「宇宙×AI」で New Space(ニュースペース)を開拓

作成者:福岡 浩二投稿日:2021年9月14日

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本記事は、2021/9/2に株式会社スペースシフト(以下 スペースシフト)をゲストに行われた社内イベントを基に構成しています。

SAP福岡(以下福岡):宇宙産業は、イーロン・マスクやジェフ・ベゾスなどの起業家をはじめとして、民間が続々と参入しているイメージがあります。なかでも、スペースシフトは地球観測衛星のデータをAIを用いて解析する、まさに今のデジタル時代を象徴する企業のイメージを持ってました。
ぜひ、外部環境や事例など色々と聞いてみたいと思います。よろしくお願いいたします。

スペースシフト代表取締役CEO 金本 成生様

スペースシフト金本(以下 金本):こちらこそ、本日はお呼びいただきありがとうございます。

そうですね。おっしゃるとおり、宇宙といえば、昔は国による政策のイメージが強かったですが、今はむしろ民間の活力が新しい市場を生み出している、とても面白い状況になってますね。
「スペースシフト」という社名は、私自身と社会全体が宇宙を活用する方向にシフトする、という思いを込めています。
そういった背景や、自社の具体的な事例なども織り交ぜながらお話出来ればと思います。よろしくお願いします。

 


福岡:今の「私自身のシフト」が気になったのですが、初めから宇宙で起業ではないということでしょうか?とてもその起業に至る経緯が気になります。

金本:元々宇宙に興味を持ったのは、小学生の頃にハレー彗星に興味を持ったことからなんです。当時は天文学者の道を志したのですが、なかなか食べていくのが難しいイメージがあったので(笑)、一旦あきらめたんです。その代わりに、インターネットで盛り上がってきたIT業界に興味をもち、大学在学時にITベンチャーを起業しました。

数年ほどWEB制作事業を営み、徐々に本場の空気を感じたいという想いが強くなって、当時インターネットバブルの真っ只中でしたが、アメリカで勝負しようと飛び立ちました。
現地では、喜多郎という日本人アーティストのレコード会社で、ネットサービスや、権利交渉も含めたコンテンツ作りを行ってました。
と、まぁ宇宙と全く関係ないことをやっていたのですが、そんな中でたまたまイーロン・マスク率いるスペースXのロケット打ち上げシーンを現地で目にすることがあり、幼いころの夢が再燃して居ても立っても居られなくなり、宇宙を事業にしようと志したんです。

福岡:なかなか刺激的な人生で、ここだけを掘り下げたいくらいですね(笑)その後今の衛星画像解析事業に至ったのは?

金本:はい、前職の流れで「宇宙コンテンツ」制作を当初行っていたのですが、なかなか収益化が困難なため、企業の宇宙事業立ち上げ支援などコンサルタントのお仕事も行ってました。そのお仕事の過程で見えてきたのが「衛星データの解析」が今後市場として伸びる領域、ということだったんです。
当時からAIを使った解析を試みる企業は出始めていたのですが、それはあくまで光学の衛星画像が対象だったんです。観測衛星には他にも「レーダー(正式名称はSAR(合成開口レーダー))」を使うタイプもあり、ここがまだ参入する余地がある未開拓エリアで、自分なりにアイデアもありました。
そんな中で、SAR衛星開発者の方とのご縁もあって、今の事業の「AIを活用した衛星データ解析」に繋がったというわけです。

福岡:なるほど。御社の中身に入る前に、市場環境として宇宙産業に民間参入が増えた印象があるのですが、何かきっかけがあるのでしょうか?

金本:2つほど大きな流れがあると思います。
1つは、オバマ大統領時代に宇宙開発を民間も活用する方針を打ち出したことが大きいですね。例えば、NASAが打ち上げロケットを民間のスペースX(イーロン・マスクCEOが起業)に発注したのは象徴的な事例です。
もう1つが、技術の進化で衛星を打ち上げるコストパフォーマンスが飛躍的に高くなったことです。
今、地球軌道を回る衛星は4000機以上も打ち上げられており(2021年9月時点)、主に地球観測・通信用途で活動しています。
過去は衛星1つが巨大かつ高額でしたが、ニーズとそれによるイノベーションで、小型化かつ集積型の衛星群(コンステレーション)が急増しました。


因みに、クラウドファンディングで販売したこともあり、その時は数十万円から販売しました。(現在はこの事業からは撤退してます。) それぐらい普及が進んでいます。
むしろ今は、衛星の開発自体というよりは、そこから得られるデータをどう価値に持っていけるか、に焦点が移っているといってもよいと思います。

先ほど触れた光学型の衛星データですが、実はいくつかデータ活用における課題があります。1つ事例を使ってお話します。
ある野菜のマーケティングプロジェクトで、CM投下と農作物の収穫量が大きく影響を受けるため、その予測手段として収穫畑の衛星画像を活用しようとしていました。ところが、いざ撮影画像を見ると何週間も雲に隠れて見えず、SAR衛星で出来ないか、と我々にご相談を頂きました。

光学衛星は目と同じ原理で情報を捕捉しますが、SAR衛星はマイクロ波を反射させることで情報をつかみます。ですので、ある程度は遮蔽物を透過して地上画像を撮影することが出来るのです。
下記が光学とSAR衛星の比較図になり、丁度相互補完の位置づけです。

福岡:なるほど、用途によって長所・短所があるんですね。必ずしも二択というわけではなく組み合わせという選択肢もありそうです。

金本:そうですね。そしてこのSAR衛星のデータ解析の仕組みを、AIを使って提供するのが我々の事業の中核にあたります。いくつか事例をご紹介します。

弊社の解析技術を通じて、地表面の変位をミリ単位まで測ることが出来ます。その特徴を活かして、インフラや商業施設の地盤沈下の検知が可能です。例えば、2020年末に発生した、調布の道路陥没事故があったのを覚えている方いるかもしれません。
あの事故後に対象地域の対象画像を元に計測した結果、その1か月前から陥没の予兆が出ていたということが分かりました。つまり、今よく話題になる社会インフラ老朽化に伴う事故への事前予防にも衛星データが活用出来るのです。

福岡:日本のインフラ老朽化問題は喫緊なので今後もニーズ増えそうですね。まさかそれにも宇宙からの画像解析が使えるとは思いませんでした。他にはどんな事例があるのでしょうか?

金本:そうですね。ではあと2つほど紹介します。1つは不動産事業者からのご相談で、どこにどんな建物(住宅・商業施設等)が建てられているのかを自動検知・計測する仕組みで、これは市場調査の用途です。
もう1つは事業のバリューチェーン上での課題解決用途です。上記で触れた広告の事例もその1つで主に「生産の最適化」を目的としたものです。関連で他にもビジネスのバリューチェーンで起こっている社会・環境問題を可視化する用途もあります。例えば採掘場での労働環境や海洋油田でオイル流出が起こってないか、などがそれにあたります。生産の最適化も需要に合わせるという意味ではフードロスに繋がる活動ですので、少なからず「サステナビリティ」がテーマに入りますね。
その他の代表的な事例は下図をご覧ください。

どの事例もそうなのですが、衛星画像だけでなく、地上での関連データや各専門家の知見なども組み合わせるケースが多いと感じます。SAR衛星はまさにこれから利用シーンが広がる領域ですので、我々としては、むしろ今まで宇宙衛星に接点がない多様な知見やアイデアを持った方々と一緒に、創生型で取り組んでいきたいと思っています。

福岡:なるほど、サステナビリティは、宇宙産業の視点でも貢献ができそうな領域ですね。最後に、創生型で取り組んでいきたい、とのことですが、改めて御社が提供する価値と、読者の方々へのメッセージがあれば教えてください。

金本:はい、我々はSAR衛星画像解析のプロフェッショナルとして、課題解決に沿った解析を価値として提供しています。ただ、そもそもどういうシーンで衛星が活用出来るのかは、色んなビジネスシーンで可能性を秘めていると思います。
読者の方々にはぜひ、お持ちのデータと今日お話した特長を備えた衛星画像を掛け合わせて新しい価値を創る活動を興して、より良い産業、そして社会の形成に共に取り組ませていただければと思います。

例えば、先ほどのサステナビリティにも関連しますが、私は鳥取県出身で、地方創生の取り組みとして、地元の方々と一緒に農作物(ネギ畑)の衛星からの生長観測を通じた栽培管理の実証実験を進めています。
元々鳥取県は、「星鳥県」というキャッチーな造語も使って、宇宙を使って県全体を盛り上げようという活動を推し進めています。
そして鳥取県に加えて、近県だと福岡・大分でも、同じように宇宙を地方創生に位置付ける自治体も出てきてますね。

福岡:本当に「宇宙産業」の発展が縦横無尽に広がっているのがひしひしと感じられました。本日はとても濃厚なお話ありがとうございました。

金本:こちらこそありがとうございます。ぜひSAPさんとも一緒に新しい価値を生み出していきたいのでよろしくお願いします。

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