【SAP イノベーションフィールド福島の挑戦】 第4回:ごみ×データの可視化から見えてきた会津若松市の新事実

作成者:SAP イノベーションフィールド福島投稿日:2021年11月4日

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全5記事で構成されるこのシリーズの本記事第4回では「ごみ問題」に迫りたいと思います。

ごみ問題は世界規模で深刻。身近なテーマなのに実は知らないことが多い。

ごみの量が多すぎて焼却や埋め立てが追い付かない問題、不法投棄による環境汚染、海洋プラスティックごみによる生態系への悪影響、ごみを焼却する際のCO2排出による温暖化への影響など、ごみ問題は非常に広範囲に及んでいます。今後の人類の存続に大きくかかわる問題だといわれており、編集者であるインターン生の私たちは大きな危機感を感じています。

発展途上国では人体への悪影響を及ぼす「公害」として認知され、先進国では地球規模の「環境問題」として捉えられることが多く、どの国や地域でも少なからずごみ問題に対する取り組みを行なっていますが、皆さんはごみ問題の取り組みについてどのくらいご存知でしょうか。

SAPはドイツのハイデルベルク市においてごみ問題の解決に取り組んでいます。また日本でも福島県会津若松市とともにごみ問題の解決に向けて取り組みを始めました。知っているようで知らない身近なごみ問題。是非お読み頂いた皆さんからもご意見をいただき、共に解決できればと思っておりますので、最後までお楽しみください!

ドイツのスマートシティで進むごみの可視化

ドイツのハイデルベルク市ではスマートかつセンシブルな都市になるというビジョンを掲げています。そこで「SAP Intelligent Waste Management」でセンサーを利用したスマートなリサイクル管理システムを導入し、スマートシティ化への一歩を踏み出しました。

「SAP Intelligent Waste Management」とは、ごみの回収の効率化を目的とし、町中のごみ箱にセンサーをつけることで、どこに、どれだけごみがあるかを可視化するソリューションです。具体的にはごみ収集のコンテナにスマートセンサーを取り付け、ごみが一杯になると自動的にごみ収集の要求が業者さんへ送信される仕組みになります。この仕組みにより、ごみ収集車は不要な稼働を減らすことができます。

また一般的な廃棄物収集車は100キロあたり約70リットルのディーゼルを消費すると言われています。この取り組みによってハイデルベルクではごみ収集車の運用の効率化による排出ガスの削減、回収コストの削減にまで成功しています。

このようにデジタルを活用したごみ問題の解決チャレンジは海外でスタートしています。なおハイデルベルグ市での取り組みは過去のSAPジャパンブログでも取り上げていますので、詳細はこちらをご参考ください。

 

ごみ削減実証実験プロジェクトを日本に展開できる可能性はあるのか

さてハイデルベルグではSAP Intelligent Waste Managementを活用してごみ回収の効率化に取り組んでいましたが、日本においてもこの仕組みを展開できる余地はあるのでしょうか?
2020年にSAPジャパンは会津若松市役所とともにデジタルを活用したごみ問題解決にチャレンジしました。会津若松市役所スマートシティ推進室の二瓶敏郎氏、並びにSAPイノベーションフィールド福島所長の吉元とのインタビューを通じてその取り組みに迫ります。

――日本にSAP Intelligent Waste Managementの仕組みを展開しようと思ったきっかけを教えてください。

吉元:まず世の中に色々な社会課題がある中で個人的に最も関心があったのがごみ問題でした。誰にとっても身近なテーマであり、問題があることがわかっているにも関わらず、なかなか具体的に行動変容までつながっていないのがごみ問題だと感じています。そこでSAPが支援できることは何かあるのではないかと調べているうちにハイデルベルグの事例を発見しました。これを会津若松市に提案したらどうなるのだろうと思い、まずごみ箱にセンサーを取り付けてごみの量を可視化するスマートごみ箱のプロトタイプをエンジニアに1日で作成してもらい、それを会津若松市に持ち込んで事例の紹介とともにスマートごみ箱のデモをしたのです。そうしたら、ごみ回収の仕組みがドイツと日本では異なるので回収の効率化にはあまり期待はできないが、ごみの削減に何かつなげることはできないか?という反応をいただいたのです。

――ごみ削減に効果が出るのではという仮説に自信はありましたか?

吉元:正確にはごみ削減そのものに対する効果ではなく、一人ひとりの意識変革には効果があると考えていました。例えば「あなたは昨日どれだけのごみの量を出しましたか?」と聞かれて答えられる人はいないと思います。統計的には一人当たり1日のごみ排出量は918グラムと言われています。ごみ削減が問われ、一人ひとりが様々な施策に取り組んでいる中で、その効果を感じている人はほとんどいません。

私はよくこのスマートごみ箱をダイエットに例えてお話ししています。現在のごみ削減の取り組みは体重計のない状態でダイエットしているのと一緒なんです。ダイエットをしたい人に必要なものは、ダイエットをしようという「モチベーション」と運動や食事制限といった「ダイエットメニュー」、その効果を測定する「体重計」の3つが必要ですよね。「体重計」があれば一人ひとりの意識改革やモチベーションの維持にも期待できるのではないかと。そこで会津若松市役所に相談させていただきました。

――なぜ市役所からの導入が進んだのでしょうか。

二瓶:実は会津若松市は一人当たりのごみ排出量が同規模の自治体の中で全国ワースト10という不名誉な状態です。このため、ごみ排出量20%削減を市の目標として掲げており、そのためには住民一人ひとりにごみ削減に対する課題認識を高めていただく必要があると感じています。住民の皆さんに呼びかける上でまずは市役所がごみ減量のお手本になるべきということで、SAPさんとスマートごみ箱の実証実験を行いました。具体的には、効果を図るために3か月間、市役所内の各課にスマートごみ箱を設置しどれだけごみを減らすことができるかという検証を行いました。

市役所に設置されたスマートごみ箱

 

実験をすることでリアルにわかったこと。失敗を重ねて次につなげていく。

会津若松市役所企画調整課スマートシティ推進室 二瓶敏郎氏のプロフィール

――ごみの量を可視化することは実際に市役所職員のごみ削減の行動へ繋がったのでしょうか。

二瓶:スマートごみ箱を設置してみて改めて分かったことは、意外と市役所の職員はごみの分別をしっかりしており、ごみの量自体もとても少ないという事実でした。以前から市役所内では、独自の環境マネジメントシステムのもと、分別の徹底、リサイクルの推進などに取り組み、抜き打ちでのごみ検査を実施するなど、様々な対策を取ってきており、職員の意識自体は既に高かったことが挙げられます。

――それでは本質的な課題は市役所内ではなく住民内での課題認識にあたるということになるのでしょうか。

二瓶:難しい部分ですね。住民へ伝え続けるということは市役所として常に行っていかなければなりません。ただICTツールへの理解はすぐに進まないのが現状であり、また投資も必要になります。例えば、もしスマートごみ箱を市内に設置するとなると「どのように活用したらいいのか分からない」と感じている住民へ分かりやすい説明が必要になってきます。

吉元:実は後日職員の方にアンケートや直接ヒアリングをしてわかった意外な事実というのがありました。今回の実証実験では燃えるごみの量を取得したのですが、測定されているとわかっているので市役所でごみを捨てずに家に持ち帰っていたという方もいたのです。意識を変えるならごみの量の測定ではなくて、例えばリサイクルに回った紙の量が増えているということを見える化させた方がモチベーションが上がるというような意見もありました。これには思わずなるほど!と納得させられましたね。

――最後に会津若松市で一人当たりごみの排出量20%削減という大きな目標に向かって、現在実施していることはありますでしょうか。

二瓶:会津若松市では布類や小型家電の回収など出来ることからコツコツ実施しています。最終的にはごみ袋の有料化も検討していく必要があるかもしれません。今後、スマートシティの取り組みの一つとして廃棄物の削減を取り上げ、この中で、市役所だけではなく民間のごみ回収業者やリサイクル業者とも連携してごみ削減運動を展開していきます。

吉元:スマートごみ箱のように、一度やってみたからこそ分かることがたくさんあります。諦めずに20%削減へ向けて二瓶さんをはじめとする皆さまと一緒に行動し続けていきたいです。またSAPではごみ問題の解決と教育を関連させたプロジェクトを計画しています。具体的には、小中学生に対してのプログラミングの授業の中でスマートごみ箱のセンサーを作ってもらい、自宅に持ち帰り使ってもらうことで家庭におけるごみ意識の向上を一石二鳥で目指すというものです。また、クリーン・オーシャン・マテリアル・アライアンス(CLOMA)という、プラスチックの循環型経済を作る団体とも活動を推進しています。CLOMAとともに会津若松市民とのデザインシンキングワークショップを実施し、都市型だけではなく会津若松のような地方において循環型経済を作り上げるにはどうしたら良いか検討を進めています。

最後に

ごみ問題は決して行政だけの問題ではありません。行政や市民はもちろんですが、民間のリサイクル業者から、製品や素材の製造まで、バリューチェーンに関わる全ての企業、行政、市民が一体となって取り組みを進めていく必要があります。ごみ問題はかつて話題になった公害による数々の病気のような特定地域の人への健康危害だけではなく、現在は人類を含む地球上の環境全体への影響が問題になっています。全ての個人、企業、行政が危機感をもって行動を改善しなければならない一方で、未だ解決へのアプローチ方法は画一化されておりません。総じてごみの量削減はまだまだ壁の多い社会問題の一つですが、SAPはこれまで他社や地域と協業、共創してきた経験を活かし、企業や行政を巻き込んで挑戦を続けていきます。
SAPイノベーションフィールド福島 所長 吉元宣裕 紹介
編集者の想い:

千田遼太郎

本記事では、SAPジャパンが現在挑戦している会津若松との事例を紹介しましたが、こういった活動はより多くの行政、企業、個人が連携してこそ実現する課題だと感じています。現に、今回会津若松でおこなった実験で、何か大きな変革が起きたわけではありませんが、こういった挑戦を行う数々の点が結びついたときに決定的なソリューションが生まれるのではないかと思っております。このブログをご覧になった方で、ごみ問題のSAPを活用した解決策になにかアイデアのある方がいらっしゃいましたら、是非ご連絡頂きたいと思っております。社会解決先進国を目指し、是非一緒に取り組みましょう。

 

植村勇斗

植村勇斗

今回の会津若松市役所における取り組みでは、市役所内でのごみ問題に対する意識が既に高かったこともあり、思うような成果を得ることができませんでした。しかし、今回の取り組みのようにデータを収集し可視化をすることによって、問題を正確に把握することができるようになります。ごみ問題に限らず、多くの社会課題は複雑で簡単に解決することのできない問題です。そのため、すぐに成果が出なくとも試行錯誤を繰り返し継続的に取り組んでいくことが重要なのではないでしょうか。また、今回の取り組みではドイツで活用されたソリューションが日本独自の観点から使われました。会津若松市での実証実験の成果が日本全国のみならず、世界に向けて今後発信されるものになればと思います。

木村優希

木村優希

サステナビリティに関する意識を日々持ち続けるのはそう簡単なことではないかもしれません。しかしこの現状を変えたい、どうにかしたい、そんな危機感を持っている人は多くいると感じています。現に、SAPが会津若松市でごみ削減プロジェクトを実行することができたのもそう感じている市役所の方々がいたからです。問題意識を持っている方々の声を輪で広げ、ビジネスの仕組みに落とし込むSAPならではの強みが今後様々な領域で活きてくるのを期待しています。一人だけで解決できる問題ではない以上、一緒に肩を並べトライ&エラーを繰り返し新しい事例を是非作っていきましょう!

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