第1回 モノ売りからコト売りへ -サブスク/従量課金ビジネスにおける請求処理の重要性-
作成者:SAP Japan SolEx 編集部 投稿日:2021年11月11日
最近、”サブスク”と言う言葉を良く聞くようになりました。日本企業にとっても、サブスクモデルへの事業転換は、これからの成長へ向けて重要な検討課題と成っています。そこで、SAPが提供している”サブスク”ビジネスのソリューションを3回シリーズでご紹介します。
モノ売りからコト売りへ
様々な産業分野において、モノやサービスを1つ/1回いくらで販売する従来の「モノ売り」のビジネスから、サブスクリプションや従量課金でサービスや体験を提供する「コト売り」のビジネスへとシフトする動きが着実に広がっています。
クラウド環境の使用を提供するビジネスでは、時間やGBなどの単位で使用した量に応じた価格でサービスが提供されています。また、クラウドサービスの提供において、基盤となるデータセンターに提供される電力の価格に応じてクラウドサービスの価格を動的に変更するケースも存在します。ソフトウェア産業のみでなく、電気自動車や家庭向けの電力供給などの分野においても、新たなサブスクリプションや従量課金のサービスの出現が見られます。
コト売りのメリット
サブスクリプションや従量課金のサービスは、自身の都合にあわせて最適なプランを選択することで、必要なサービスを、必要な時に、必要なだけ享受できる利便性から、サービスを利用するユーザにとって大きなメリットがあります。
サービスを提供する企業にはどのようなメリットがあるのでしょうか。
従来のモノ売りでは、顧客との接点は基本的に売買が成立するその時点のみです。このため、顧客がどのように製品やサービスを使用しているのか、どのような感想を持っているのかなど、ビジネスに有益な情報を得られる機会は限られています。これに対し、サブスクリプションや従量課金のサービスは、顧客との接点が増えることにより得られる情報や、それに伴う気付きが多くなり、より良いサービスや新しいサービスの提供へと繋がる可能性が広がるというメリットがあります。
また、ユーザの使用に基づく価格設定を行っている企業、すなわち従量課金を採用している企業は、従量課金を全く採用していない企業と比較して、1.5倍の速さで成長しているとの報告※があるように、企業にとって直接的なメリットも存在します。
※Subscription Economy Benchmark: Usage-based Pricing
サブスクリプションや従量課金は、ビジネスとして比較的適用しやすい分野と、適用に工夫が必要な分野が存在しますが、顧客と企業の双方にとってメリットがあるため、今後も着実に広がっていくものと考えられます。
なぜ請求処理が重要なのか
「コト売り」ビジネスにおいて考慮すべきことはいくつかありますが、本稿では特に「請求処理」の重要性に焦点を当てます。
サブスクリプションや従量課金のサービスを提供する場合、いつ、どのようなサービスを、誰に、どのような料金体系で、どのように提供するかというサービスの中身に議論が集中します。もちろんそれらはとても重要ですが、サービスを背後で支える請求処理についても、予めしっかりと考慮しておくことがとても重要です。なぜなら、サブスクリプションや従量課金サービスの請求処理では、請求の元となるユーザによるサービスの「使用データ」の処理が非常に複雑であり、この処理を誤ると収益漏れや重複請求に繋がり、ひいては顧客満足度や市場競争力の低下などを招き、ビジネスに大きな悪影響があるからです。
請求処理システムの限界がサービスの限界
「使用データ」の処理は非常に複雑であるため、1)自社開発のシステム、2)従来の「モノ売り」に対応したシステムのカスタマイズ、3)手作業やエクセル、等での対応には限界があります。それら従来の方法では、「このような付加価値のあるサービスを提供したい」、「新規顧客開拓のためにこのような料金モデルを適用したい」というサービス側の要求に、システム側が対応できない、もしくは柔軟かつ迅速に実現することができないため、結果として魅力ある製品や競争力のあるサービスを市場に提供できないという事態に陥ります。
「使用データ」の適切な処理が重要
そのような事態を避けるために、サブスクリプションや従量課金サービスの導入においては、サービスを背後で支える請求処理、そしてその元となる「使用データ」の重要性をきちんと理解し、「使用データ」を確実かつ適切に処理できる仕組みを採用することが、サービス導入成功の鍵となります。
次回は、「使用データ」処理の重要性について紹介します。