組織の成長を新たなステージに導くSAPジャパンのD&Iの取り組み
作成者:SAP編集部 投稿日:2021年4月21日
ニッポンの「未来」を現実にするために、SAPジャパンの社員が取り組んでいるさまざまな変革プロジェクトをご紹介する本連載。2回目となる今回は、SAP ジャパンのD&I(Diversity & Inclusion)チームを取り上げます。世界規模で変化する社会やビジネス環境に適応するための「ダイバーシティ経営」。日々の仕事を通じてより多くの充実感や達成感を感じるための「働き方改革」。これらのテーマの実現に向けて全社から集まったメンバーが、どのような活動に励んでいるのか。D&Iチームのリーダーとして奮闘する長谷川直美さんに話を聞きました。長谷川さんの本業は通信業界担当の営業職ですが、その本業に加えて D&I Leaderも務めています。(聞き手:SAP編集部)。

SAPジャパン D&Iチーム リーダー 長谷川直美
組織文化の見直しに向けた独自のD&Iマニフェスト
― 世界中のお客様にさまざまなソリューションやサービスを提供するSAP にとって、「Diversity & Inclusion(以下、D&I)」は非常に重要なテーマの1つですが、まずご自身におけるこの取り組みの経緯について聞かせてください。
長谷川 最初のきっかけは、2018年初に人事本部長主催の社内D&Iセッションに参加したことでした。それ以降、D&Iに関心を持つ社内メンバーの1人として私も参加することになり、小規模ながら活動をスタートしました。そして、2019年末に完成したSAP ジャパン独自の「D&Iマニフェスト」の制作にも参画し、ここからいよいよ本格的な体制作りに着手し、2020年以降は現在のチーム構成で活動しています。
当初の活動は、いわゆる「アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)」と呼ばれる男女間の考え方のギャップを、話し合いの中でお互いに理解していこうといったものでしたが、マニフェストに新たな項目が加わるにつれて、より広範なテーマを含んだ全社的な取り組みに変わってきています。
現在のマニフェストでは、「Global Culture」、「Gender」、「Generation」、「Beyon3G (最初の3つの活動を超える活動)」、そしてそれら全体を網羅して、他社様との共催イベントや、情報交換を目的とした「External Communication」といった5つのイニチアチブごとにチームを設定しています。その中で、私はSAPジャパン D&IチームのエグゼクティブスポンサーであるMurray Bushの直下で、チーム全体を統括するリーダーを務めています。
― チーム構成を見ると、男女格差の解消といった内部課題の改善にとどまらず、SAP ジャパン全体の包括的なミッションとして位置付けられている印象があります。
長谷川 その通りです。一番の基本は「自分たちにとって働きやすい、快適な職場環境を作ること」です。並行して、社外=他の企業や人々とも共有したり、学んだりしながら、最終的には社会全体のD&Iの取り組みに貢献していくことを目指しています。そのためにも、まず私たち自身の組織文化を見直していこうというのが、SAP ジャパンとしての当面の目標です。
「自分ごと」としての共感の中で成長するD&Iチーム
― 現在、すべてのチームで40名を超えるメンバーが参加していますが、これはどういった基準で選抜されているのですか。
長谷川 ありがたいことに、活動の趣旨説明や実績を発信し続けていく中で、「私もメンバーに加わりたい」という声が多く聞かれるようになり、現在のメンバー構成にまで体制が拡大しています。私自身も含め、すべてのメンバーはそれぞれの所属部署での “本業” がありながらも、有志で参加しています。このようにD&Iの活動を「自分ごと」としてとらえ、誰に強制されるでもなくメンバーが拡大していることこそが、チームとしての強さやモチベーションの源泉だと自負しています。
SAPには、D&Iという言葉が一般的になる以前より、有志社員によるさまざまなネットワークグループが世界中にあり、SAPの「Help the world run better and improve people’s lives」というパーパスのもと活動していました。SAPジャパンでもBusiness Women’s Network (BWN) や Pride@SAP と連携した活動もありますし、そのほかにもグローバルには15ほどのチームが存在し、あらゆる課題に取り組んでいます。それぞれの活動には世界中どこからでも参加可能となっており、SAPジャパンでの活動にグローバルの視点も盛り込めることなど、これもSAP Global One Teamの強みだと思っております。
一方、2021年2月に行われたSAP ジャパン全社のキックオフでは、代表取締役社長の鈴木洋史がD&Iの重要性に言及し、全社一丸となって最優先に取り組むべきテーマであることを強く呼びかました。
また、このイベントの前後では、私が各部署のチームミーティングに参加して、具体的な活動や経済産業省が提唱するダイバーシティ経営の指針(※)などをご紹介させていただきました。この時もマネージャーや現場の社員から、「変化の時代に適応していくためにも、D&Iは絶対に必要な取り組みだ」という共感の声が寄せられました。今後も引き続き、D&Iの活動について、経営層や各部門のマネージャーとさらに強力な連携を推進していきたいと思っています。
― トップダウンとボトムアップを融合した変革の加速という、SAPが提唱してきたDX の推進手法そのものですね。また、自らの組織文化の見直しと企業としてのビジネスの成長の両立も考えられています。
長谷川 はい。あくまで第一の目標は「みんなが気持ちよく働くことができる職場環境を作ろう」ということなのですが、これができれば当然各人の仕事のモチベーションは上がり、パフォーマンスも向上して、よりよいアウトプット=業務の成果が生まれ、最終的にビジネスを新たな成長のステージに導いていくことができます。そのためにも現在は、どうすればすべての社員がD&Iを「自分ごと」としてとらえていけるようになるかにチャレンジしているところです。
他社との交流やコラボレーション、外部への情報発信にも注力
― これまでの活動の中で特に注力されているテーマや、得られた成果などがあれば教えてください。
長谷川 2020年からは社内に向けた情報発信、啓発活動だけでなく、他の企業とのコラボレーションイベントなどの機会にも積極的に参加し、社外に活動を拡げる取り組みを進めています。最新の話題では、2021年3月8日の国際女性デーにあたって、日本経済新聞のプログラムに参加して、同紙面にD&Iに関するSAP ジャパン代表取締役社長の鈴木洋史のコメントが掲載されました。
同じくアジア パシフィック ジャパンのマーケティング責任者(常務執行役員 アジア・太平洋地域・日本マーケティング統括 青木桂子)も、国連女性機関(UN Women)のWebサイトに「リーダーから女性へのメッセージ」を寄稿しました。こうした外部に向けた活動の発信が社内にもフィードバックされ、社員の意識改革につながる好循環が生まれるのではないかと期待しています。
また、企業などの団体において、LGBTQなどの性的マイノリティに関するダイバーシティ・マネジメントの促進と定着を支援する任意団体「work with Pride」が策定した職場におけるLGBTQに関する取組評価指標「PRIDE指標2020」において、最高レベルのゴールドを受賞しました。制度の制定だけでなく、性的指向および性自認 (SOGI=Sexual Orientation, Gender Identity) にかかわらず、すべての人が、より自分らしく働ける風土を作っていくことが大切だと感じています。
「顧客から真に信頼されるパートナー」として不可欠なD&Iの取り組み
― SAP ジャパンのD&Iの取り組みが今後どのように進んでいくのか、当面の目標などをお聞かせください。
長谷川 約3年間にわたっていろいろな活動をさせていただき、皆さんのD&Iに対する考え方が少しずつ変わってきていると感じています。この流れをさらに加速するためにも、D&Iを「自分ごと」としてとらえ、日常に根付かせ、裾野をどんどん拡げていく取り組みを、これまでにも増して進めていきたいと思っています。
ちょうど1年前、2020年3月に社内でD&Iに関するサーベイを実施して、各人の興味・関心や実施してほしい施策などを募りました。冒頭でお話した5つのイニシアチブごとに自由に回答を書いてもらったのですが、それぞれ300件近い意見が寄せられて、このテーマに対する関心の高さを再認識しました。今後もこうした声を反映できる施策をどんどん打ち出していきたいと思っています。
― D&Iの取り組みの成果は、これから先のSAP ジャパンとお客様との信頼関係に、どのように生かされていくのでしょう。
長谷川 SAPジャパンでは、「Customer Success(お客様の成功)」を何よりも重要な目標として掲げています。その中で私も自らの担当業務の中で「お客様から真に信頼されるパートナー」として、成功の実現を共に目指しています。こうした中では、D&Iを通じたSAP ジャパンの組織文化を理解していただくことも大きな意味を持っていると考えています。
また、「SAPジャパンビジョン」というSAP ジャパン独自のマニフェストの中には、「多様な価値観や人種、性別、年齢、働き方の違いを尊重し、創造性豊かな文化をつくる」という、まさにD&Iと合致する理念も含まれています。こうしたビジョンを現場の一人ひとりにまでしっかりつなげていくことが、最終的にお客様から信頼いただけるパートナーになる最善の道だと信じて、これからも全社一丸となって取り組んでいきたいと思います。
■関連リンク
連載 vol.1:SAP Japan Customer Awardを通じたお客様の成功をさらに加速させる意識改革
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■参照元リンク
経済産業省|ダイバーシティ経営の推進