マクラーレンとメルセデスAMGが実践!超膨大センサーデータのリアルタイム解析による予見分析

作成者:瀬尾 直仁投稿日:2013年7月16日

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SAPジャパンの瀬尾です。本連載の第1回では、新しい予見分析ソフトウェアであるSAP Predictive Analysisが登場した背景や特長、またビジネスにおける可能性についてご紹介しました。今回は、実際にこの製品を活用して大きな成果を上げている事例をいくつかご紹介していきましょう。

マクラーレン:F1レース本番中のデータ解析で、勝敗を90%の確率で予見

第1回目のSAP Predictive Analysisの特長紹介の中で、ERPをはじめとする業務データとセンサーデータなどを組み合わせて分析することによって、「現在の状態から推測して、次に何が起こるか?」を予測することで、障害や事故を未然に防ぐ“予見分析”が可能になることをお話ししました。それを応用して、世界最高峰の自動車レースで大きな戦果を収めているのが、F1グランプリの名門チーム、マクラーレンです。まずは、こちらの動画をご覧ください。

YouTube: マクラーレンをSAP HANAでもっと速く!徹底したデータ主義が変えるビジネス

ご存知のようにF1では、最高時速300キロを超える極限状況の中でエンジンの耐久性やボディの剛性が試され、ほんのわずかな変調や障害が敗北につながります。マクラーレンでは、走行中の車両に取り付けられた120個のセンサーからあらゆるデータを収集し、毎分1,000回のシミュレーションを実行して、サスペンションの動きやエンジンの挙動を解析しています。こうしてマクラーレンは「あと何分でタイヤや各種部品を交換するのが最適か?」といったことまでを予見分析し、そのタイミングに合わせてピットインの指示を出して、部品交換やチューニングを行い、常にマシンをベストの状態に保つのです。

この結果、現在ではほぼ90%の確率で、そのレースの勝敗が予想できるといいます。従来のいわゆるBI分析の利用では、たとえば売上の予測値を次期の販売施策・計画に利用するといった、あくまで“分析”にとどまっていました。しかし、このマクラーレンの事例では、データ分析からその結果に基づく現場のオペレーションの実行までが直結しています。これがSAP Predictive AnalysisソリューションとSAP ERPを組み合わせたリアルタイム解析の大きな特長であり、成果なのです。

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120個のセンサーからの情報をリアルタイムにダッシュボード化

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ダッシュボードからさらにBOMデータと連携してパーツごとにドリルダウン分析

メルセデス AMG:製品テスト工程の効率化を推進し、大幅な効率アップを実現

マクラーレンの事例はレース中のデータをいかにリアルタイムで分析し、その瞬間ごとの対応に生かしていくかという試みでした。同じ自動車の分野でも、このリアルタイム分析の応用範囲を生産管理や品質管理などのサプライチェーンにまで拡大したのが、メルセデス AMGの事例です。メルセデス AMGは半世紀近い歴史を持つメルセデス・ベンツのチューニング部門として知られ、きわめて高い技術力を背景に高級チューンドカーの生産や、F1などのモータースポーツにおけるメルセデス公式チームの技術サポートを担っています。

一般の自動車のエンジン工場では、完成品のいくつかを抽出してテストを行い、たとえば90%以上正常に動作すればOKといった「任意抽出テスト」が主流です。しかし、メルセデス AMGが手がける高級車エンジンは「全点試験」、つまり1個1個のエンジンすべてに対してテストが行われています。

このテストには、1回につき50分かかります。しかも、50分間稼働させて問題がなければ良いのですが、センサーが途中で明らかにおかしな反応を示しても、従来のプロセスでは50分間すべてのチェック項目を行う必要がありました。すべての項目のデータが出揃った後にバッチで収集し、分析が行われていたからです。しかも、エンジンにおよそ300個のセンサーを取り付けて行われるテストでは、圧力の増減の繰り返しによって、毎秒3,000~3万件程度のデータセットが発生します。1セット50分間のテストとあっては、総データ量は膨大なものになり、テスト終了後にこのデータ分析を行うだけでも大きなタイムロスの原因になっていました。

ここに劇的な変化をもたらしたのが、SAP Predictive AnalysisSAP HANAの組み合わせです。ここでは、テストの50分間に発生するデータすべてを、テスト終了を待って解析するのではなく、「最初の2分間にセンサーデータがどういった傾向を示すと、そのテストは失敗するか」といったパターンをあらかじめSAP HANAに登録しておくことで、最初の2分間でテストを続けるか中止するかを判断できるようにしたのです。この結果、これまでのように、失敗するとわかっているのに残り48分間を無駄にしなくて済むようになり、しかもテスト中の結果は、SAP BusinessObjects Mobileを使ってリアルタイムで計測することもできます。

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図:パターン分析によって最初の2分間でテストの可否が判断可能に

リアルタイム分析で業務と情報を一体化させた新しい形の業務革新

メルセデス AMGのソリューションの内部では、どのような動きが行われているかを見てみましょう。まず、検査の内容そのものはSAP Business Suite、つまりERPの中に格納されていて、それに対してSAP HANAによるパターン解析を行います。テストの現場からは、エンジンに取り付けられた300個のセンサーからテストデータが逐次送られてきます。これをETLソリューションであるSAP  Data Servicesを介してSAP HANAに取り込みます。

一方、SAP Predictive Analysisでは、SAP HANAに蓄積された過去のデータからモデリングして「このパターンなら成功する。このパターンなら失敗する」といったロジックをあらかじめSAP HANAの中に格納しておきます。テスト本番では、リアルタイムで送られてくるデータとそのロジックとを照らし合わせながら、現在進行中のテストの成功、失敗を判断していくのです。

このERP内部のデータとセンサーから得られるリアルタイムのデータとを組み合わせて解析できるという点は、ERPを中核にシステム展開を進めてきたSAPならではのアドバンテージであり、他社では実現できないソリューションだと言って良いでしょう。テスト結果をリアルタイムで分析・判断できるようになったことが、エンジンという重要な工程管理に非常に強力なイノベーションをもたらしました。このメルセデス AMGの事例を簡潔に表現するならば、「OLAPによるデータ分析」と「モバイルでのリアルタイム監視」、そして、「SAP Predictive Analysisによる予見分析」の3つをSAP HANAが統合的に解析し、その結果をSAP Business Suiteにフィードバックすることで、「業務=マテリアル」と情報「データ」を一体化した最新のケーススタディだと言えるでしょう。

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図:3つの異なる分析結果をSAP HANAが統合解析して業務判断につなげる

次回は風力発電や生活水の供給システムなど、社会の重要なインフラ領域においてもSAP Predictive Analysisが多大な貢献を行っている事例をご紹介します。

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