SAPジャパンが取り組む「女性活躍支援」について
作成者:鈴木 葉子 投稿日:2021年5月25日
SAPジャパンでは、真に多様性に富んだインクルーシブな組織にしていくために、会社全体でD&I(Diversity & Inclusion)へ取り組んでいますが、本稿ではその中の1つである“Gender Diversity”に関する社内外に向けた取り組みをご紹介いたします。
2021年3月30日、世界経済フォーラムが発表した「ジェンダー・ギャップ指数2021」報告書で、日本は世界156カ国中120位であり、先進国では最下位であることが報告されました。この報告書は、経済、教育、保健、政治の4分野14項目における男女格差の状況を指数化し、国別に順位をつけたものですが、特に「政治」「経済」分野における男女格差が、このような結果を招いたとされています。経済分野における評価の中では、管理職・上級職における女性割合の低さが他の国と比較して目立っていますが、男女間の賃金格差や、非正規雇用における女性割合の高さも、このようなギャップを拡大する要因となっています。
このような対グローバルでの日本社会の課題は、弊社SAP社内においても同様で、SAPグループ全体の女性労働者比率が34%、管理職比率が27%であるのに対し、SAPジャパンにおける女性管理職比率はこれよりも低い数字に留まっています。本稿ではこのような課題に対して、SAPジャパンが取り組んでいる施策をご紹介いたします。(※SAP Diversity and Inclusion Key Factsより)
1.女性登用に向けた男性マネージャー向けの意識改革研修
“Activation Men for Parity”は、男性をターゲットとしたD&Iトレーニングプログラムです。女性活躍の推進には、組織の意思決定に関わっている男性のD&Iへの理解を深めることが重要であるとの認識から、男性マネージャーを対象として実施いたしました。研修の主なポイントは、男性と女性の考え方の違いや、自身が享受している男性としてのPrivilege(特権)について理解し、自分自身でも気づいていないUnconscious Bias(無意識の偏見)に気づくことです。 D&Iのコンセプトについては、頭で理解しているつもりでも、心の底から腹落ちして理解するところまで行かないと、なかなか行動変容に繋げることはできません。また限られたターゲットに対する単発の取り組みで終わるのではなく、より広い対象への継続的な意識改革に向けた取り組みも重要です。SAPではこのようなD&I研修を継続的に実施しています。
2.社員が主導する従業員コミュニティによる連帯と相互支援の仕組み
次にご紹介するのは、社員の自発的な従業員コミュニティによる取り組みです。SAPにはGlobal Business Women’s Network(BWN)という女性社員による従業員コミュニティがあり、プロフェッショナルとしての洞察やベストプラクティス、教育プログラムや経験を共有することで、スキルやキャリアを伸ばし合い、より高いキャリアを目指すことを目的とした活動を行っています。BWNには世界で87の支部があり、合計で14,000人のメンバーが参加していますが、各支部のリーダーは人事部門やD&Iの専任者ではなく別の本業を持っており、ボランティアとして活動を行っています。
日本では、グローバルで活躍する女性リーダーが来日する際に、BWNメンバー向けのキャリア&ネットワーキングセッションを開催し、課題に関するディスカッションなどを行ってきました。このようなイベントでは、女性としてのライフプランと自身のキャリアプランについて、リーダー達がキャリアの転換点で悩んだり迷ったりしながら、自らの力と周囲の協力を得て道を切り拓いてきた個人的なストーリーを聞くことができるため、彼女たちを身近に感じると同時に「自分も挑戦してみよう」と勇気づけられたメンバーも多くいるのではないかと思います。SAPのキャリア開発に対する考え方として、「キャリアのドライバーズシートには自ら座る」というコンセプトがあり、自分のキャリアは自分で作るもの、という前提があるのですが、グローバルリーダー達はまさにこの考えを体現し、自ら社内公募制度やメンタリング、 を活用して自分自身のキャリアを形成しています。グローバルと日本で女性の置かれている状況は異なりますが、パワフルなグローバルの同僚から学び、インスパイアされることは多く、良い刺激を受けています。
3.社内起業プログラムから生まれた、グラミン日本とのシングルマザーの経済的自立支援
最後にご紹介するのは、SAPの社内起業プログラムから生まれた、生活困窮者、特にシングルマザーの経済自立支援を目指す取り組みです。(※SAPプレスリリースはこちら)
現在日本において6人に1人が「相対的貧困」にあるとされており、可処分所得が厚生労働省公表の貧困線を下回っている世帯のうち、母子世帯が占める割合は51.4%と突出して高い状況となっています。また新型コロナウィルス感染症の影響により、非正規雇用者の、女性自殺者の急増にも繋がっていると言われています。
SAPジャパンではこのような社会問題課題の解決のために、就労・求人情報の蓄積とマッチングの加速のための「ソーシャル・リクルーティング・プラットフォーム」の構築を提案し、グラミン日本との連携協定を締結しました。こちらは生活困窮者と企業のジョブマッチングを行うデジタルプラットフォームの構築と運用を目指すもので、SAPの外部人材管理ソリューション「SAP Fieldglass」を基盤として活用し、デジタルスキル人材の育成や就労マッチング等を行うことで、シングルマザーの持続可能な経済的自立を支援するものです。日本社会全体でのデジタル人材不足を背景に、シングルマザーの方々にデジタルスキルを身に着ける支援をグラミン日本が行うことで、就労・定着の支援をします。受け入れ先となる企業にとっては、スキルや評価等の外部人材データが蓄積されることで必要な人材を探しやすくなり、外部人材の獲得及び調達プロセスをデジタル化することができます。また多様な人材を受け入れることで、社内のDiversity & Inclusionをより一層推進することができます。
この取り組みは、プラットフォームを整えるだけではなく、「支援を必要としている人」が実際に利用できる環境を整えることが最も重要なポイントとなります。Diversity& Inclusionの観点から、様々な人材が活躍できる社会を実現するために、この取り組みを広く知っていただき、多くの企業の皆様に興味を持っていただければ幸いです。(より詳しい内容について無料セミナーを開催しております。お申し込みはこちらにて)
本稿では、SAPジャパンが組織として取り組んでいること、社員自身の自発的な課題意識から生まれた草の根活動、そして日本の社会的課題解決に対するデジタルやイノベーションを活用したソリューション提供まで、幅広い女性活躍支援施策をご紹介させていただきました。
SAPジャパンのDiversity & Inclusionの取り組みについてのブログはこちら。