JSUG SAP S/4HANA移行を考える会ブログ:第1回 移行の目的とポイント

作成者:梅沢 尚久投稿日:2021年11月15日

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2021年10月27日(水)11時〜13時にJSUG主催の「SAP S/4HANAへの移行を考える会」がオンラインで開催されました。今回で5回目を数える本会ですが、そのテーマへの関心の高さを伺わせるように多くのSAPユーザーの皆さんが参加され、138名のお客様にオンラインで参加いただきました。5回目の本会は、9月8日に上梓した「〜事例から学ぶ〜 SAP S/4HANA導入がもたらす企業のビジネス変革(以下、事例本)」を取り上げた会となりました。

このブログでは、10月27日に開催された「JSUG SAP S/4HANAへの移行を考える会」のアジェンダに沿って、5回に分けて内容をお伝えして参ります。

第1回:事例本から読み解くSAP S/4HANAへの移行の狙いとポイント

第2回:SAP S/4HANA移行から始めるDX

第3回:SAP S/4HANA へのスピーディな移行を実現した検討ポイント

第4回:JSUGサポーターから見たSAP S/4HANAへの移行について

第5回:パネルディスカッション「お客様のお困りごと上位3つについて」

今回は第1回になります。当日のセッションに参加できなかった方にも、きっと、SAP S/ 4HANA移行を検討・推進する有効なヒントをこのブログを通してお伝えできると信じています。

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「事例本から読み解くSAP S/4HANA移行への狙いとポイント」SAP上硲 優子

セッションの内容と気づきのセッションでは、事例本作成のプロジェクトリーダーであるSAP上硲優子さんがその事例本の読み方と注目すべき点について端的に解説してくれています。

この事例本作成の背景:

2019年に出版した「日本企業のためのERP導入の羅針盤~ニッポンのERPを再定義する~」で中心においた“旧来のERPの切り替えをどう進めればいいのか?これまでのやり方は良かったのか?”といった過去からの経験に学んだ賢者の知恵を共有し、未来の導入検討企業に対しての提言をまとめたものでした。

 

 

 

 

今回は、そこから一歩進み検討を始めたユーザー企業の皆さまが、具体的に検討を進めるためにもう少し具体的にメリット・会社上層部やユーザーを説得する上での理由付けを知ることと、先行した企業がどのように導入を進めたのか?その時に生じた課題は?など実行に向けての学びとなることを目的としています。

 

今回14社もの企業様が自社のプロジェクトについて取材に応じていただきました。

  1. 伊藤忠商事株式会社
  2. NTTアドバンステクノロジ株式会社
  3. 第一稀元素化学工業株式会社
  4. 大和ハウス工業株式会社
  5. テクノホライゾン株式会社
  6. テルモ株式会社
  7. 東京化成工業株式会社
  8. トラスコ中山株式会社
  9. 株式会社ニチレイ
  10. 日本ビジネスシステムズ株式会社
  11. 株式会社日立ハイテク
  12. 本多通信工業株式会社
  13. 三菱ケミカルシステム株式会社
  14. 株式会社村田製作所

この14社の移行の目的をまとめてみると、以下の2つの目的が共通してみられると解説しています。

目的1:脱レガシーによる成長基盤の構築

  • 導入当初から変わってしまった状況への対応
  • 将来的な変化にも対応できる仕組みづくり
  • ERPだけでなく、システム全体の見直し・シンプル化

目的2:グローバル・グループ統制

  • 現地任せだったITの統制・標準化
  • 経営指標の統合や業務プロセスの標準化も合わせて実施

 

目的1:脱レガシーによる成長基盤の構築についての考察

全ての機能をERPに集約、自社の業務プロセスを正とした大量のアドオン開発といった肥大化したERPが当時の主流であり、多くの顧客に共通する現状であるということです。

それによりその後に始まった多くの変革の波(モノ売りからコト売りのような業態変化からCovid-19によるビジネスニーズや業務形態の見直しのような社会的変化まで)への対応にシステムの改修が追いつかず、業務とシステムの間での乖離や、システムに引っ張られて企業のビジネス変革が思うように進められないといった課題が見て取れます。

当日投影資料からの抜粋

これに対する現在のプロジェクトにおける回答としては、To Beモデル(あるべき姿)をきちんと会社として定義すること、そして業務の状況・変化に対応するために、ERPはできるだけシンプル化(Fit 2 Standardアプローチと標準機能活用)し、いつでもデジタル分野との連携を強化できる、すなわち変化に合わせて必要な機能を短期間で追加・連携できる仕組みを作ることが重要だと言うことです。そしてそのためには、ERPの更改という狭い範囲ではなく、さらに広いITランドスケープの見直し検討が必要となるケースが多いと言うことも、挙げていました。

 

目的2:グローバル・グループ統制について

当日投影資料からの抜粋

 

ここでのポイントは、過去の段階的かつ個別細分化・独立化していた導入方法に比べて、クラウドERP活用によるシステム展開スピード・連結性の向上、SAPとSAP以外のシステム混在の環境においてもSAP S/4HANAからリリースされた「セントラルファイナンス(会計機能)」という新ソリューションによる会計データ統合など、国をまたがる統制を利かせやすい仕組みが充実してきたということが挙げられています。

そして、それを採用する背景として、業務側・経営側の視点でも経営管理高度化・グローバル化のニーズが従来よりも高まってきていると言うことが示唆されています。

その中で、お客様に取材を行う中で、気になったと言う以下の2点について考察しています。

1.もう一度、BPR(Business Process Re-engineering)は必要なのか?

一度SAP ERPを入れていて過去にもBPRを行なっているのに、改めて実施する必要はあるのか?という今回の取材を通じて生じた疑問について、自ら“必要である”と結論づけています。

 

その理由・意義として挙げているのが、以下の点です。

  • SAP S/4HANA導入を「ITごと」にしない。
  • 経営サイド、業務サイドと今後を見据えて業務をどう行うべきか、それを支えるITとはどうあるべきかをそのステークホルダー達とITと共有・話し合う機会となる。
  • 例外としてBPRを今回のタイミングで実施されなかったケースは、以下の2つ
    • 数年前に事前にBPRだけ実施しているケース
    • まずはSAP S/4HANAへの移行を優先し、その後で提供されている機能ベースでBPRを検討するケース

タイミングだけの問題であり、前後どこかのタイミングで必ずBPRを実施していると言うことが判ります。

 

2.ユーザー側の納得感

いかに現場ユーザーと経営側の両方に納得感を持ってもらうことの重要性に言及するケースが多くあったことを上げています。構想策定の段階からシステムのコンセプトづくりにユーザに参画してもらい、個別ではなく全体から参画してもらい、担当外業務まで含めて全体を俯瞰して業務を作り上げていくというあるべき姿を考えていくケースを特徴的な例として取り上げています。

導入中においても現場に対するFit 2 Standardの実現に対してTopの協力を得ている。ITだけでなく会社が新しい方向に向かうことに取り組んでいくケースについても取り上げていました。この話を聞いた時、私が過去に訪問した米国の企業のSAPプロジェクトの責任者の話を思い出しました。その方は、“システムを作り上げていくことが難しいのではなく、このプロジェクトにおいて最も大切で大変なことは「Change Management」である。会社のTopがその変化・新しいプロセスや取り組みに対してフル・コミットし、その必要性を現場や必要であれば取引先まで含めて説いていくことで完成すると仰っていました。まさに、同じことが日本のプロジェクトの現場でも話し合われ、メッセージされていることを認識したところです。

 

先人の提言:羅針盤本と事例本を見比べて:

今回取り上げた各社事例の中の取り組みは、2019年出版した羅針盤本の中でも、発言・取り上げられた内容が多くあるとまとめています。

当日投影資料からの抜粋

 

まとめ:

およそ20分という短い時間の中で、多くの示唆に富んだ内容が語られていたと感じました。きっと、現在SAP ERPをご利用のユーザー様にとって、羅針盤と合わせて、自社の取り組みにとってのモデルケースになるものや、課題解決への指針となるお客様の導入事例が見つかるのではないでしょうか。JSUGが2019年に実施したアンケートによれば、SAP S/4HANA化へ踏み出すことができていない・準備が進まない理由の一つに、多くの企業がSAP S/4HANAに移行するための理由、すなわち自社の”移行の目的”を作ることの難しさをあげてるようです。SAPはこのお客様にとっての移行の”目的”と”計画”を作るお手伝いをワークショップという形で提供を始めています。これらが、より多くのSAPプロジェクトの関係する皆さんへの情報提供のきっかけとなることを願っています。

 

梅沢 尚久 (Naohisa Umezawa)

SAP Japan Industries & Customer Advisory Presales|JSUG S/4移行を考える会 事務局

出典:

  1. 「〜事例から学ぶ〜 SAP S/4HANA導入がもたらす企業のビジネス変革」(著:Japan SAP Users’ Group 2021年)
  2. 「日本企業のためのERP導入の羅針盤 ~ ニッポンのERPを再定義する」 (著:Japan SAP Users’ Group 2019年)
  3. 「第5回SAP S/4HANAへの移行を考える会 2021年10月27日開催 」 事例本から読み解く SAP S/4HANA移行への狙いとポイント|SAP上硲 優子発表資料
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