ドローンを通じて社会の「当たり前」を進化

作成者:福岡 浩二 投稿日:2021年8月5日

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本投稿は、2021年7月14日に行われたオンラインインタビューを元に構成されています。

SAP福岡(以下 福岡):最近私自身「ドローン」関係のニュースを見かけることが増え、その内容もどちらかというと産業施設の検査や災害直後の映像など、より産業・社会に寄り添っているように感じます。
本日はまさにこの領域で最先端を走る、株式会社センシンロボティクス(以下センシン)の代表取締役社長 北村卓也さんにその動向についてお話を伺おうと思います。よろしくお願いします。

センシン代表取締役社長 北村卓也 様

センシン北村様(以下 北村):こちらこそ、お招きいただきありがとうございます。確かに、おっしゃって頂いている通り、ドローンは本当に世の中の見方が変わってきたと感じます。
本日はドローンの産業動向について、事例も交えながらお話したいと思いますが、何よりもドローンの果たす社会的役割について考えるきっかけになればと思います。
ちなみに、ドローンについて率直にどういったイメージを持っていますか?

福岡:そうですねぇ、4つの羽があって個人が趣味で楽しむ、という感じです。やはりもう個人趣味だけでなく、産業用途にも広がっているんでしょうか?

北村:はい、勿論個人用途も空撮やレースなど、それはそれで盛り上がりを見せています。ただ、それ以上にニーズが急拡大しているのが産業用途ですね。
まず、ドローンの定義ですが、これは日本ですと航空法の「無人航空機」に含まれます。複数のローター(回転翼)を持つマルチコプター型が有名ですが、固定翼型など様々な形状があり大きさも様々です。代表的な内部構成を下図に載せてますが、まさにハイテクの塊です。

北村:まず、市場規模から触れますと、国内では2025年には6427億円に急拡大するとの予測が出ています。市場拡大は私自身も現場の肌感覚でも通じるところです。その内訳は「サービス」が大半で更に用途を見ると、その半分近くが点検・防犯・災害対策など「検査」で構成され、続いて農業・土木建築での「作業代行」、そして「物流」と続きます。

福岡:すごい市場の伸びですね。サービスにシフトしてるのが利活用の普及を物語ってますが、検査についてもう少し詳細に知りたいです。

北村:はい。では自社の事業概要と絡めて事例を紹介していきましょう。
弊社は、ドローンをはじめとするロボティクスの力により業務の完全自動化を実現することで、設備点検、災害対策、警備・監視を中心とする様々な領域における、目の前に差し迫った具体的な社会課題解決に取り組むことをミッションに置いています。まさにサービスにおけるこの領域です。

早速いくつかの事例をお話します。例えば、今国をあげて再生可能エネルギーへのシフトが進んでおり、なかでも太陽光発電が期待されています。ただ、施設の大型化が進むことでそのメンテナンスの負荷が大きくなるのも事実で、それをドローンの活用で対応した事例です。

次が、プラント施設の点検です。こちらは高所や危険な場所など人間が立ち入りにくい場所の点検代行だけでなく、例えば異常を発見したらSAPのアセットマネジメント製品と自動連携して行動を促すなど、より日々の業務との密連携を実現しようとしているところです。

実は元々御社との接点は、2021年春にSAPが提供するスタートアップ共創プログラム「SAP.iO Foundry Tokyo」に参加したことなんです。
自社のドローンなどのロボティクスを活用したオペレーション自動化とSAPの設備資産管理システムを組み合わせることで、プラント設備の保全に必要な情報を徹底的にデジタル化し、現在及び未来の安心安全と安定操業に貢献出来ないかと考えています。
具体的には、設備資産管理のクラウドプラットフォームSAP Asset Intelligence Networkとの連携や、石油や化学業界などの25企業・団体で未来のプラント業務を検討するデジタルプラントイニチアチブにも参加し、ドローンの可能性をディスカッションしています。

福岡:これは今のニーズに沿っていて分かりやすいです。ドローンだけでなく最新技術はよく手段と目的が混同されがちですが、ERPのような既存業務を支えるシステムと繋がっているのは地に足がついている印象を受けます。今までの話を伺う限り、やはり企業向け支援が多いのでしょうか?

北村:企業向けだけでなく国・地方といった行政組織との取り組みも増えていますね。
実は今、橋やトンネルなどの社会インフラ老朽化への対応が切実な課題となっています。こちらの記事によると、2038年までに約285兆円近くもの修繕費用推計が国から発表されています(事後対応ケース)。同時に国内は労働人口の減少も進んでいるため、ドローンを活用してこの大きな社会課題の解決に取り組んでいるところです。下図は橋の点検事例ですね。

福岡:これは確かに国・地方共通の社会課題ですね。人命にも関わるため放置するわけにはいかないですものね・・・。
ところで、国と聞くとやはり規制が気になるのですが、やはり結構厳しいのでしょうか?

北村:勿論飛行において申請は必要ですが、実はルール整備は着々と進んでいます。元々2019年の閣議会議でドローン飛行を整備するロードマップが策定されており、下図のとおりレベル分けとその時期が協議されています。

図.ドローンの環境整備(国土交通省HP)

福岡:え、有人地帯の目視外飛行にあたるレベル4は、早ければ2022年に実現するのですか?

北村:そうなんですよ。あまりこういった情報はドローン関係者以外だと知られてないかもしれません。実はドローンは国家の産業政策としても重要視しているんです。
なお、我々は「ドローン」という手段だけにこだわっているつもりはなく、根底にあるのはやはり社会課題への解決です。
我々までの世代が「当たり前」のように享受してきた社会資産を、次世代には「当たり前」以上に進化して継承できるよう努めていきたいと考えています。

今回はあえて国内に絞りましたが、例えば環境問題のような地球規模の課題にも取り組んでいきたいと思います。
最近ですと、世界を変えるテクノロジー開発を促すXPRIZE財団が「熱帯雨林の保護」をテーマにしたコンテスト募集枠で、先日弊社が日本から唯一選出されました。(記事
我々の指針はあくまでより良い社会の実現ですので、日本にとどまらずこれからもこういったチャレンジは進めていきたいと思っています。

福岡:常に社会、もっと言えばそこにいる人間を中心においているのがとても素晴らしいです。今世の中がSustainabilityや脱炭素という言葉が氾濫している印象を受けますが、流行に惑わされず社会にとって人類にとっての価値を常に見据えることが大事なのだと改めて痛感しました。本日は貴重なお話を本当にありがとうございます。

北村:こちらこそありがとうございました。

 

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