【SAP イノベーションフィールド福島の挑戦】第5回:会津発!持続可能な未来を支える再生可能エネルギーの新モデル

作成者:SAP イノベーションフィールド福島投稿日:2021年11月10日

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全5記事で構成される「SAPイノベーションフィールド福島の挑戦」シリーズの最終回となる本記事は、「エネルギー問題」の領域に迫りたいと思います。

世界的に2050年までのカーボンニュートラルを表明しているのは日本を含め125か国1地域(2021年4月末時点)あり、再生可能エネルギーの推進はこの目標達成に必須となっている中、現状として日本の再生可能エネルギーは他の先進国と比べ普及が遅れています。(日本の再生可能エネルギー利用率:26%)世界各国の各エネルギー利用率

出典:Our Word in Data | Electricity Mix

また多くの企業がサステナビリティに取り組む社会となった今、従業員一人ひとりの意識は変化しているでしょうか。
今回は再生可能エネルギーの発電に取り組むバンプージャパン株式会社の伊藤真人氏とSAPイノベーションフィールド福島所長である吉元宣裕へのインタビューをお届けします。皆様と一緒に社会全体で「エネルギー問題」に対して何ができるのかを考え、行動のきっかけになれば幸いです。

日本の再生可能エネルギー普及のハードル

――バンプージャパン様はタイ発祥の外資である点も大変興味深いのですが、エネルギーの供給側としては今どのような事業を会津若松でされているのでしょうか。

伊藤:仰る通り我々はタイの会社、つまり外資です。もともと石炭の採掘から始まって、成長分野である新たなエネルギーの機会を探っていく中で再生可能エネルギーへの投資をしてきました。現在日本全国で14か所、太陽光発電事業を行っています。AiCT(スマートシティ会津若松の取組みの一環として、首都圏などのICT関連企業が機能移転できる受け皿としてのオフィス環境)に入居する以前から会津若松地域においてビジネスさせていただいておりまして、会社の経緯の中では「地域との共生」を大切に取り組んできました。

――企業だとカーボンニュートラルへの目標があり自発的に再生可能エネルギーに取り組むことが多いとは思いますが、家庭で再生可能エネルギーを利用している方はまだまだ少ないと思います。何が一番ネックになっていると考えていますか。

伊藤:再生可能エネルギーの分野は現在日本において追い風だと思います。ただ「コスト」が課題です。石炭火力発電とは違って、再生可能エネルギーは自然気象に影響を受けるので供給が不安定になってしまいます。そこで本当の意味で再生可能エネルギーを普及させるためには電力を貯めることができる蓄電池がカギになりますが、この蓄電池はまだコストが高いのが実情です。

伊藤真人氏プロフィール

環境にやさしいエネルギーの地産地消モデルを目指して

――それでは、スマートシティ会津若松で取り組んでいるエネルギープロジェクトについて教えてください。

伊藤:一言でいうと、エネルギーの地産地消です。家庭・オフィスで自家発電し使用するアプローチと、地域にある大型の発電所から電力を供給するアプローチが考えられます。家庭・オフィスにおける太陽光発電の自家発電では、せいぜい30%ほどしか発電することができませんので、外部から電力を供給する必要があります。私たちはいかに環境にやさしい再生可能エネルギーを安定して供給できるかに取り組んでいます。そのために再生可能エネルギーそのものの安定化将来の電力需要予測精度の向上の2つのフェーズで考えています。

スマートシティ会津若松のエネルギーへの取り組み

1. 発電事業者同士の協力による再生可能エネルギーの安定化

――再生可能エネルギーはどのように不安定であり、どのように対策する必要があるのでしょうか。

伊藤:現在想定されている太陽光発電や風力発電といった再生可能エネルギーは、天候に左右されやすく、非常に不安定です。一方で、異なる再生可能エネルギーの特徴を活かし、組み合わせることで、電力の供給を安定させることができます。
例えば、太陽光発電は日中しか発電できないし、天気が悪い日は1日発電できません。そのような天気が悪く風がふいている日には、風力発電が行われます。現在、複数の電力会社やエネルギー会社と協力しながら、再生可能エネルギーを組み合わせる発電事業の体制づくりを行っています。

――ひとつひとつの再生可能エネルギーでは不安定であっても、組み合わせることで補完しあえることがあるんですね。多くの企業が関わることで、調整が難しそうですが、困難なことはありますか。

伊藤:現段階では大きな対立がなく順調に進んでいます。このように対立なく進められているのは、大型の発電所をもつ企業同士で、競争領域としてではなく、非競争領域として協力し合って電源をまとめていこうとしているからです。各企業が再生可能エネルギーの電力供給を安定化させたいという大きな目標をもって取り組むことができています。

2. データ活用による需給バランスの安定化

――同じ目標を目指し、非競争領域に着目して協力していくことで、地域のエネルギー問題を解決していくのは大変魅力的に感じます。続いて、将来の電力需要予測について教えてください。

伊藤:電力供給において、電力を作る側と使う側が同じ量でなければ停電してしまうという問題があります。したがって、どれだけ電力を使用するかを事前に予想して、電力を発電することが求められます。そのため、需要予測するためのデータは非常に重要なのです。

――ただ電力を発電するのではなく、データを活用して電力需要とのバランスを考慮する必要があるんですね。再生可能エネルギーの安定化、電力需要予測の取り組みに対して、SAPはどのような役割を担っていますか。

吉元:データを活用した電力供給の安定化に貢献したいと考えています。供給側の制約と需要情報を組み合わせて、最適なエネルギー発電計画を行う「SAP Energy Operation and Intelligence」というソリューションの活用を検討しています。このソリューションは従来異なるタイプの発電所を複数持つ大型の電力会社に対して、最適な電力発電計画を提供するものでした。これを大規模な電力会社一社で使うのではなく、複数の電力会社やユーザー企業間で利用しデータを共有・活用することによって、より精度の高い需要予測と安定した供給を実現したいと考えています。

SAP Energy Operation and Intelligence

SAP Energy Operation and Intelligence

従来の電力需要予測というのは過去の電気使用量や天候の情報をもとに電力消費量を予測するというのが基本的な考え方です。でも例えば、ものづくりの領域で取り組んでいる中小企業向け業務プラットフォーム「Connected Manufacturing Enterprises」に入っている生産計画のデータを事前に共有いただけたらどうなるでしょうか。大型の設備をどのくらい稼働させる予定かが事前にわかれば、電力の需要予測精度が大幅に向上するのではないでしょうか。
他にもこの地域には大型の温泉旅館もありますから、宿泊の予約状況を事前にいただくことで電力需要の予測精度向上に期待ができます。もちろんこれらのデータは社会に役立つのであれば同意のもとで提供いただくという会津若松市が進めるオプトインモデルを前提としています。

SAPイノベーションフィールド福島 所長 吉元宣裕 紹介

法人再生可能エネルギー利用率100%を目指して

――地方の中小企業や観光業からの再生可能エネルギーに対する関心はいかがでしょうか。

吉元:地方の中小企業であることを考えると、SDGsやESGの取り組みに対する感度や意識が高くないのではと懸念していましたが、予想よりも意識は高かったです。コストや他の企業の導入の様子を見たい企業も多い一方で、積極的に再生可能エネルギーを導入していきたいという企業も数多くありました。ただ、前提としてはやはりコストをかけずにというのがあります。大企業であれば多少コストをかけてでも取り組みたいとなるかもしれませんが、地域の中小企業はよりシビアな環境に置かれています。だからこそデータを共有してみんなで取り組むことに価値を見出していきたいのです。

――今後、会津のプロジェクトをどのようにしていきたいとお考えでしょうか。

伊藤:まずは今準備段階にある会津のエネルギー地産地消モデルをしっかりと実現させたいですね。エネルギーに関連する企業が一同に集結した非常にユニークな取り組みだと思います。CO2削減や再生可能エネルギーの拡大は日本の課題、世界の課題であります。会津でのプロジェクトを通して得られた知見をもとに、日本の他の地域や海外にもエネルギー地産地消モデルを展開していきます。

――世界の国々が「2050年脱炭素社会」を目指しており、再生可能エネルギーの拡大が急務となっています。この会津のプロジェクトが先導役となり、エネルギー地産地消モデルが他の地域にもどんどん浸透して欲しいですね。

伊藤:エネルギーの問題は、1社で解決できる問題ではありません。具体的には、電気の種類、蓄電方法、それらを取りまとめるデータをどうするのかなど幅広く考えなければならないので、各社がお互いに補完し、協力し合うことが大切です。例えば、電気自動車がこれからどんどん普及していくと思いますが、電気自動車の電力が火力で発電されたものだったら、脱炭素社会の実現にはつながりません。電気自動車の普及のためには、自動車業界やエネルギー業界だけでなく、充電するためのインフラ整備、データのとりまとめなど幅広い業界の協力が必要なのです。


最後に ―社会課題に取り組むことの意義とは

これまで全5回にわたりSAPイノベーションフィールド福島の活動を取り上げてきました。第2回ではものづくり、第3回では教育、第4回ではごみ問題、第5回ではエネルギー問題についてインタビューを行いながら、社会課題について考えてきました。

このような活動はすぐに売上や利益につながるものではなく、場合によってはコストととらえるかもしれません。しかし、長い目線で考えると、持続的な社会活動は企業価値の向上につながっていくと考えています。例えば、Googleが持つカルチャーに「ユーザーファースト」というのがあります。ユーザーが欲しい情報にいち早く到着できる、高速な検索エンジンが始まりでした。「ユーザーファースト」の精神で続けていたものがデータをうみ、価値をうみ、いつの間にか巨大企業になったわけです。

21世紀のいま求められるのは「社会ファースト」なのではないでしょうか。社会ファーストで取り組むことが、例えばESG投資のようにマーケットで新しい価値をうみ企業価値を上げていく。企業だけでなくいち社員やいち個人にとっても、社会に対してどのように貢献できるかを考え行動に移すことで、成長を促すきっかけになります。このように会社の目的と、社会の目的と個人の目的を合致させることが21世紀型の経営モデルであると考えています。

企業価値=社会価値=株主価値を高めることがゴール

SAPはERPという企業内の全体最適化から始まりましたが、今ではビジネスネットワークという形で社会全体の最適化というビジョンを掲げています。これはまさに社会問題やビジネス課題が一社のみでは解決しない背景があるからです。世界中の40万社の顧客をもつSAPだからこそ、企業と社会をつなぐ役目も果たしていきたいと考えています。個人、企業、そして社会全体にとって三方良しの世界を目指して、その最前線にあるSAPイノベーションフィールド福島の取り組みを知っていただくことで、社会課題を少しでも一緒に考えるきっかけになればうれしいです。

「SAPイノベーションフィールド福島の挑戦」これまでの連載はこちらから

編集者の想い:

千田遼太郎

社会課題解決に挑戦される方々のお話を伺うことで、一企業、一行政、一個人が真剣に社会課題と向き合う重要性を実感しました。社会課題が長年の蓄積によって深刻化が極まっている今、私たちの活動は次世代だけでなく、自分たちの生活にも大きな影響を与えるものだと感じています。社会課題が特定地域内だけでなく、国や地球全体に影響を及ぼすことが指摘されている今、責任の特定はできなくなり、一企業、一行政、一個人が問題意識を持って行動する必要があると感じます。言い換えれば、自分事ととらえてそれぞれが行動できれば、必ず解決できると希望を持っています。私自身も問題意識をもって社会課題を少しでも多く解決できるように挑戦していきたいと思います。

若林美南

全5回にわたり様々な社会課題について改めて考えるきっかけになりました。その課題も20代である私たちインターン生の将来に直接大きな影響のあるものであり、いまだに「解決」の糸口がありません。企業の多くが「社会のために」カーボンニュートラル目標を立てたり等の取り組みを始めていますが、何より「自分のために」という自分事化をする必要があると感じました。ビジネス、我々の消費者行動は自分たちを真に幸せにするものであるように引き続き個人としても、SAPジャパンの社員としても行動していきたいと思います。

 

角口友菜

このブログ作成の活動を通して、さまざまなテーマの社会課題について向き合うことができました。そして、インタビューで直接お話を伺ったことで、調べているだけではなかなかわかりづらい部分(課題解決に取り組まれている方の思いや活動の背景など)を教えていただき非常に貴重な経験だったと感じています。社会課題は、一時的な取り組みで解決できるものではありません。だからこそ今後の社会を担う世代として、これからも社会課題を自分事として捉え、よりよい社会につながるアクションをし続けたいと思います。

 

木村優希

本ブログの執筆活動を通じて改めてあらゆる分野における社会課題に目を向けることができました。こうした社会問題の解決は長く複雑な道をたどることになると思います。社会や企業などが動いてくれるのを待つのではなく、一人ひとりがどのように解決へと導くことができるのかを考えアクションに移していく必要があるのではないでしょうか。特に私たち若者は自身の将来に関わる問題でもあります。数年後に後悔しないためにも、今からできる行動を少しずつ実現していきたいと思います。皆さんも是非一緒に自分らしい社会貢献活動を見つけてみませんか?

 

秋山直登

全5回にわたるイノベーションフィールド福島の連載を通して、中小企業のものづくりやエネルギー消費など社会問題について、私自身深く考えさせられました。様々な方にお話していただくなかで、「危機感を感じている」「私たちが率先して取り組んでいきたい」という言葉から責任感や使命感を感じました。まだ私はそこまで使命感を持つことはできていないかもしれませんが、まずは、今回の連載のように社会問題のニュースを読んだり、ボランティアに参加したりすることで、自分事としてとらえることから始めていければと感じました。

 

植村勇斗

本ブログの執筆活動を通じて、様々な社会問題について考えることができました。インタビューでお話をお伺いしたことで、様々な立場の方々が様々な思いを持って課題解決に向けて取り組んでいらっしゃることを学ぶことができたのは大変貴重な経験だったと思います。社会課題は簡単に解決できるものではなく、行政や企業、住民など様々な人々の協力が不可欠であり、一人ひとりが問題意識を持って解決に向けて取り組むことが必要です。より良い社会を実現するために、私自身もSAPの社員として、そして社会の一員としてどのような貢献ができるか考えたいと思います。

 

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