システム開発・運用現場の理想と現実。「出たとこ勝負」から脱却するためのヒントとは?
作成者:大岩 康志 投稿日:2013年7月9日
こんにちは、SAPジャパンの大岩です。私はSAPの中で、システム開発や運用に関わる効率や品質をいかに高め、また改善していくかという、いわゆる「ITマネージメント」と呼ばれる領域を担当しています。私がこの分野を手がけ始めた当初から、お客様のお話をうかがいながらしばしば感じることがありました。その1つに、システムにおける開発や運用の現場における、理想と現実のギャップがあります。そこで今回は「システム運用の負荷を減らして新たな投資を行うために」をテーマに、ビジネスの成長に貢献する新しいシステム開発や運用の考え方、そして仕組み作りのヒントについてお話ししたいと思います。
システム運用のギャップ改善に次代のシステム開発・運用のヒントが
システムの保守・運用に関しては、どこの企業でも法律で対応が義務づけられている部分や、セキュリティーパッチの適用で直接お客様に影響が出る部分については、相応のコストをかけてきちんと対応していますが、これが社内向けのシステムとなった途端、確認作業はそこそこにリリースして関連する不具合については「出たとこ勝負」になってしまうことがよくあります。本当はエンジニアの職人気質(ITのプロとしてのプライド)からきちんと確認してリリースしたいところでありながら、この実態とのギャップは、一体どこから生まれるのでしょうか。
日本人や日本の企業というのは、こだわりを持って優れた品質を実現しようとする姿勢を伝統的に持っています。にもかかわらず、社内向けシステムの開発・運用の現場では、人員不足やコスト制約によりある程度のテストでリリースしてしまいます。障害についても、それこそ「出たとこ勝負」でエンドユーザーから不具合の問い合わせが来ないことを祈るばかりです。これは一部のシステム開発・運用のノウハウが乏しい企業だけのケースではありません。ミッションクリティカルなシステムの代表格といわれる金融機関でも、前職の経験から大なり小なり似たような状況がありました。
こうした理想と現実のギャップは、日本企業の伝統的な勤勉さやきめ細やかさが失われた結果というわけではないと考えています。現にミッションクリティカルなシステムはコストをかけて対応できているのですから、IT投資における優先順位の低いシステムについては、昔ながらの開発・運用の手法が改善されず、そのまま引き継がれていると考えた方がよいでしょう。
ひるがえって見れば、この部分をいかに改善するかというところに、これからの時代の社内システム開発・運用の効率化とソリューション品質を両立させるための重要なヒントが隠れているはずです。
グローバル企業の成功例に学び、変化への対応力を身につける
SAPで仕事をしていると、海外のお客様がどのようにしてシステム改善や業務の効率化に取り組んでいるかについての情報をよく耳にします。そうした企業には、以下3つのポイントが共通しています。
- リスク管理がうまく機能している:何かが起きてから対処するのではなく、リスクを未然に察知して予防の観点から対処している。
- 手作業を極力自動化する:自動化によって人が必要な作業を減らし、省コスト化。手が離れた人材を他の重要な業務に回す。
- 変化への対応力が大きい:特に欧米では、ビジネスの変化に合わせてコストの可否を厳しく吟味し、必要があればドラスティックに組織や運用を変え、しかも決断が早い。
欧米の先進的かつ成長力あふれる企業は、この3つの能力をあわせ持ち、システム開発・運用への投資を極小化すると同時に、投資価値の高いIT領域に資源を集中。本業発展の為の武器としてITを認識し、さらにITを効率的かつ高品質に運用していく好循環を確立しています。私たちSAPは、こうした考え方や手法を積極的に日本にも広めていくためのご提案を常日頃行っております。では、どのように国内で進めていくのか。ここにもいくつかのポイントがあります。
- データ品質の向上:「リスクを未然に防ぐ」という大命題に対しては、データ自体の品質を高めていくことが不可欠。そのことこそが出発点であり、何よりの基本であり、データの活用の源泉となります。
- データ処理基盤の整備:正しいデータがあれば、それを適正に処理する仕組みが必要になる。さらに、そこで稼動するシステムの品質、リスクヘッジという観点からは、予兆を検知する「予兆監視」の仕組みも必要。
- 処理の自動化:自動化により作業の手間を省くことによって、効率化を図る。加えて、属人的作業によるミスの排除効果も。
以上のようなポイントを満たすことによって、グローバルで通用する「変化への対応力」というステップに達することができると私たちは考えています。現在、世界で23万社を超えるのお客様がSAPのシステムを用いて、日々の運用・開発を行っています。その中には、変化への対応力を身につけたすばらしい企業も数多くあります。それらシステム開発・運用におけるエクセレントカンパニーのノウハウを正確に伝え、日本企業のIT力を高めるソリューションとして提供することが、現在のSAPには可能だと私は確信しています。
開発テストのリスク&コストを削減するSAP Quality Center by HP
SAPでは現在、「変化への対応力」を備えたシステム基盤の構築を実現するツールを、アプリケーション開発におけるテストや運用の自動化、データ処理、コンテンツ管理、さらには教育やオペレーションの管理まで、あらゆる領域にわたって提供しています(図参照)。
これらのツールは、SAP Solution Managerによって統合的に管理・提供され、ソリューションのライフサイクル全体をサポートします。すべてのフェーズがITILに準拠して実行され、システムの評価、導入、および運用処理で使用できるツールやメソッド、その他を統合的に管理することで、さまざまなリスクを回避し、開発・運用における自動化が実現されます。このツール群には、現在も毎年新しい製品が追加されていますので、自社にとって重要な部分がどこかを見極めた上で、効率的に投資していただけるようなご提案を行っております。
中でも代表的なツールがSAP Quality Center by HPです。これは、テストの自動実行およびテストに関する情報を一元的に管理することで、開発工程のさまざまな改善効果をもたらすツールです。
企業システムの導入/維持/拡張には、開発状況に応じたテストの実行が不可欠です。とりわけビジネスの変化に応じて柔軟かつ迅速なシステム更新・変更が要求される現在、情報システム部門の負担は高まるばかりです。SAP Quality Center by HPは、テストの自動化やテストデータおよび文書の一元管理を通じて、作業工数とコスト&リスクを大幅に削減し、ソフトウェアの品質を向上させます。
監視ツールで重大障害を90%、障害復旧時間を25%削減!グローバルバンクの事例
テスト以外にも、24時間体制でアプリケーションのパフォーマンスを監視して、障害の予兆検知により障害の発生する前にアクションをとれる仕組みを提供するツールがあります。このツールは、JAVA、.NET、SAPのアプリケーション状態の監視と障害対応のスピードアップを実現します。
世界50カ国でビジネスを展開するある銀行では、インターネットバンキングシステムや顧客サービス系アプリを含む50以上のアプリケーションが、大量のAIXマシン上で稼動しています。同行ではこれらのアプリケーションの監視にWilyを導入し、重大な障害を従来比で90%削減、また障害復旧時間(MTTR)を25%削減することに成功しています。
日本国内でも同様な事例はありますが、さらにグローバルでの先進事例に学び、ノウハウを積極的に取り入れていくことによって、今後数々の注目すべき事例が実現されていくはずだと考えています。
現代におけるビジネスの競争力の源泉は、高いデータ品質と運用効率を兼ね備えたシステムであり、その実現に向けてぜひSAPのツールをご活用ください。日本企業・日本人が得意とする「品質へのこだわり(プロフェッショナル)」「継続的な改善」を活かし、再び大きな成長と成功を実現していくために、ぜひSAPといっしょに前向きに取り組んでいきましょう。
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