JSUG SAP S/4HANA移行を考える会ブログ:第4回 JSUGサポーターから見たSAP S/4HANAへの移行について
作成者:内藤 崇 投稿日:2021年11月15日
2021年10月27日に「JSUG SAP S/4HANAへの移行を考える会」がオンライン開催されました。今回は9月に発刊された書籍『~事例から学ぶ~SAP S/4HANA導入がもたらす企業のビジネス変革』をテーマにコンテンツを構成、ご寄稿いただいたお客様およびSAPパートナー様のご登壇、パネルディスカッションと盛りだくさんの内容になりました。
このブログでは、10月27日に開催された「JSUG SAP S/4HANAへの移行を考える会」のアジェンダに沿って、5回に分けて内容をお伝えして参ります。
第1回:事例本から読み解くSAP_S/4HANAへの移行の狙いとポイント
第2回:SAP S/4HANA移行から始めるDX
第3回:SAP S/4HANA へのスピーディな移行を実現した検討ポイント
第4回:JSUGサポーターから見たSAP S/4HANAへの移行について
第5回:パネルディスカッション「お客様のお困りごと上位3つについて」
今回は第4回になります。
「JSUGサポーターから見たSAP S/4HANAへの移行について」と題して、⽇本アイ・ビー・エム株式会社 IBMコンサルティング (旧グローバルビジネスサービス) エンタープライズ・アプリケーションズ⾰新 事業本部 パートナー 佐藤 俊 氏がご講演されました。
1.考察:好業績企業と低業績企業の差異を生み出しているのは何か?
まず、佐藤氏が引用したのは、IBMが2020年9月~10月にかけて、世界50か国以上、26業界の3,000名のCEOを対象に調査し取り纏めた「IBM Institute for Business Value 経営層スタディ・シリーズ:CEOスタディ2021」という資料でした。
この資料においては、「好業績企業」「標準的企業」「低業績企業」を以下のように定めています。
好業績企業:過去3年間および2020年の双方において、同業他社と比較して売上成⻑率が上回っている企業
標準的企業:過去3年間および2020年のどちらか一方に関して、同業他社と比較した場合の売上成⻑率が上回っており、他方については下回っている企業
低業績企業:過去3年間および2020年の双方において、同業他社と比較して売上成⻑率が下回っている企業
佐藤氏は、上記の資料を引用しつつ、好業績企業が差異を生み出す5つの領域として「リーダーシップ」「差別化のためのテクノロジー活用」「従業員へのエンゲージメント」「オープン・イノベーションを実現するためのパートナーシップ」「基盤としてのサイバーセキュリティ」を挙げています。
今回の公演では、特に、以下の三点を強調されました。
リーダーシップが第一:
自社がどこに向かうのか、その方向性を「背骨」とし、全社DXを進めるうえで、「なぜ?」「いつ?」「何を?」するのかを考えて決めていくことが重要
差別化のためのテクノロジー活用:
自社が、何をやってどこに向かうのか?を定め、競争優位を生み出すためにテクノロジーを活用していくこと
オープン・イノベーションを実現するためのパートナーシップ:
全てを自社でやろうとするのではなく、自社が注力することを決めて、必要な機能を得るために他社との協業は不可欠
2.好業績企業から学ぶSAP S/4HANAトランスフォーメーションの在り方
好業績企業は、SAP S/4HANAトランスフォーメーションの検討・構想段階から上述の5つの領域を強く意識していると言います。
さらに、SAP S/4HANAを基幹業務および全社DXを支えるプラットフォームと位置づけており、次の4点の重要性を強調されました。
・ビジネスのリアルタイム性の向上
・UIの改良による業務効率化と従業員エンゲージメントの向上
・標準機能を使うとともに継続的にリリースされる新機能を活用しSAP S/4HANAの能力を最大限に活かし、システムアーキテクチャーの最適化を図る
・SAP S/4HANAの標準機能は自社の差別化要因にはならないので、企業競争力・優位性を生み出す独自機能とSAP S/4HANAを迅速に連携させる
最後に、やはり一番大事なのは「リーダーシップ」であると説きます。
「企業としてどこに向かうのか?」を明確にして、それを骨格として「なぜDXを進めるのか?」について自社でしっかりと考える。いつ・何を行うのかを決めて、全社DXを進めることが重要であると言います。
SAP S/4HANAへの移行を「ひとつの基幹システムをどうするか?」という議論ではなく、企業が向かう方向性に照らしてどうするのかを考えていくことが重要であるというお話で締め括りました。
3.まとめ
⽇本アイ・ビー・エム佐藤氏が最も強調されていたのは「企業として目指すべき姿を明確にして、その実現のためにDXを実行する。そのDXを支えるプラットフォームとしてSAP S/4HANAを活用する」ということでした。SAP S/4HANAへの移行を検討するにあたり、プロダクトありきではなく、会社のビジネスを支える基盤に位置付けていくこと、言い換えれば、SAP S/4HANAをどのように活用するかを自社の経営計画に合わせて定義していくことの重要性を訴えていたのではないでしょうか。