第2回 モノ売りからコト売りへ -サブスク/従量課金ビジネスにおける「使用データ」処理の重要性-
作成者:SAP Japan SolEx 編集部 投稿日:2021年11月29日
前回は、サブスクリプションや従量課金のサービスを導入するにあたり、提供するサービスの内容と同様にサービスを支える請求処理も重要であることを紹介しました。本稿では、その請求処理の元となる「使用データ」処理の重要性と困難性について紹介します。
なぜ「使用データ」の処理は重要なのか
使用データはユーザがサービスを使用したという証であり、ユーザへの請求の根拠になります。使用データを何らかの理由で失ったり、請求処理プロセスのどこかで使用データが処理対象から外れてしまったりすることは、本来得られるべき収益を失うことを意味します。実際、契約管理や支払いのフォローアッププロセスが完全に整っていないため、EBITAの1〜5%が企業から見過ごされているとの記事※もあります。※Revenue Leakage: how do you identify revenue leakages in your company and recoup them?
また、何らかの理由で同じ使用データを複数回処理した場合、それはユーザへの重複請求となり、顧客からの信頼を失うことに繋がります。
このように、請求につながる「使用データ」の取り扱いの不備は企業の収益や顧客満足度に影響するため、適切かつ正確に処理することが重要になります。
なぜ「使用データ」の処理は複雑なのか
実際の「使用データ」の処理は非常に複雑で高度な専門性と技術が要求されます。なぜ「使用データ」の処理は複雑なのかを、「使用データ」の処理に求められる要件から見ていきます。
1)多様な「使用データ」の収集能力
「使用データ」は、クラウドシステム、社内システム、IoT機器など、様々なシステムや機器から出力されます。「使用データ」のデータフォーマットも様々であり、それらを収集するための接続インタフェースや対応プロトコルも様々な種類があります。さらに、「使用データ」の生成タイミング(リアルタイム/バッチ)や容量などもそれぞれ異なります。「使用データ」の処理のためには、まず「使用データ」を収集できる能力が必要になります。
2)データの充実化と品質の確保
「使用データ」という生のデータを請求処理に使用できる「請求可能データ」と変換するためには、「使用データ」に関係する様々な情報を充実化する必要があります。例えば、生の「使用データ」に関して以下のような事項を明らかにする必要があります。
- 使用データの元になるサービス利用者
- サービス利用者の契約情報
- 請求先(サービス利用者と請求先が同一とは限らない)
- 請求に必要なデータの粒度
また、「使用データ」の処理において以下の事項を考慮する必要があります。
- 監査に備えたデータのトレーサビリティ
- 1回限りのデータ処理の保証(重複/漏れの排除)
- エラーデータの処理(重要データの廃棄予防)
3)拡張性と堅牢性
「使用データ」はサービスの開始とともに急激に増加します。「使用データ」の処理は、急増するデータに対応できる拡張性、そしてそれらを高速かつ安定して処理できる堅牢性を備えている必要があります。
上記の他にも「使用データ」処理において考慮すべき点はいくつかあり、「使用データ」処理の複雑さを見て取ることができます。
「使用データ」処理の現状
この複雑な「使用データ」の処理は、一般的にどのように実現されているのでしょうか?
実際には、自社開発や委託開発などスクラッチからシステムを開発しているケースがとても多いようです。また、本来用途の異なる既存のパッケージソフトウェアに膨大なカスタマイズを追加して使用しているケースも見られます。いずれにしても、「使用データ」処理の複雑さのため、システムの開発費や維持費の高騰、性能不足によるデータ処理の遅延、不正確なデータ処理に起因する収益漏れの発生など、様々な困難に直面している企業が少なくありません。
適切な専用ソリューションの必要性
サブスクリプションや従量課金の請求処理を安定して実行し、サービスを速やかに市場に提供するためには、「使用データ」の処理を適切に行う専用ソリューションの導入が不可欠です。
次回は「使用データ」の処理に特化した専用ソリューションである「SAP Convergent Mediation by DigitalRoute」を紹介します。