人事パッケージの比較と人事システム刷新プロジェクト企画の勘所 前編:SAP SuccessFactorsと国産パッケージ、ここが違う

作成者:澤井 一宏投稿日:2021年5月17日

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SAPジャパンでHXMソリューションの技術営業を担当しております澤井です。小職はSAPの運用・保守業務からキャリアをスタートしました。その後BW、BASIS、HRを経験し、以来15年以上人事領域に身を置いております。SAPだけでなく、国産人事パッケージ製品の導入・運用・保守経験も有しておりますので、その経験からこのブログでは、人事システム刷新を検討している方向けに、前後編に分けてSAP SuccessFactors国産製品との違いを概説しつつ、システム刷新プロジェクトで気をつけるべきポイントを解説したいと思います。

前編 :SAP SuccessFactorsと国産パッケージ、ここが違う

後編:人事システム刷新プロジェクト企画の勘所

■人事システムの歴史

最初に、日本における業務システムの歴史から紐解いていきます。日本企業で業務がシステム化され始めたのは1970年代から、当初は大型汎用機・ホストコンピュータが主流でした。その後90年代になるとインターネットの発達と時を同じくして、外資系ERPが日本に上陸し、脱ホスト化が始まっていきます。現在では、ほとんどの企業がERP製品、業務パッケージを利用するようになっています。

history

 

人事領域に目を向けてみますと、1992年にSAPが日本に上陸しています。前後して外資系ベンダーがERPシステムと同時に次々に日本市場に参入、国産ベンダーでは旧ホストベンダーがホストからダウンサイジングしてパッケージ化したものを投入してきます。また、ホスト経験を有しない新興の国産ベンダーも2000年前後に登場。パッケージ内に給与計算機能を保持するベンダーの参入はほぼこの時代までで、2010年以降は、機能を特定の領域に絞ったプレイヤーの参入が活発になってきます。

SAP以外の外資系ベンダー、旧ホスト、新興国産ベンダーに共通しているのは、まずは日本独自の人事制度(終身雇用、年功序列など)、給与規定に対応することから人事システムの機能化を始めていったことです。その後現在に至るまで、基本的にはこれらをコアに置きつつ、近年急速に需要が高まってきたタレントマネジメント機能を付加するという変遷を辿っています。

SAPも当初は他社と同様に、ERPシステムにおける人事領域をカバーしつつ、他社と同様に、どちらかと言えば給与計算システムとしての成長を遂げてきました。

転機となったのは、アメリカ・シリコンバレーで誕生し、タレントマネジメントの分野で世界一に駆け上がっていたクラウドソリューションのSuccessFactorsを2011年に買収したことです。ここでSAPは、ERPシステムの既存人事モジュールにSuccessFactorsを組み込むのではなく、タレントマネジメントに強いSuccessFactorsを人事コアとして、そこに従来の給与計算機能やERP(主に会計)との連携機能を統合しました。これは今後の企業における人事部門の注力業務が、給与計算や税の納付作業から、人財育成・人財活用にシフトすることを予見していた証左と言えるのかもしれません。

■SAP SuccessFactorsと国産パッケージの比較

こうした各社製品の歴史を念頭に置きながら、4つの観点で比べてみたいと思います。

①機能(カバーする業務)

前述したように国産ベンダーは、給与計算業務の効率化がそもそもの出発点であり、日本独自の人事要件に対応することを主眼としています。そのため、昨今の「ジョブ型人事」のような、急速に変化する人事トレンドへの対応に時間が掛かりがちです。

こういったシステム構成は、日本特有の人事制度に対応し続けてきた歴史そのものであると言えるかもしれません。戦後の日本企業は類の無い復興と発展を遂げてきましたが、それを支えていたのが所謂3種の神器と呼ばれる、

・終身雇用

・年功序列

・企業別労働組合

でした。これらを実現するために「メンバーシップ型人事」、すなわち新卒で学生を大量に採用して、ジェネラリストを経年で育てていく人事のフレームワークが確立されました。それに付随して、年末調整を代表とした手厚い福利厚生や企業独自の控除が増えていく歴史を経て、日本の給与制度は非常に複雑化しました。国産ベンダーのシステムは、そういった複雑な日本の給与計算に特化していますので、特に会社控除に関する機能の深さは相当なものです。

これまでの日本企業では、こうした複雑な給与制度に対応することがシステムに求められる第一義とされてきましたが、近年その状況が変わってきています。すなわち、各企業が人材を育成・開発する、タレントマネジメントの機運が急速に高まっているのです。当然ながら、国産ベンダーもタレントマネジメント機能を開発する、既存のベンダーと協業するなどの対策を取っています。しかしながら、そもそもタレントマネジメントの概念がメンバーシップ型にはなかった、もしくは必要なかったため、国産パッケージでは、人材情報の可視化に留まるケースが多いように筆者には見受けられます。

SAP SuccessFactorsの場合は上記のような従来要件に必要な機能は保持したまま、元々強かったタレントマネジメント機能に統合する形で、人事領域全般をカバーしているのが特徴です。

②導入と運用にかかる顧客側の負担

人事システムの利用に必要な導入作業に関わる顧客、特に人事部門の工数や負荷を比較してみます。

国産ベンダーの場合、クラウドといっても実際はPaaS形態なので、導入から運用に渡って全般的に顧客企業の作業が必要です。また、一部のベンダーには顧客自身がシステムを導入するコーチング型の導入モデルがありますが、導入負荷や導入プロジェクトが炎上するリスクがいずれも高く、システムの設定が属人化するリスクも抱えています。

SAPではパートナ企業による導入モデルとなっているので、導入時はプロジェクト推進をパートナ企業が主導します。運用時も、完全SaaS型クラウドであるため、追加・変更箇所の検証を除き、ほぼ全ての法改正対応やバージョンアップ作業をSAPおよびパートナ企業が行います。そのため、システム運用保守作業に顧客企業の手が掛かることはありません。

cloud③利用期間

システムが利用できる期間、という点にも着目すべきです。国産パッケージベンダーとシステムインフラ提供企業が異なる場合、次世代システムへの移行時には、それぞれの保守期限に応じて権利の買い直しや更新が必要となります。また、インフラによっては、利用国に制限があるといった懸念も考えておくべきでしょう。

SAPの場合は、ソフトウェア、インフラ全てを一つのサブスクリプション契約の中で提供しています。オンプレミス形態の時と異なり、SAP SuccessFactorsではソフトウェア、インフラともに保守期限はないので、SAPがSuccessFactorsを提供する限り利用することができます。

SuccessFactorsに限らず、SAPではこうしたクラウドかつサブスクリプション型の提供が主流となっています。システムは保有する時代から利用する時代へ、というSAPの市場に対するメッセージでもあります。

④地域範囲

国産ベンダーが日本国内への展開に留まるのに対して、SAP SuccessFactorsは、日本だけでなく、世界中のグローバル人事への対応が可能です。各国でバラバラな人事要件に対応するため、SAPは30年近く前から各国に支社(日本ではSAPジャパンが相当)を作り、国別の法改正対応を続けています。法改正対応国数は現在では100ヶ国を超え、42の言語に対応していることもSAPの大きな強みです。

 

以上、4つの観点で国産パッケージとSAP SuccessFactorsの違いを見てきました。このような違いが生まれる背景には、製品の成り立ち、ひいては製品コンセプトの違いがあります。

どちらも優れた点、強みといった部分がありますので、人事システム刷新を検討する際は、御社が必要とする要素とパッケージの強味を考慮して選択することが重要です。

■SAP SuccessFactorsと国産パッケージの比較まとめ

上記の観点別に、強み・弱みを簡単にまとめたものが以下の表です。

SAP SuccessFactors 国産パッケージ製品
①機能 ・タレントマネジメントに人事給与を統合・企業固有要件にアドオン開発が必要となるケースがある ・人事給与に強み・タレントマネジメントは人材情報の可視化までであることが多い
②導入と運用にかかる顧客側の負担 ・パートナ主導の導入により顧客側の負荷は低い・大規模な制度変更時は顧客のみで対応が不可となるケースもある ・一部では顧客主導による導入・運用モデル・顧客がシステム専属担当者を置く場合は小回りが効くが、同時に属人化するリスクがある
③利用期間 ・保守期限による制約がない ・ソフトウェア、インフラ共に期間の定めがあることが多い
④地域範囲 ・全世界での利用が可能・国ごとの法改正に対応 ・日本国内での利用に留まり、グローバルに展開するのは難しい

次回は、このような製品コンセプトの違いを踏まえて、人事システム刷新プロジェクトをどのように社内で位置付けて、製品選定していくべきかを解説します。

後編:人事システム刷新プロジェクト企画の勘所

 

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