支出管理は白糸の滝型?華厳の滝型?

作成者:安部 裕一投稿日:2021年5月17日

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私たちはSAP Ariba導入後のお客様のツールの定着・展開・活用促進を支援する活動をしております。日々の顧客支援活動で感じたこと、思ったことから皆さまにご参考いただけそうなことを発信していきたいと思います。

今回のテーマは「間接材費用のリアルタイム支出管理」についてです。

お客様に支出金額の管理状況についてお話を伺うと、商材別、事業部別、サプライヤー別など様々な項目に分類された過去12か月の支出データを見せていただけることがあります。SAP Aribaを使えばこのようなデータが容易に取れるようになったと喜ばれています。

このように「見える化」によって過去のデータが見えるようになったら、次は今後発生する支出の見通しや、支出の異常値の発見、リアルタイムの支出管理などについても考えてみてはどうでしょうか?

支出を滝になぞらえてみると

白糸の滝という名を持つ滝は、実は日本では北海道から九州まで数多く存在しており、観光名所になっています。

白糸の滝

静岡県富士宮市の白糸の滝

 

場所により規模や流量などは多少異なりますが、白糸の滝は概ね川の水が岩盤の弱いところにしみこんでいき、好き勝手な所から白い糸を垂らしたように出てきています。
日本の白糸の滝は情緒を感じられ、風情があるとも言えますが、次の写真はどうでしょうか?

ナイアガラの滝

ナイアガラの滝

これは言わずと知れた有名なナイアガラの滝。ここまで大量に幅広く水が流れていると人間がコントロールするという気にはなれず、ただ眺めるだけです。

一方で、コントロールできているのは日光の華厳の滝です。男体山から流れ出た溶岩によってせき止められた川が中禅寺湖を形成して、全水量が1か所の滝口から流れ出ています。下流には水力発電所がありますが季節によって水量が変わるため、あまり知られていませんが、電力供給のコントロールや防災の為に滝口近くに水量調節をする施設があります。

日光華厳の滝

日光華厳の滝

滝のメタファーを使いましたが、お気づきのようにこれらはすべて企業の間接材支出の管理を説明しようとしたものです。もちろん、水の流れはお金の流れ、滝口の様子は支出コントロールを表しています。支出がコントロールされていない間接材支出は勝手気ままに流れていき、支出総額が幾らになるかは流れが1つにまとまった下流、つまり経理の月次報告まで待たなければ把握できません。何をいくら発注したかは、最長では数か月後に行われた支払い額でしか把握できないという事もありえます。貴社の支出管理は華厳の滝のようにきちんと管理されているでしょうか?それとも白糸の滝のように自由気ままでしょうか?

支出をコントロールする為には流路の限定が鉄則

支出コントロールができるという事は、発注前に今後の支出の予測ができ、必要に応じて流出する前に流量をコントロールできるという事を意味します。長引く新型コロナウィルス蔓延の影響で、企業の売上予測が大きく影響を受けている中、間接材支出だけが年間の予算通りに執行して良いという事はなく、何らかの制限をかけたいという企業も多いかと思います。

強固な支出管理を行うためには、発注要求は一か所で管理する必要があります。調達購買部署が間接材の支出プロセス、ルール、ツールを明確に定めて、全ての発注要求はそれらを通じてしか行えなくするという事が必要です。白糸の滝のように様々な流路を残していては到底管理ができません。

年間予算の総量は中禅寺湖に溜まっている水に例えられます。発注要求があれば川に流れだしますが、滝口までの間に流量を制限することも可能になります。蛇口の栓を閉めるように、ツールで発注制限をかければ良いのです。発注を制限すれば確実にコストが下がります。

その際に良く聞かれるのは事後発注の問題です。これはATF(After The Fact)とも言われ、購買プロセスや承認を得る前にサプライヤーに口頭やメールなどで口約束の発注意志を伝えてしまう事です。注文書は後付けで送られますが、口頭やメールでも発注の意志を伝えればそれは発注行為になってしまいます。口頭発注をしてしまった後から発注制限をかけてもそれは後の祭りです。ですから、口頭発注やATFは厳禁にしないと支出のコントロールができなくなります。

(契約などで事前に支出を確約しているものは、契約という正式なプロセスに則って納品されるものなのでATFとは異なります。また、納期確保のために「仮発注」というプロセスを採用している企業もありますが、仮発注も正式発注になりますので、発注制限の対象にはできません。受け取り拒否は下請法などの違反行為になります)

支出コントロールの具体的な施策

支出管理、もしくは支出統制はどのようにすればできるのでしょうか?一般には以下のような取り組みで実現します。

全社としての
取り組みに
間接材の予算は事業部が持っていたとしてもそれを自由に使えるものではないという事を役員会や取締役会で再確認し、CEOやCFOから事業部長に徹底します。通常行われているサプライヤーとの交渉による価格低減だけでなく、支出制限によるコスト削減も経営管理指標に入れます。企業の売上を毎月、毎四半期にトラッキングしている企業は多いですが、売上に応じて間接材の支出を毎月、毎四半期コントロールしている企業はどのくらいあるでしょうか?
購買規程の整備 間接材支出に関する会社方針を徹底するための購買規程を全社規程集の中で整備して、全従業員への周知・遵守の徹底をします。重要な条項は以下の通りですが、これらに限定はしません。

  • 間接材の範囲を定義
  • 要求元、調達購買部、経理、承認者の役割の明確化。特にサプライヤーの選定権限、取引の開始・停止、取引内容の監視権限が調達購買部にあることを明確にする
  • 間接材の購入は調達購買部が定めたルールに従い、定められたプロセスおよびツールによってのみ行い、それに準拠しない発注に対して会社は支払いを行わないとともに、そのような発注は懲罰対象になることの明記
  • 事後発注(After The Fact)の禁止
調達購買組織の
位置づけ
調達購買部が要求部署である事業部の傘下にあると、予算執行に対する制限をかけづらいこともあります。欧米や外資系日本企業の多くは調達購買部署をコンプライアンス組織として管理部門に置き、CFOの配下に入れるケースが多いです。
電子調達購買
システムの使用
SAP Aribaのような調達から購買までを網羅した電子調達システムを使用します。その目的はルールに準拠したプロセスや承認フローをシステム化する事によりプロセスを固定化するとともに、様々な便利な機能により購買申請から承認、発注、検収、支払いまでのサイクルタイムを短縮し、要求者の利便性を高めつつ、要求者は各自の本来業務に集中できるようになります。そして、大切な事は、間接材の全支出をSAP Aribaを通じて要求管理~発注管理~支払い承認までを管理することです。

 

まとめ

同じ調達購買のプロセスを拝見していても10社伺えば10通りの考え方があります。調達購買のデジタルトランスフォーメーションを目指してSAP Aribaをご採用いただいたお客様も、どの部分の強化を目指されているかは千差万別ですが、殆どのお客様に共通しているのは「支出の見える化」です。しかしその目的によって、過去12か月のデータで良いのか、リアルタイムに把握したいのか、内容が大きく異なることがご理解いただけたと思います。

今後もツールだけではない調達購買の戦略性に関する話題をお届けしていきたいと思いますのでお楽しみに。また、ブログの内容について更にディスカッションをご希望のお客様は、担当のCEE(カスタマー・エンゲージメント・エグゼクティブ)までお問い合わせください。

第一回ブログ:業務改革:成功事例と失敗事例、あなたはどちらを参考にしますか?

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