サステナビリティに向けた実践手引き3~全体方針~

作成者:福岡 浩二投稿日:2022年1月5日

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

本投稿では、サステナビリティを企業として取り組むという意思を立てた後に、どのように初期設計を行うのか、について紹介します。

サステナビリティがテーマでも、通常の企業活動と同様にPDCA(Plan-Do-Check-Action)を回す仕掛けが求められます。ただし、従来との関係者の違いやそれを評価するルールが確立されていないことが多いため、若干工夫が必要となります。

今回の投稿では、特にサステナビリティ特有のポイントに絞って「4つの視点」を取り上げます。
ただし、その原動力は今までも取り上げたPurpose、またはそれにつらなる組織・個人の目的意識の定着度合いがきいてきます。

1. Policy(企業全体の指針)

まずは企業全体としての方向性を指し示すことですが、ここではPurpose設計とも深いつながりがあります。単なる飾り言葉だけでなく、ある程度の整合性は意識する必要があります。
まずは投資家だけでなくステークホルダーとの関係を見つめて優先順位をつけていくのが王道になります。
その手段としてよく使われるのはSDGsのGoalsを活用したマテリアリティ(重要な課題)設計です。

SDGs自体の説明は割愛しますが(例えば外務省HP)、ある程度社会課題の網羅性があるのと、すでに多くの企業が統合報告書などで援用しているほど普及しているため、国内外の多様なステークホルダーとの対話手段として有効です。

マテリアリティ設計では、自社にとっての重要性とステークホルダーにとっての関連性の2軸で評価を行うやり方が多いです。
SAPでは、自社でのSustainabilityにかかわるテーマを23個に分類し、この2軸でマテリアリティを表現しています。(下図は2020年度のSAP統合報告書の例)

ここで難しいのが、そのインパクト度合をどう決めるかです。
以前こちらの投稿でもふれましたが、SAPのケースだと、できる限り非財務と財務指標の相関をデータサイエンスの手法で解析することで1つの目安にしています。

 

2. Process(組織・業務の設計)

従来のCSR部門だけでなく、サステナビリティ推進部など特定の部門を設けている企業も増えてきました。ただし、その組織の存在が、それ以外の事業部門での目的意識を希薄化してしまうリスクもあるため、どこまでをゆだねるかは課題となりがちです。

SAPのケースでは、2009年にCFO配下にCSO(Chief Sustainability Officer)とその専門組織を設立しました。CFO配下に置く企業はグローバルでも少ないように感じますが、あくまで持続可能性である以上は、「企業価値向上」というスタンスは変わりません。
専門組織内では、気候変動や循環型経済など、中長期での価値創造に連なるテーマごとに担当者をおいて、全体の施策立案及び関連部門と連携しています。
ただ、ある程度は既存の事業部門にも責任者を置いており、中央集権型というよりは連邦制のような体制に近いです。下記にサステナビリティ専門組織の役割を列挙しておきます。

・全社的なアプローチ、目的、優先順位の設定
・サステナビリティ・カウンシルの議長および指揮(連合体アプローチ)。
・ソート・リーダーシップとアウトサイド・インの視点を提供
・全体的な舵取りと財務/非財務で統合されたレポーティング管理
・環境パフォーマンスに関する統括

サステナビリティカウンシルでは、人事・ファイナンス・ITなど各業務部門の代表者で組成され、従業員エンゲージメントなど部門横断的な取り組みの進捗管理を行います。
そのほかにも、社外との協調的な取り組み(人権・AI倫理・プラスチック抑制など)についてもいくつか委員会があり、それらにもサステナビリティ専門組織が関わっています。

社内での非専門組織がどう関わっているかについて補足します。

実はある程度は過去からの連続的な営みで、特別な活動を始めたというよりはより包括的に組み込んだ、といったほうが正しい表現かもしれません。
背景として、元々2000年以降から、社内シェアードサービス化などバックオフィスを中心にグローバルでの業務標準化に取り組んできました。(下図参照)
サステナビリティに本格的に取り組む時期(2009年)にはその型は出来ていました。以降はその基盤を活用して、業務ルールやその評価指標を従来の合理性重視だけでなく、ステークホルダーの価値を引き出すことに置いてきました。例えば、従業員については「エンゲージメント」を重視した判断を行っています。

シンプルに言えば、今コロナ禍を受けて国・企業で取り組みが進められている”DX(Digital Transformation)”と同じです。むしろサステナビリティを実践するには「多様なステークホルダーとの対話」がカギになるため、「ルールとデータの透明性」を高める手段としてもDXの必要性がさらに高まるといってもいいでしょう。
自社事例に限らず、DXとサステナビリティは別テーマと切り分けず一体としてとらえることをおすすめします。

 

3. Platform(ICTなど技術を活用した対話の場)

2で記載したとおり、ある程度のルール標準とデータ化という前提の上で、それを具現化する手段としてICTを積極的に活用していきます。ここはDXプロジェクトと同じで、目的が明確であればあるほどシステム化のハードルが下がります。

ここもケースとして自社を取り上げます。

2のとおり、もともとグローバルで業務標準の動きがあり、ICTについても当時のCOO(Chief Operation Officer)直轄で3つの主要部門が社内の改革を推進してきました。(下図参照)

ざっくり3つの部門の役割を解説すると、Transformation Officeが企業戦略を業務に落とし込む青写真を描き、そのプロセスをより具体的に設計して担当部門と連携するのが Global Process Office、そしてそれをICTで実装・運用するのがIntelligent Enterprise Solutionsとなります。

上図の左に表している通り、「業務(プロセス)」・「ヒト(組織)」・「データ」・「システム」は相互連携しつつ同時に変革を推し進めていき、その共通の考え方がAnalytics(データドリブン型)とおいています。

実際に使うICTは基本的には自社製品を使い倒しています。

ERP ( SAP S/4HANA ) は当然ながら、その業務プロセスの見える化には SAP Signavio、KPIを可視化するのは  SAP Analytics Cloud を使っています。(社内Sustainability Dashboardも同様)

この辺りはまた後続でも深掘りしたいと思いますが、Platform導入において重要な要素を1つだけ添えておくと「運用」です。
ここはサステナビリティに限らずシステム導入共通の課題ですが、要は「どうユーザにシステムを使い続けてもらうか」です。そのためには「評価を通じた対話の仕組みづくり」が重要になってきます。

SAPのケースではその対話手段としてQualtricsというエンゲージメントプラットフォームを積極的に使っています。
例えば SAP Analytics Cloud や  SAP Business Technology Platform (BTP)による付加的なアプリケーションで作った見える化の仕組みは、簡単にユーザがスコア付けやコメントなどフィードバックできるようにしています。そして実際のアクセス数などを解析して、どのユーザ(SAP従業員)に使われているのかを把握してUI・UX改善につなげています。上記のIntelligent Enterprise SolutionsでもUIを専門としたメンバも所属しています。

特にサステナビリティはヒトの想いとの連関が相対的に深いため、ほかのシステム以上に使い手に寄り添ったシステム実装とその運用ルールが必要とされます。

 

4. People(関係者のマインドセット)

くどいかもしれませんが、結局は従業員個々の主体的な意識づけによるところがあるため、そのマインドをどう組織的に育むのかは極めて重要な視点です。
以前こちらで触れた「ボトムアップ型Purpose」と同じ話で、日々の活動で強制的に押し付けるのでなく、いかに場を用意して地道にサポートしていくのかが王道ではないかと思います。

SAPでは、社会課題解決をテーマにした支援組織・イベントがありますが、ほかにもD&I(ダイバーシティ&インクルージョン)なども、グローバル・日本それぞれで誰でも関われる活動があります。
どこまでをサステナビリティ枠内として位置付けるかは悩ましいところがありますが、少なくともPurposeを育む活動としてとても意味があります。
特に「多様性の受容」の重要性は、いくら強調しても過ぎることはありません。単にサステナビリティだけでなく、社会・産業の変革期において重要な要素だと思います。

他には知識の底上げの意図で、オンライン教育などを使う手段もあります。

SAPでは社内で数千の教育コンテンツを提供しており、なかにはOpenSAPとして外部公開しています。多くはSAP製品の学習目的ですが、なかにはSustainabilityトピックとして気候変動・循環型経済・社会責任に関するコースも受講できます。ぜひ関心を持った方は受講してみてください。

まとめ

個々の施策詳細まで落とし込むと、なかなか今回のような全体方針を立ち返る機会が少なくなります。例えば、4つの視点のレベル水準を可視化して定期的に成熟度を確認すれば、組織全体としての足並みがそろい、個々の活動効果が高まります。

1つ注意点ですが、こういった成熟度マップを導入すると、その方法論自体に酔ってしまい頑張った感だけ醸成されて、何も実行が伴わないという現象も起こりえます。
あくまで主体は「個々の行動と改善」であり、そのためのフレームワーク自身が足かせになると判断するならば、思い切って考え方から見直すという選択肢も残しておいたほうがよいと思います。

 


以前の記事はこちら

2022/1/20に、一般財団法人 省エネルギーセンター主催のSDGsセミナー特別枠で、SAPのカーボンニュートラルに向けた取り組みについて講演します。下記からお申込みできます。

※追記
本イベントは終了いたしました。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

連記事

SAPからのご案内

SAPジャパンブログ通信

ブログ記事の最新情報をメール配信しています。

以下のフォームより情報を入力し登録すると、メール配信が開始されます。

登録はこちら