人事パッケージの比較と人事システム刷新プロジェクト企画の勘所 後編:人事システム刷新企画の勘所

作成者:澤井 一宏投稿日:2021年6月17日

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前編では、SAP SuccessFactorsと国産人事パッケージの違いを複数の視点から解説しました。後編では、人事システム刷新プロジェクトを、どのように社内で位置付けていくべきかを議論します。

なぜ人事システムを刷新するのか?

人事システムを刷新するきっかけとして、以下のような理由を挙げられるお客様は非常に多いです。

  1. 既存の人事システムが老朽化したり保守期限を迎えたりしたために刷新したい
  2. 新しい人事トレンドを採用するために新しいシステムが必要
  3. 会社統合やM&Aなどで別々の人事システムを使っていたが、人事基盤を共通化したい (もしくは既存1社の人事システムに統合したい)

しかし、今日の企業競争のグローバル化、そして働き手と働き方の多様化を受けて、経営陣が人事に求める役割が変化していると感じることも増えてきました。また、コロナ禍の影響で、現在多くの企業が働き方や組織、ひいては人事のあり方を見直したいという声も聞かれます。

そんな今、人事システムの刷新を単なるシステムの入れ替えではなく、戦略人事に挑戦する変革プロジェクトの一環として位置づけるべきではないでしょうか?

従来の人事部の業務内容

下図は、人事部門の主要な役割と、現状の日本企業でかけられている工数(赤いほど工数が大きい)を可視化したものです。

定期異動や、給与計算、福利厚生など複雑化・肥大化した管理業務に人的リソースを費やしている企業がほとんどで、戦略的な業務に工数をかけられている企業は少ないのが現状かと思います。

それは、高度成長期に確立された日本企業の人事制度が固定化・聖域化してしまったからです。前編でも少し触れましたが、高度経済成長を下支えしたのが日本特有の「メンバーシップ型人事」でした。就職ではなく、就社と言われますが、原則新卒入社から定年までを同一企業で勤め上げる形なので、年功序列の賃金体系や手厚い福利厚生が次々と生み出されていきました。同時に日本独特の新卒採用文化も生まれました。

この高度経済成長、そしてバブル期までの日本の製品がグローバルで強かった時代には非常に強力な人事モデルでしたが、今日のビジネス環境においては、この人事モデルが却って足枷になる場面が増えてきています。小職が日系企業在籍時に遭遇したものも交えて、いくつかの例を挙げてみましょう。

従来の人事モデルの弊害1 人事部の疲弊

とある企業では、年功序列型の昇進制度における中、ポストに上限があり、どうしても昇進できない社員が出てきました。その社員たちの受け皿として社内に福利厚生を担当する部署を作り、そこに前述の社員を据えるようになりました。同様の流れで次々に福利厚生が手厚くなり、その組織維持のために規定も複雑化し、個々の制度 (持株会、財形貯蓄、貸付金、企業団体保険、寮・社宅、保養所、共済組合など) やシステムの運用維持に工数をかけざるを得ませんでした。

また別の企業では、組織の活性化やジェネラリスト育成を目的に、定期的な異動が恒例となっていました。毎年4月、10月の定期異動のために、4ヶ月前から準備するほどの工数がかかる人事イベントでした。定期異動の材料となる情報が人事システムの中には入っていないので、エクセルを駆使した人力バケツリレーを繰り返す必要がありました。また、客観的なデータより人事部員の勘と経験、社内人脈を重視するため、かけた工数の割りに効果が小さいにもかかわらず、やめることができませんでした。

従来の人事モデルの弊害2 海外の優秀人材に対する低処遇

ここでも、実際のお客様の事例を一つ挙げましょう。とある製造業A社は、グローバル展開が順調で、既に海外での売り上げが7割を占めるようになっていました。海外現地法人の生え抜き人財の強化に取り組み始め、中国、マレーシア、ベトナムなどから若手社員を来日させ、3年間の教育とOJTを行ってきました。

この外国人社員は非常に優秀かつ野心的であり、帰国後もその現地法人の主力となって活躍したり、現地プロジェクトでコアメンバーとして力を発揮したりしているそうです。ところが、現状では彼らに対する処遇は日本の年功序列制に基づいているため、活躍したとしても年齢に見合う程度の報酬しか支払えないという点が問題となっています。

一方で海外ではジョブに報酬が紐づいていますので、日本で学んだ経験やそれを活かして活躍した実績があれば、現地の競合企業からより良い待遇のオファーが届き、離職する傾向があるのです。

危機感を抱いたA社では、現在早急なジョブ型人事へのトランスフォーメーションを進めています。

パッケージ標準を活かした業務プロセスの改善

人事システムの刷新を戦略人事への変革プロジェクトとして位置付けるメリットの一つは、業務のあり方やプロセス自体にメスを入れ、人事業務プロセスをシンプル化する意欲を持てることです。

これまでの日本企業では現行業務を聖域化するあまり、人事システム導入・刷新時にアドオン・個別開発がまかり通ってきた歴史があります。

しかし、人事システムを導入する際に効果を上げるベストプラクティスは、パッケージ標準に合わせて業務プロセスをシンプル化し、どうしても合わせられない部分だけアドオン開発をすることです。一つの例として、下図の①から③の順に検討してみることをお勧めします。

ここ最近、SAP SuccessFactorsをご採用頂いている企業様でも、業務プロセスをシンプル化することでシステム導入効果を上げた例が多く見られるようになっています。その中から、いくつかの例をご紹介します。

・サービス企業B社では、結婚祝い金の申請が6段階の承認を必要とするペーパーワークによる業務プロセスであった。SAP SuccessFactors導入を機に、社員による申請後に人事が直接承認し、それと同時に社員の上司に回覧メールを送信するように最適化を実施。付加価値を生み出さない業務プロセスをバッサリと削減することで効率化に成功した。

・通信事業C社では、極力標準機能に合わせる、つまりFit to Standardをプロジェクトの基本方針とし、アドオンの検討については審議会を設置した。As is(現行業務)に固執せず、「今後はどうするか?」というTo beを徹底的に議論し、作り込みは極力抑えることにより、システムコストを従来比で30%削減することに成功。同時に90社10万人以上の社員への展開を、プロジェクト開始からわずか8ヶ月で達成。

今こそ戦略人事への変革を

今、世界は急速な変化に直面しています。企業が生き残っていくためには、企業もグローバルに通用する組織を作り、多様な人財に対応できるように変化していかなくてはなりません。

代替の効かない現行業務や労働組合の壁などもありますので、これまでの人事のあり方や給与規定、マインドそのものを変えるのは並大抵の苦労ではないことも理解しています。その上で、今回の人事システム刷新が単なるシステムの置き換えに終わったり、一部の機能に固執して製品を決めたりするのは、やはり勿体ないと考えます。

これ以上日本企業が世界から遅れを取らないために、SAPがお力になれることがたくさんあると思っています。是非、お声がけください。

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