ENEOSの変革と新規事業開発の魅力とは?
作成者:福岡 浩二 投稿日:2021年4月20日
本記事は、2021年3月23日に行われたENEOSホールディングス株式会社 様(以下ENEOS)へのインタビューを基に編集しています。
「ENEOS」と聞いて読者の皆様はどういったイメージを持つでしょうか?
人によっては「ガソリンスタンド」をイメージするかもしれません。
実は今ENEOSは、従来の石油精製・販売事業から大きな変革を推し進めています。その変革を牽引している組織が今回のインタビュー先の「未来事業推進部」で、SAPが運営するオープンイノベーションラボ Inspired.Labにも入居頂いています。
多くの企業で既存の事業だけでなく新しい価値を探索していると思いますが、新規事業開発にまでなかなか飛び込む勇気がない、という方々に特にお勧めします。
SAP 福岡(以下福岡と略称):前々からENEOS様の取り組みは注目していました。本日はどうぞよろしくお願いします。まずはじめに、今の所属部門のミッションと活動内容から教えて頂けますか?
ENEOS 未来事業推進部 徳富(以下徳富と略称):徳富です。こちらこそ本日はよろしくお願いします。
未来事業推進部のミッションとテーマ
徳富:まず、未来事業推進部ですが、私は2019年の設立当初から組織異動して関わっています。それまでは長年プロセスエンジニアとして石油精製プロセスの改善を担当していました。
この部門のミッションは「2040年の世界を見据え、次の社の柱となるような事業を開発する」ことで、主に事業テーマとして『街づくり・モビリティ』『低炭素・循環型社会』『データサイエンス』の3つを設けています。
事業評価や投資実行だけでなく、そのあとの具体的な事業創出における伴走まで担っています。
私自身は、上記3つのテーマのなかで『街づくり・モビリティ』、特に「ドローン」に注目して担当しています。この領域への関心もありましたが、ENEOSが全国で既に持っているサービスステーションネットワークを有効活用するうえで非常に相性がよいと感じています。
就任直後の心境と活動
福岡:それまでは全く新規事業開発に関わる仕事ではなかったんですね。正直初めは相当戸惑いませんでしたか?
徳富:はいそれはもう(笑) 当初は正直一体ここで何をするのかが全くイメージがつかなかったですね。ちなみに私の場合は突然の配属という経緯でしたが、今では社内公募による異動者も多いです。背景として、やはり石油産業自体が今大きく構造変化しており、社員の新規事業開発に対する興味・関心が高まっているのだと思います。
ちなみに我々の組織は、外部のスタートアップ企業への投資だけでなく、社内ベンチャー制度の運営なども役割として担っています。
福岡:なるほど、なかなか責任重大ですね。異動直後はまずは例えばスタートアップ投資の基礎を学ぶ、みたいなところから入ったのでしょうか?
徳富:いえ、逆に初めから、アクセラレータープログラムの運営やスタートアップ企業への投資検討にまずは飛び込み、全力で走り回っていましたね。例えば、配属後2か月で6月にAIベンチャーへの投資実務を担当しました。当時はスタートアップ投資の基礎をあまり知らないまま基本的なことを質問しながら考えていく、という繰り返しで、もしかしたら迷惑をかけていたかもしれません。
今思うと、初めから思い切って活動出来たのは、組織としての方針が明確であったことが大きかったと思います。先ほど触れた3つのテーマ、つまりやることやらないことの大枠は設立当初から明確にしていました。そして何よりも「とにかく失敗してもいいから飛び込もう」という言葉や行動を上司が見せてくれていたのはありがたかったですね。
我々の組織のリーダーである矢崎は執行役員の立場でありながら、設立当初からメンバーと文字通り机を並べて日々一緒に、目の前の課題に真剣に向き合ってくれてましたし今でもそうです。日々のそういった上司の姿勢が、私も初めから失敗を恐れずに思い切って活動出来た背景にあるのかもしれません。
福岡:これはすごいですね。よく「心理的安全性」と表現されますが、実現出来ている企業は多くないです。徳富さんの行動力もですが、マネジメントの観点でも見習うべきところがありますね。
「仕事」に対する変化
福岡:次に、徳富さん自身の仕事の変化について聞きたいのですが、やはり以前のエンジニア時代とかわりましたか?
徳富:はい、仕事の進め方と意識の2つの側面があります。まず進め方ですが、以前はプロセスエンジニアとして、石油精製・販売というある程度決まったゴールがありその道筋を改善していくものでした。
ところがこの部門では、まず「ゴールを探す」ところから考えないといけないわけです。
元々エンジニア出身ということもあって、事業のリスクや経済合理性を気にしてしまう頭になっていました。ただ、上司の方針やこの部門での経験を通じて考えが変わったことがあって、それ以前に「将来その会社とどういった世界観を実現していきたいのか」というビジョンの合意とそれを信じられるかどうかが重要と考えています。
それが出来て初めて、実現するためのビジネスモデルやプロセスを考えながら進めていくイメージですね。
次に後半の意識の話なのですが、仕事の接点が社内から社外に変わったことで、以前より世の中の動向に注目するようになりました。そしてなによりも、自分のやりたいことを自由にやらせてもらっているので、仕事そのものへの印象が変わりましたね。
それまでの仕事のイメージは、「既存の枠内でやらねばならないこと」でしたが、今は実は仕事をしているという感覚があまりないんです。これは私だけでなく、一緒にお仕事をさせて頂いているスタートアップの方々からも強く感じますね。
キャリアプランについて
福岡:最後の言葉はビジネスパーソンの憧れの言葉ですね。 ちなみに今後のキャリアプランについてどうお考えですか?
徳富:うーん、なかなか難しい質問ですね。もちろん不安はありますが、現在のこの経験が、キャリアの中でもとても貴重であるとは強く感じています。新規事業開発の活動は、幅広い領域を学び色んな人と対話をするので、仕事の能力と人間としての成長を得られるものと感じます。 ここできちんと力をつけることができれば、たとえ既存事業に戻っても柔軟にやっていけると思いますし、むしろ何かいいものを持ち帰れるんじゃないかという感覚があるんです。
ただ、今だからこそこういったことを言えますが、配属当時を振り返ると、エンジニアの時に描いていたキャリアプランと大きく異なり、一体今後どうなっていくんだろう、という不安は大きかったですね。
そんなときInspired.Labに入居していたのが、同じような境遇の方々ばかりで強い仲間意識が持てたのはとても心強かったです。
改めて振り返ると、自ら考えたやりたいことをやれているという体験の積み重ねはとても大きいのだと思います。その結果として新規事業開発の能力がつき、またそれが自信となって新しい目標を創りあげていくという好循環が生まれるのだと思います。
福岡:「仕事」自体の在り方を考えさせられる言葉ですね。素晴らしいです。最後に、新規事業開発に関心はあるけど飛び込むのに迷っている方に対して、何かメッセージを頂けますか?
徳富:分かりました。では2つほど。
まず、先ほど触れた通り、新規事業開発は本当に自分の能力や人間としての成長を感じられる素晴らしい仕事なので、ぜひ魅力を感じてほしいです。
もう一つ。実は私はこの部門に来るまでは、新しいものを生み出すのはホントに世の中で一握りの、スティーブ・ジョブズのような選ばれし人だと思っていました。でも、突然新規事業開発部門に配属されてゼロから約2年間走り続けて、「実はチャンスは誰にでも平等にあるんじゃないか」ということを今は強く感じています。
福岡:話を伺っているうちに私自身も勇気づけられました。これからのENEOSの変革を応援しています。本日はお忙しいところ貴重なお話をありがとうございます。
徳富:こちらこそありがとうございました。SAPの皆さんともぜひご一緒させて頂きたいと思います。