Industry 4.0の未来に向けて、日本発のベストプラクティスを世界に発信するSAP Labs Japan

作成者:SAP編集部投稿日:2021年9月7日

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SAP社員に聞く、ニッポンの未来へ向けた取り組みと想い

ニッポンの「未来」を現実にするために、SAPジャパンの社員が取り組んでいるさまざまな変革プロジェクトをご紹介する本連載。4回目の今回は「SAP Labs Japan」です。SAP Labs Japanは、世界20拠点でSAPソリューションの研究開発を担う「SAP Labs」の1拠点として、新機能開発やお客様との共同プロジェクトなどを推進しています。本ブログでは、SAP Labs Japanが最大のテーマとして掲げる「日本のサプライチェーンの刷新」に向けた活動について、SAP Labs Japan, Head of Digital Supply Chain Managementの鈴木章二さんに話を聞きました。(聞き手:SAP編集部)。

SAP Labs Japan, Head of Digital Supply Chain Management 鈴木章二

SAP Labs Japan, Head of Digital Supply Chain Management 鈴木章二

「日本のサプライチェーンの刷新」を目指すSAP Labs Japan

まずSAP Labsの概要と、その中でのSAP Labs Japanの役割についてお聞かせください。

鈴木 イノベーションの実現に向けたSAPソリューションの研究開発を担うSAP Labsのネットワークは現在、全世界で20拠点、3万人の人員で構成されています。その大きな特長の1つとして挙げられるのが「世界分散開発」です。ITベンダーは、インドや中国など技術者のリソースが豊富な国に開発拠点を設けて各市場のニーズに対応しながら、製品のコアな部分は本国で開発するケースがほとんどです。SAPはそうではなく、製品開発を4つのカテゴリー(リソースハブ、市場フォーカス、テクノロジー、アプリケーション)に分類し、SAP Labsの各拠点はそのいずれかのカテゴリーに属する形になっています。そして、各拠点がそれぞれの領域に応じて独立して活動し、グローバルな研究開発体制が構成されています。

この4つのカテゴリーの中で、SAP Labs Japanは「市場フォーカス」領域に属しています。文字通り、その国の市場に特化した新機能の開発などを行う拠点ですが、ここではテクノロジーだけでなく、イノベーションに向けた企業文化の醸成やお客様との共同開発など、その国の市場に根ざしたあらゆる活動を行っています。

SAP Labs ― SAP製品開発&イノベーション推進組織
現在、SAP Labs Japanではどのようなテーマに注力しているのでしょうか。

鈴木 「市場フォーカス」領域に属する拠点が設けられているのは、現時点でブラジル、ロシア、そして日本の3カ国です。海外の2カ国はいずれも経済成長が著しい新興国ですが、すでに経済が成熟している日本においては、その目的がおのずと異なります。2019年のSAP Labs Japanの設立に際してもさまざまな議論がありましたが、最終的に「日本のサプライチェーンの刷新」を大きなテーマとして掲げることに決めました。

もちろん、SAPは以前から日本のものづくりに最適化されたさまざまな機能を提供してきました。しかし、日本の製造業をさらに進化させるためには、現状にとどまらない新たなテクノロジーやサービスが不可欠です。おりしもSAP本社が「Industry 4.0の再加速」を打ち出したこともあり、日本のものづくりサプライチェーンの進化を支援する機能開発を積極的に進めていくことになりました。

SAP Labs Japanの設立と同時期には、東京・大手町のSAP Experience Center Tokyo内にIndustry 4.Now HUB TOKYOが新たに設けられました。これはSAP Labs Japanの中にあって、「日本のサプライチェーンの刷新」の実働部隊となるものです。現在、この三者は大手町の拠点に同居して、緊密な連携を図りながら活動を推進しています。

SAP Experience Center Tokyo内にあるIndustry 4.Now HUB TOKYO

SAP Experience Center Tokyo内にあるIndustry 4.Now HUB TOKYO

日本の製造業をIndustry 4.0の次のステージへ

SAP Labs Japanが、日本の製造業のお客様にどのようなサポートを提供しているのかについて、もう少し具体的にお聞かせください。

鈴木 「日本のサプライチェーンの刷新」を実現するためには、日本のものづくり企業の皆様に一刻も早くIndustry 4.0の次のステージに進んでいただくことが前提となります。私がリーダーを務めるチーム(Digital Supply Chain Management:DSC)は、この目的のために2020年に立ち上がったものですが、お客様にこのお話をすると「いまさらIndustry 4.0なんて」といった答えが返ってくることがあります。つまり、「自分の会社ではとっくにやっているよ」ということです。

実は、ここに日本の製造業とグローバルの意識のギャップがあります。日本では現在に至っても、「工場の自動化を促進して、デジタルで生産性を最大化する」ことがIndustry 4.0のゴールだと誤解されているところがあります。しかし、これはあくまで工場の内部にフォーカスした生産性改革、従来の「カイゼン」の延長でしかありません。

すでにヨーロッパでは、2019年からIndustry 4.0の次のステージに向けた具体的な取り組みが始まっています。ここでは工場と工場の外側の世界をどのようにつないで、新たなサプライチェーンを構築するかがメインテーマとなっています。SAP Labs Japanが掲げる「日本のサプライチェーンの刷新」の目的もここにあります。

Industry4.0 ― 生産性向上プラットフォームの未来に向けた進化

すでにそのための新しいプログラムがスタートしていると聞いています。

鈴木 先ほどご紹介したSAP Experience Center Tokyo内に実働部隊を設置した「Industry 4.Now」というプログラムです。これはまさに、日本の製造業の改革をサプライチェーンの視点からとらえていく取り組みです。そこでは自動化されたセンシング技術やAI、5G、クラウドといった最先端のテクノロジーを、製造業でどのように活用していくかを考えていく世界になるでしょう。

しかし、現状において日本の製造業はこれからスマートファクトリーをどう作るかというステージにとどまっているケースがほとんどです。私たちのミッションは、この状況からいち早く脱して、すでにグローバルのスタンダードとなりつつあるIndustry 4.Nowのステージへと進むためのお手伝いをすることだと考えています。

日本の製造業が「カイゼン」の域を脱することができていない現状は、決して日本のものづくりの劣化を意味しているわけではありません。逆に、SAPはまだ日本のものづくりに潜在する本当の力を発見できていないのではないかと思っています。多くの日本企業が今後の方向性を模索する一方、すでに私たちの想像を超えた画期的なプロセスを実現しようとしている企業も存在するはずです。しかし、そこではテクノロジーや機能がまだまだ不足している。こうした課題に応えていくのが「Industry 4.Now」のプログラムであり、私たちDSC Labs Japanの役割です。

「日本のものづくり企業発」の新機能を世界に向けてリリース

SAP Labs Japan、またDSC Labs Japanの活動からは、現時点でどのような成果が生まれていますか?

鈴木 私たちは日本のお客様の取組みに伴走する形で、共創プロジェクトを通じて課題や要望を聞き取りながら必要な機能を製品内に開発し、すでに約30の新機能が生まれています。これらは従来の「カスタマイズ」とはまったく異なるものです。日本のお客様の要望を踏まえて開発した新機能はSAPのクラウドサービスの標準機能としてリリースされ、全世界のSAPユーザーが活用しています
もちろん、リリース時には「日本のお客様と一緒に開発した」といった説明は行っていません。しかし、欧米などでこれらの新機能を紹介して、「この機能はどうやって生まれたのか?」と聞かれれば、日本のお客様との共創プロジェクトから生まれた成果であることを、自信をもって説明しています。

これこそが私たちが一番やりたいことであり、SAP Labs Japanに対するSAP本社からの最大の期待でもあります。日本で生まれた新機能が、日本市場だけではなくSAPの標準機能として世界で活用される。こうした世界に誇れる取り組みを通じて、日本のものづくり企業が21世紀も世界をリードする存在として成長していくことこそが、私たちが目指す最終ゴールです。

お客様のビジネスの成長を加速する真のパートナーシップ

Industry 4.Now HUBは、「日本のサプライチェーンの刷新」のショーケースとしても大きな役割を果たしていると聞きました。

鈴木 SAP Experience Center TokyoにあるIndustry 4.Now HUBは、まさに「百聞は一見にしかず」で、お客様自身の目で最新の技術やソリューションを体感していただくことを目的としています。たとえばロボットとクラウドを接続して、そこにAIを融合することで、どのようにものづくりの現場が動き、工場外の世界と連携した新たなサプライチェーンが実現するのか。こうした現在のテクノロジーで実現可能なソリューションを目で確かめて体感していただく試みを、年間を通じて実践しています。

Industry4.0化加速を支援する3拠点のIndustry4.Now Innovation Hubs

こうした取り組みからは、単にソリューションを提供するだけではないSAPとお客様の新たな関係性も見えてきますね。

鈴木 はい、その通りです。Industry 4.Now HUBについては、従来のようにお客様からの要望を受けてSAPが開発する、つまりお客様とベンダーという一方通行の関係性を変えていくきっかけ作りの場になればと考えています。今後はSAPジャパンがお客様のビジネスプロセスをコーディングする役割を担い、お客様はそこで開発されたソフトウェアを活用してビジネスの成長を加速していく。そういう新たなパートナーシップを築けていけたら嬉しいですね。

私自身、これまで日本の製造業のお客様に育てていただいてきただけに、SAP Labs Japanでの仕事を通じて、その恩返しができたらと考えているところです。そのためにも、今はまだ工場内に閉じている日本のIndustry 4.0を、外側の世界とつながった新たなサプライチェーンとして昇華させ、日本発のベストプラクティスを世界に発信していきたいと願っています。

■関連リンク
連載 vol.2:組織の成長を新たなステージに導くSAPジャパンのD&Iの取り組み
連載 vol.3:グラミン日本との協業を通じて生活困窮者の自立を支援するSAPジャパンの社会貢献活動
→ 過去の連載はこちら

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