このカテゴリーでは、次のような取り組みとして認識されたことを賞賛しています。
- Customer Success ServiceまたはCustomer Engagement & Experienceと協力し、Intelligent EnterpriseになるためのSAP ソリューションの採用に成功
- お客様に多く採用されているSAP クラウドソリューションを使用したことによるIntelligent Enterprise 化を実現
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作成者:松井 昌代 投稿日:2021年6月24日
今年で7回目のSAP Innovation Awards。このイベントはノミネート制ではなく、お客企業様やパートナー企業様からのエントリー制で毎年開催されている、先進的革新的な取り組みを賞賛するイベントです。あらかじめ設定された提出期限までに、Awards事務局が定めたエントリーフォームに必要事項を記載して提出する決まりです。今年の提出期限は2021年1月31日。一次選考、最終選考を経て、4月14日に受賞者が発表されました。
発表に際して、SAPのExecutive BoardメンバーのScott Russellは語っています。「SAP Innovation Awardsは、お客様とパートナー様の創造性、創意工夫、チームワーク、およびテクノロジーの驚くべき活用に関して、これ以上ないほど注目に値するストーリーを紹介する機会です。複雑な問題を解決し、業界に革命を起こし、人々の生活を向上させます。私たちは彼らの大胆さ、革新的な精神、そして彼らの野心を実現する決意に敬意を表し賞賛します」
2020年、新型コロナウィルス感染拡大にともなうロックダウンで経済が停滞していると言われ続け、もしかしたら例年のような数のエントリーにならないのではないかと、実はときどきエントリーサイトを見ていたのですが、それは全くの杞憂でした。今年のエントリーは376件。昨年に比べてなんと44%アップ、もちろん過去最高という結果でした。そしてエントリー数のアップは、そのままFinalistや最終的なWinnerに至るまでのハードルがこれまでよりも格段に高くなったことを意味します。
376件のエントリーのうち、72の取り組みが一次選考を通過してFinalistsに、最終選考の結果Winners 20件、Honorable Mentions 4件が決まりました。ハードルの高さがそのまま選ばれた取り組みの素晴らしさに反映され、なんといっても世界が陥ったかつてない事態に怯まず立ち向かい打開していく、深い示唆のある取り組みにスポットライトが当たりました。
SAP Innovation Awards 2021 Winners
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今年は今まで以上に、これまでの「業界枠」の概念で捉えるだけではもったいない、業界横断の、広い意味で社会に向けた貢献が窺える取り組みが選ばれていることが大きな特徴です。
今回も、SAPジャパンの業界スペシャリストであり、「Beyond 2025 進化するデジタルトランスフォーメーション」「Hope for tomorrow — 進化するデジタルトランスフォーメーション」の執筆メンバーが、それぞれの取り組みを敢えて業界横断の視点で分析し、インサイトを提供いたします。
このカテゴリーでは、次のような取り組みとして認識されたことを賞賛しています。
コンサルティング業界の雄、アクセンチュアが2019年に続いて受賞しました。取り組みはグローバル企業であるアクセンチュア自身の資金流動性管理。もともとグローバルシングルインスタンスのERPでビジネス運営していたアクセンチュアが、SAP S/4HANAをクラウド化したことで実現したデジタル資金管理はまさに王道の取り組みであり、全てのグローバル企業が参考にできるものです。毎年多くのプロフェッショナル・サービス企業がSAP Innovation Awardsにエントリーしていますが、アクセンチュアはWinnerになることでの価値を知り尽くしているのかもしれません。
顧客の「範」たるために先を行く — アクセンチュアの資金流動性管理(久松 正和)
医学の分野で国際的な評価を集めるハイデルベルク大学病院。2020年、新型コロナウィルスが例外なくハイデルベルク大学病院のあるライン・ネッカー大都市圏を襲い、これまでに経験したことがない緊急医療案件が急増する中で、医療従事者たちが可能な限り患者に最適な治療を提供するには何をしなければならないかの判断を迫られたとき、彼らは新たな課題には新たな行動で対応する必要があると即座に行動。かねてより強固な信頼関係を築いてきたSAPとともにデジタル技術を駆使した病床と機材を管理するしくみを1週間で構築しました。もう、システム開発が課題克服の足枷になる時代は終わった。そのことを強く感じさせてくれます。
新型コロナウィルス感染拡大に立ち向かう – 新たな行動で難局を打開したハイデルベルク大学病院(松井 昌代)
このカテゴリーでは、SAP S/4HANA または SAP Digital Supply Chain ソリューションとBusiness Networksを活用してエンドツーエンドのビジネス変革を達成したことを賞賛しています。
世界第2位の石炭供給企業は、脱炭素社会に向けて今後縮小していくことが予想される産業に属します。それでも今は、社会を経済を人々の暮らしを支えている産業であり、いきなりビジネスを止めるわけにはいかないのです。社会が大きく変化するとき、否応なしに縮小していく産業があるのをなくすことは不可能です。もし自分がその産業に関わる人間だったらどう立ち振る舞うのか。想定した未来に向けて、前向きにアグレッシブに身仕舞いをしていく彼らの姿勢からは、業界を超えて、否、人の立ち振る舞いとして学ぶべき点が多くあるように思います。
山東能源集団:Intelligent Enterpriseによる超巨大企業の自己変革(東 良太)
ビジネスの成果を勝ち取るために必要な選択。スポーツカーメーカーのPorsche AGと大手自動車部品メーカーのSchuler AGの両ドイツ企業がジョイントベンチャーで設立したボディプレス部品のSmart Press Shop GmbH & Co.KGは、ビジネスプランに描いた結果を出すために、自動車部品サプライヤとしては前例のない、クラウドベースERP & MESによる基幹システムを早期に立ち上げ、見事に成功しました。要求レベルの高い自動車産業の基幹システムや製造実行管理システムにおいてもクラウドが適用可能であり、クラウドの機動力の高さを実証。まさにBusiness Innovatorの称号にふさわしい取り組みです。
投資対効果を早期に刈り取る、世界初のDXを実践するボディプレス部品メーカー(山﨑 秀一)
パートナー企業を巻き込んで洗練されたカスタマージャーニーを描くイスタンブール空港(桃木 継之助)
このカテゴリーでは、SAPのIntelligent Suite またはIndustry Cloudを含む次世代アプリケーションを開発し、(あらかじめリスト化されている)高度なテクノロジーの少なくともひとつを使用しているパートナーを賞賛しています。
馬術競技は多くの方にとってあまり馴染みがないかもしれませんが、欧州では多くのファンがいる競技です。馬術競技も他のスポーツと同様、競技面、運営面、ファンエンゲージメント面と様々な点において、国際馬術連盟が主体となってデジタル化を押し進めています。Equiratings社は、馬術競技においてデータ活用を中心としたサービスを協会、チーム、選手、ファン向けに、SAPと共に提供してきた会社です。コロナ禍で馬術競技も数多くの大会が中止される中、Equiratings社が提供する、実際の競技から得られるデータを活用したアプリケーションは、ファンに対する新たなアプローチとなり、競技そのものの新たな価値を見出しました。スポーツがインスパイアしてくれる未来をビジネスに生かしてみませんか。
馬術競技から見たデータの持つ可能性 – Equiratings社が開いた新たな扉(佐宗 龍)
このカテゴリーでは、社会、環境、あるいは経済にポジティブな影響を示し、世界をより良くし人々の生活を向上させるという目的を示すためにSAPソリューションの活用をハイライトしたストーリーを賞賛しています。SAPのCorporate Visionが受賞クライテリアに織り込まれた唯一のカテゴリーです。
世界を襲った新型コロナウィルスの脅威は、モロッコももちろん例外ではありませんでした。例外だったのは、モロッコ保健省とアフリカ初のSAP公認パートナー企業であるALGO Consulting Groupの目を見張る決断力と機動力、そしてコミットメント。これまでのやり方にも他の国のやり方にも引きずられることなく、モロッコの人々の命と生活を取り戻すことだけを考え、2週間で「新型コロナウィルスリアルタイム監視システム」を構築し、なんと2020年3月1日に稼働させました。その事実のみならず、その後もモロッコ全体に与えた影響には、気づかされたこと、今後に生かしたいことが満載です。
取り組みからの示唆を再考する – 審査員がモロッコ保健省に込めた思いとは(松井 昌代)
このカテゴリーでは、次のような取り組みを賞賛しています。
重厚なハードウェアを構築する伝統的な企業が、新しいビジネスモデルを模索している話はよく耳にしますし、その際にデジタル技術を活用して・・・、これまたよくお聞きする話です。イギリスのエンジニアリング会社コスタインは、長年培ってきたエンジニアリングのノウハウに加えてデジタルのノウハウを持つことで、英国政府が主導するデジタルプラットフォーム構想のうち、社会インフラ部門である 「Intelligent Infrastructure Control Center(略称IICC)」の取り組みを主導するパートナーに選ばれました。エンジニアリングとデジタルふたつのノウハウによってビジネスモデルを進化させた彼らは、プラットフォーム向けのITソリューションを提供することだけでビジネスを成立させています。さてその鉄則とは?
エンジニアリングとデジタル ふたつのノウハウを持つ強みで新たな価値を生み出すコスタイン(英)(土屋 貴広)
常に各国各種規制要件を厳密に満たし、顧客体験レベルを維持・向上させることを求められる金融機関。一方で激動する世界経済の影響に即座に対応することも必要です。成長し続けるPayPalは、リスクとコンプライアンスなどの規制要件を満たし、加盟店へより高いマージンを提供し、顧客体験を改善するというプレッシャーの下で、高度なデータ分析、増幅するトランザクションを迅速に処理するため、拡張性を持ちスケールアウト構成で動作するSAP HANA、そして銀行・証券、保険および再保険会社、新規参入やフィンテック企業向けに最適化された包括的な金融商品補助元帳のSAP S/4HANA for financial products subledgerのクラウド化に向けた検証を、2020年4月から9月にかけてSAPとGoogle Cloudの共同チームとともに実施しました。
システム制約からの解放に向けて踏み切ったPayPal(前園 曙宏)
例年よりも高い競争率だったことから、Finalistsの中にも深い示唆のある取り組みがいくつも見られました。
アメリカンエアフィルタ社はその名の通りUSに本社を置く空気清浄フィルターを製造販売する企業です。世界22カ国でビジネスを展開し、特に欧州地域のビジネス集中度が高かったものの、基幹システムは異なるベンダー製ERP 13基を含む複雑なITインフラで構成され、しかもSAPのシステムはひとつも存在していませんでした。彼らは非効率から脱出するためにSAP S/4HANA Cloudを採用し、業務プロセスを標準化することで変革をサポートしました。初めてのSAP、初めてのクラウドシステム。私たちは世界中の企業が既にSAPの製品を使いこなしていらっしゃるとは決して思っていません。ビジネスの急拡大ゆえにオペレーションの標準化が進んでいない、多くのこれからの企業にとっての指針となる取り組みとしてお勧めします。
AAF アメリカンエアフィルタ社 COVID-19対応でビジネスプロセスの速度を上げる(古澤 昌宏)
「職人技」といわれる業務が現時点での企業価値の源泉であるとして、予測不能な事態が起きたときでも職人技で全てこなす目処は立っているでしょうか。その価値を将来に渡って維持するための方策は採られているでしょうか。ボーンズ社はこれまで培ってきた顧客からの信頼を損なわないために、「職人技」と言われていた業務をデジタル化することを選び、未来への道筋を見出しましたが、その取り組みは2021年のAward獲得には結び付きませんでした。しかしその理由を探ることで、世界の動向を推し量ることができます。
職人技は属人業務 – 築いた信頼を未来に橋渡すためのボーンズ社の選択(柳浦 健一郎)
日本では公益大企業のイメージが強い通信企業ですが、海外、特に新興国では実は国内に閉じたローカル企業が狭い市場でGAFAのような巨大グローバルIT企業と地域戦を展開しています。2020年にFinalistだったGlobe(フィリピン)はエンタープライズ・アーキテクチャーの更新を、Telecom Argentina(アルゼンチン)は人材活用を、2021年のFinalist、Telefonica(スペイン)は、人材のリスキリングを、それぞれ進めています。それらは全て、この先通信業界にデジタル化の大波が押し寄せたときを想定した企業体力増強のために他なりません。
業界が変容するとき、デジタルは何ができるのか? ~世界の通信企業にみる取り組み~(久松 正和)
7回目のSAP Innovation Awards。私たちが受賞者の取り組みからのインサイトを皆様にお届けするのは4回目です。これまでと比べて、特に今年は、世界を襲った新型コロナウィルス感染拡大に直面して、立ち向かう人の覚悟と行動が浮き彫りになって見えた気がします。ウィルスは相手を選ぶことなく、押し並べて人類を襲ったのに、行動した人とそうでない人がいて、行動した人によってデジタル技術が活用され、社会を、人々の生活をよりよくしていく・・・。業界を問わず業務を問わず、様々な事象からインサイトを得て、個として課題に立ち向かう能力を高めていきたいとつくづく思いましたし、またそれを見越したように、従業員の能力を高めることに注力を始めた企業の取り組みに背中を押されたような気がいたします。お読みいただいた皆様にとって、何らか日々のビジネスのヒントになりましたら幸いです。
2023年10月4日
2023年9月15日
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