味の素グループのビジョン実現に向けた挑戦

作成者:福岡 浩二投稿日:2021年7月30日

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本記事は、2021年5月24日に味の素 株式会社(以下味の素)向けに行われたオンラインインタビューを元に構成しています。

SAP福岡(以下福岡):味の素は日本で知らない人がいないともいえる有名企業ですが、なかでも私が興味をひかれたのが、この近年にビジョンから再設計して全社一丸となって実現に向けてチャレンジしている姿です。
今回は、その推進を担っている当事者の方々から、中からみたお話を色々と伺おうと思います。
よろしくお願いします。
味の素(全員):こちらこそよろしくお願いします。本日は下記のメンバーでお話をさせていただこうと思います。
(左から順に)
野坂 千秋 様(以下 野坂) :取締役 執行役専務 ダイバーシティ・人財担当
島上 陽子様(以下 島上)  :経営企画部シニアマネージャー
大串 紀之 様(以下 大串) :グローバル人事部シニアマネージャー
福岡:まず、今のビジョン実現に向けた活動に至る背景から伺いたいのですが?
野坂:はい。まず、では現在の取り組みに至るストーリーからお話します。
味の素はアミノ酸で始まった会社で、「おいしく食べて健康づくり」が創業の志です。日本人の栄養状態をよくしたい、体格をよくしたいという池田菊苗博士の思いから研究が始まってうまみ成分を発見し、その思いに鈴木三郎助が共鳴して商品が生まれました。
以降、100年以上にわたりその志を受け継ぎながら、事業展開してきました。そして、2020年には、ビジョンを改訂し2030年には「食と健康の課題解決企業」に生まれ変わることを宣言しました。正に今、社会価値と経済価値を共創する取組みで、ビジョン実現に向けた「ASV(Ajinomoto Group Shared Value)経営」を推し進めているところです。(図1

(図1.ASV経営に至る流れ。味の素様より提供(以下同様))


(図2.ASVの位置づけ)

但し、唱えるだけでなく一人ひとりの従業員に浸透することが重要と考えており、以下からは、その具体的な取り組みについてご説明していきたいと思います。
島上:まず、活動の前提となる考え方ですが、実現するうえで「人財」がとても重要な要素ととらえています。図3のとおり、人財に代表される無形資産に投資をして、顧客資産を創出し、物的資産・財務資産につなげ、また財務資産を人財投資に還元するというサイクルを回すことで、企業価値向上につなげていこうという考えです。デジタル・トランスフォーメーション(DX)による業務改革でバックアップしていきます。
その重要評価指標(KPI)として、図3に示したもの(従業員エンゲージメントスコア・単価成長率・ROIC・オーガニック成長率・重点事業売上高比率)を設定しています。


(図3.ビジョン実現に向けた基本方針)

図4は、人財に投資をして、エンゲージメント・多様性・働き方の取り組みを進め、生産性を向上させていこうと考えています。特に「食と健康の課題解決」の課題解決力を上げていくには、一人ひとりのエンゲージメント、つまり「ASVの自分ごと化」が重要と考えて取り組んでいます


(図4.人財投資に関する取り組み)

次に、この「ASVの自分ごと化」を目指した組織横断でのマネジメントサイクル(図5)を通じて、代表的な施策を紹介したいと思います。


(図5.ASVエンゲージメント向上へのマネジメントサイクル)

大まかな考え方は、「理解・納得(施策①)」→「共感・共鳴(施策②)」→「実行・実現プロセス(施策③)」→「モニタリング改善(施策④)」というプロセスでPDCAサイクルを回しています。
図に載っている4つの代表施策を要約すると下記の通りです。
  • CEO対話:年間50回以上従業員と直接対話する場を設けて理解の深化
  • 個人目標発表会:組織目標と個人目標のつながり、自身の仕事がASV実現へつながる事を自らの言葉で発表
  • ASVの取り組み共有:ASVを体現する秀逸な取り組みを表彰する全社アワード、社員自らがASVの取組みを発信
  • エンゲージメントサーベイ:モニタリングの上、改善
福岡:すごい。全体のサイクルがとても合理的に設計されていますね。この中でまず、①のCEO対話が気になったのですが、年間50回以上というのは結構な労力ですね。運営側から見てご苦労はなかったのでしょうか?
大串:そうですね。進め方についての議論は色々社内でもありましたね。例えば、初めのサイクルでは合計53回の対話を組織単位で行ったのですが、組織単位だと大きな組織では話しにくいという声もあり、次のサイクルでは階層別で行っています。
人数が多い場合は、例えば私が所属している人事部門では複数回に分けて、リアルとバーチャルも組み合わせて、出来る限り全員が参加して話せる環境を作りました。
また、社長も、各対話での冒頭に「心理的安全性の担保」という言葉を意識的に使うことで、従業員が話しやすいような場づくりを心掛けています。数を重ねると、たまに社長がヒートアップしてすぐに「ごめんごめん」と謝るシーンも見受けられますが(笑)、そういった過程も含めて、会社内でのオープンな対話がマネジメントサイクルの進化に繋がるのだろうと思います。
福岡:本当に一人ひとりに配慮されている様子が目に浮かびます。ただ、どんなに場を用意しても動かない、という悩みを他の会社ではよく伺います。特に施策③は社員発信に依存すると思うのですが、何か運営面で工夫とかあったのでしょうか?
島上:初めは事務局からASV好事例を選んでその担当した社員に話してもらう、ということを行っていましたが、事務局から仕掛ける発信だけでなく思った以上に社員自らが自発的にASVの取組みを発信してくれています。例えば図6の「得られた成果」にある通り、相対的に見てもASVに関する社内の発信数及びそれによる反応は極めて良好です


(図6.社員発信の施策について)

野坂:実は、運営側の指示ではなく、各個社や地域単位で自発的な取組みの行われていることが初回サイクルのレビューで分かりました。これには私も正直驚き、感心しました。
こういった結果を見ると、おそらく、弊社の社員はASVの取組みと目指すビジョンへの関心は元々高かったのだろうと思います。
図2Our  philosophyで示す通り、ASVをミッション、ビジョンを実現するための中核に位置付けてきた効果もあるのでしょうが、ASVを表明する以前より、グループ共通の価値観、仕事をする上での基本的な考え方、姿勢として、皆が諳んじている「味の素グループWayとして下記4点を掲げており、今でも入社選考や入社後の共通の価値観として非常に大事にしています。

新しい価値の創造

開拓者精神

社会への貢献

人を大切にする

福岡:なるほど。価値観の醸成、これは大きな気づきです。
今回ご紹介いただいたような、創業以来一貫した、事業を通じて社会価値と経済価値を共創するASVの取り組みを「自分ごと化」することを目指した組織横断でのマネジメントサイクルという手法に加えて、貴社が大切にしてきた共通の価値観である味の素グループWayが、この活動でうまく表出された面もあるかもしれませんね。今流行のビジョンやパーパスを支える価値観の重要性について考えさせられます。

今回は、普段、食のシーンでしか知りえなかった味の素の奥深い魅力を味わうことが出来ました。貴重なお話を聞かせて頂き本当にありがとうございます
全員:こちらこそありがとうございます。
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