提供されています。こちらではソースリリースとターゲットリリースを選択することで関連する差分のシンプル化項目が表示可能です。実際にSAP S/4HANA移行を計画される際にはお客様がご利用中の機能を元に関連するシンプル化項目を抽出するReadiness Checkレポートのご活用が必須となります。

smple_List

多くの項目はシステムコンバージョンのステップの中で自動的に変換されますが、一部プレコンバージョンのステップで事前処理が必要な項目やビジネス判断を要するものがあります。以降、多くのお客様に関連する主要シンプル化項目についてご紹介いたします。

1.ビジネスパートナー(BP)

ほぼすべてのSAP ERPのお客様に関連するシンプル化項目がBPマスターです。SAP S/4HANAでは従来個別マスターとして管理されていた仕入先マスター、得意先マスターがBPマスターとして一元管理されるようになります。SAP S/4HANAへのシステムコンバージョンにあたってのプレコンバージョンのステップとして全ての仕入先マスター・得意先マスターをBPマスターに紐づける必要があります。この紐づけを実行するツールとしてCVI(Customer Vendor Integration)を使用します。BPマスターは10桁のマスターであるため採番ルールや番号範囲を検討して頂く必要があります。BPマスターのロールとして存在するようになる得意先/仕入先には得意先/仕入先コードが保持されており、受発注プロセスではこのコードが引き続き利用されるためトランザクションデータへの影響はありません。マスターの登録、変更をBPというトランザクションから実施していただくことになるためマスター登録、変更の運用の見直しは必要となります。(参照SAP Note:  2210486221131222161762430380CVI cookbook

SAP S/4HANAへのシステムコンバージョンではSAP ERP上で事前にCVIを実行し、得意先/仕入先マスターをBPマスターに紐づけしておき、SAP S/4HANA化したのちはBPマスターから登録する運用となります。

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2.与信管理

SAP ERPでの与信管理(SD-BF-CM、FI-AR-CR)の機能はSAP Credit Management (FIN-FSCM-CR) に置き換わっています。それに伴い、カスタマイズやカスタマ与信マスターの移行が必要です。移行ツールは提供されていますが、従来の与信管理とFSCM与信管理には機能差分があり、ツールで移行できない部分もあるため、SAP S/4HANA移行プロジェクトの中でFit Gap分析とGapへの対応検討が必要となります。業務で利用するトランザクションコードやレポートなども変更が発生します。(参照SAP Note:2270544, 2217124

3.固定資産管理

SAP S/4HANAでは新固定資産管理の使用が必須となります。移行ツールも提供されています。新固定資産管理では複数の償却領域でのリアルタイム転記が可能となります。固定資産実績データはユニバーサルジャーナルACDOCAと統合され情報可視性が向上します。(参照SAP Note:2270388

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4.MRP

SAP S/4HANAではMRPの仕組みもシンプル化されています。これに伴い保管場所MRP機能をMRPエリアに置き換えたり、BOMを考慮した生産計画に関連する品目には製造バージョンの登録が必須となっています。マスター登録のフローなどを再定義する必要がありますのでSAP S/4HANA移行プロジェクトの中でFit Gap分析が必要です。(関連SAP Note: 2224371221652822275792226333

 その他移行検討に関係する主なアプリケーションの変更例
※本リストは一部抜粋であるため詳細はSimplification Listをご参照ください。

会計領域

FICO

ロジスティクス領域

sdmm

他のSAP製品との互換性

SAP ERPと密連携して使用されている他のSAPシステムとの互換性も考慮が必要です。各ソリューションで使用されている機能により、制約事項があるケースがありますので、詳細は関連するSAP Noteをご参照ください。また、SAP S/4HANAに組み込まれてきているソリューションもありますがシステムコンバージョンプロジェクトではいったん他のSAPシステムとの連携はそのままの構成を維持して移行することが期間、リスク低減につながります。他のSAPシステムの保守期限を考慮し、SAP S/4HANAコンバージョンプロジェクトと併せて周辺システムのアップグレードを実施されるケースも多いためプロジェクトを計画する際に考慮が必要です。

netweaver

コンパチビリティパックについて

SAP S/4HANA導入プロジェクトにおいて検討が必要なものとしてコンパチビリティパック (=Compatibility scope matrix) にリストアップされている機能の扱いがあります。コンパチビリティパックとは、SAP ERPで提供されていた機能でSAP S/4HANAでは別の機能に切り替わることが決定しているものの、お客様にとって移行に猶予期間を設ける目的でSAP ERPで使用できた機能をSAP S/4HANAでも提供しているものです。ただし、使用権の期限は2025年12月31日までですのでそれまでに代替機能に置き換える必要があります。ほとんどのコンパチビリティパック対象機能の代替機能はリリース済みですのでこれからシステムコンバージョンプロジェクトを実施されるお客様はプロジェクト内で代替機能への移行を検討いただくことをお勧めします。具体的な対象機能についてはSAP Note 2269324 – Compatibility Scope Matrix for SAP S/4HANA on-premiseの添付文書(S4HANA-CompatibilityScopeMatrix-DETAILS.pdfおよびS4HANA CompScope – Way Forward – Info.xlsx)、SAP S/4HANAのヘルプ文書のFeature Scope Descriptionの5章に記載があります。
SAP Blog Post: The Future of Compatibility Packs in SAP S/4HANA

まとめ

本ブログは主に気を付けるべきSAP ERPとSAP S/4HANAの機能の相違点をご紹介しました。SAP S/4HANAへのシステムコンバージョンプロジェクトを計画される際に考慮すべき主要な機能差異のイメージをご理解いただけたと思います。

下記後続のブログで、カスタムコード(アドオン)の移行についてご説明しておりますので、是非、ご参照ください。

以前・後続のブログ投稿

第1回 SAP S/4HANAへの移行オプションとシステムコンバージョンプロジェクトの進め方
第2回 システムコンバージョンの計画やアセスメントに使用するツールとシステムコンバージョンのステップ
第4回 カスタムコード(アドオン)の移行

 

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