村田製作所が挑むニューノーマル時代の人材育成


本記事は、2021年1月14日に株式会社村田製作所(以下 村田製作所)向けに行われたオンラインインタビューを元に構成しています。

サステナブルな社会・企業を目指すうえで、コロナ禍で大きく影響を与えた1つの論点は「企業と従業員との関係の変化」で大きくは下記の通りです。

1.個々の社員の会社における目的意識の高まり
2.リモートワーク化で困難になった人材管理

今回は、まさにこの2つの課題に向き合って先進的な取り組みを進めている村田製作所の担当者の皆様にお話を伺うことが出来ました。

左から松田様、吉田様、高瀬様、津守様

左から松田様、吉田様、高瀬様、津守様

SAP福岡(以下福岡):村田製作所といえばコンデンサや通信モジュールなど、まさに5G環境やEV化に不可欠な電子部品メーカーというイメージを持っています。
その中で、海外を中心に新規事業開発を担っている津守様(以下津守)、営業企画にて人材育成に取り組む吉田様(以下吉田)、高瀬様(以下高瀬)、今回のプロジェクトのリーダーを務められております、松田様(以下松田)にお話をいます。どうぞよろしくお願いいたします。

全員:よろしくお願いします。

人材育成の悩みと構造改革

福岡:まず、常に時代の先端を走る村田製作所での人材の考え方はとても興味があります。そこから教えて頂けますか?

松田:はい。まず、そもそもですが村田製作所は創業者の社是(経営理念)を大事にしています。こちらのサイトでも紹介していますが、”Innovator in Electronics“をスローガンに、時代とともに多様化していくニーズに対して、独創的な製品や技術を通じて社会に貢献していく人材を輩出していきたいと考えています。
従来は、その人材育成の場として集合研修で仮想の課題に取り組む、というやり方が多かったのですが、それだとどうしても個々に対するきめ細かいケアが難しく、「画一的」になりがちで、以前より問題意識を持っていました。
重要な課題がもう一つあります。育成する側もやはり人材開発担当者だけでは限界があり、実務に就いている方々の協力が必要不可欠です。ただ、どうしても協力となると現業と切り離した活動になってしまい、それを負荷ととらえる傾向がありました。

今はDXを実現する技術や、コロナ禍がもたらしたオンラインコミュニケーションの常態化が進んでいる状況です。
こういった内外の環境要因を総括し、「オンラインで効率的に相互が学びを得られる仕組み」が出来ないか、というのが今の新しい取り組みに至る経緯です。(下図参照)

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社外向け育成支援システムの立ち上げ

福岡:オンラインでの教育を模索している企業はよく聞きますが、「相互」というのは、育成する側もプラスになる仕組み、ということでしょうか?

吉田:そうです。まずはこちらの図を見てください(下図)

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我々が今試みている仕組みは、育成する・される側の両方に課題を感じている企業様に対して、オンラインで課題解決のプロセスに関わる寄り添い型の人材育成手法とその事業化展開です。
唐突感があるかもしれないので補足すると、先ほど触れた構造的な課題を解決するために思い切って発想を転換し、社外向けサービスを立ち上げることで社内の人材育成強化を図ることにしました。今は人材不足に課題があり、業種として親和性の高い国内の中小製造業をターゲットにおいています。対象となる方に、我々の「メンター」と呼ぶ育成担当がオンラインを通じて現在抱える事業(業務)にかかわる課題解決を支援し、かつその過程を対象者の上司や育成関係者にも可視化して関わってもらうことで学んでもらい、ゆくゆくはその会社全体で育成の仕組みが自律的に回ることを狙っています。

福岡:これは画期的ですね! まず驚いたのは自社ではなく「社外向けサービス」にしたことです。全体の設計も気になりますが、まずは具体的に受講者とどのようにやりとりしているのかを教えて頂けますか?

高瀬:はい。では1つのサンプルとして1週間のやりとりをご紹介します。(下図参照)

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まず、登場人物として、顧客企業は直接育成を希望する方とその同僚・上司の方です。そして、サービスを提供する我々は、業務を専門とする「メンター」を手配します。
大体1週間を1サイクルとして数か月程度でサービスを提供しています。宿題や今の業務で感じている課題を書いてもらい、メンターがそれに対してメモし、週一回のフィードバックオンライン会議にて上司を通じてフィードバックする仕組みです。第三者からのフィードバックを受ける貴重な機会、テーマ/業務を進めるドライバーとなった、との実際の受講者の声があります。
また、図にあるとおり、各メンターが要するのは週に数時間です。このPDCAサイクルを短周期で回すことで、課題解決力及びその背景にある考え方などを集中的かつ効率的に学んでいただきます。

福岡:なるほど、週に数時間であれば現業が多忙な専門の方でも無理なく参加できますので2つ目の課題解決にもなりますね。

津守:もっと我々が感じている価値は、メンターも「市場価値」として社外の方に定量的に評価されますし、「日本の中小企業を元気にする」という社会的な価値も高い活動ですので、自身の更なる能力向上やモチベーションにも貢献しているんです。つまり、このサービスの真の狙いは、社外への育成支援を通じて自社の育成につながることにあります。
この活動には我々の社長自身も賛同いただいており、今後この社外向けメンターの数を大幅に増やそうとしています。

エコシステムで共創型の社会課題解決へ

福岡:そういうことですね。これはよくできた仕組みですね。最後にこの仕組みを伺いたいのですが、これは御社が個別に対象企業を探して営業しているのでしょうか?特にお互いがヒトを評価するとなると、ある程度客観的なものが必要だと思うのですが・・・。

松田:はい。そこはOUSIAという人事領域を専門にする外部パートナーに仲介してもらい、我々はあくまでそのマッチングを受けての実際のメンター提供社として位置付けています。評価についても、その中である程度中立的な視点で、サービス全体及び個々のメンターに臨んでいます。OUSIAも、ヒトに関わるビッグデータを元に科学的に評価することで新しい人材育成の在り方を模索しており、丁度お互いの目的が合致していたのが大きいです。

下がその図式です。まずは前述の通り人材不足で悩んでいる中小の製造業に絞っており、あとは我々のメンター層の拡充とともに対応できるお客様の数を増やそうと思っています。
今はトライアルが終わって正式提供を始めた、まさに新規事業の市場投入というステージにいます。04

最後に、もう少しこの企画のポイントをお話しさせてください。
我々はこのシステムは1つの施策であり、従業員が自身の価値を最大限発揮できる場を色々と用意することで、「複業」を定着化しようとしています。
もう少しいうと、単に上司から言われたことをやるだけではなく、従業員が自律的にやりたいことを見つけて社会価値を創出できる、そして企業はそういった場を用意して支援する、要は今の時代に合った企業と従業員の新しい関係を構築しようとしているんです。

福岡:なるほど、改めて村田製作所が常に時代の最先端を走り続けている理由が分かってきました。SAPではPurposeと呼んでいますが、御社も呼び方は違えど個々の従業員の内発的な動機付けを非常に重視しているのですね。今回は本当にありがとうございました。

吉田:いえいえ、こちらこそありがとうございます。
まだまだサービスとしてはこれからで我々も試行錯誤中です。同じ志を持つSAPとの協業も楽しみですが、もし読者の皆様でもご関心があればお気軽にご連絡ください。
今のような変革期において、皆さまと新しい社会、新しい働き方を共創できることを楽しみにしています。