「SAP Japan 2023 Beyond」~SAPジャパンのあるべき姿をすべての社員が問い直す中期変革プログラム~(前編)

作成者:SAP Japan 2023 Beyond PMO 投稿日:2021年12月20日

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これからの未来において、SAPジャパンはどうあるべきか?」をすべての社員が問い直し、そのビジョンの実現を目指す中期変革プログラム「SAP Japan 2023 Beyond」がスタートしてから1年以上が経過しました。2回にわたってお届けする本ブログでは、まず前編として総勢で約150名の社員が参加するこのプログラムの狙いや仕組みづくりについて、常務執行役員 チーフ・トランスフォーメーション・オフィサーの大我猛さんと、PMO(Project Management Office)のメンバーである五十嵐剛さんに話を聞きました。(聞き手:SAP編集部)

「2032年のビジョン」の具体化に向けた社員の自発的な取り組み 

「SAP Japan 2023 Beyond」は、SAPジャパンの社員自らがボトムアップで作り上げた全社横断のプログラムだと聞いています。このプログラムが生まれた経緯や狙いについて、あらためてお聞かせください。

大我:まず「SAP Japan 2023 Beyond」の背景には、SAPジャパンが創立20周年に伴って2012年に発表した「SAPジャパンビジョン2032」があります。このビジョンは、「人」「顧客」「製品・サービス」「社会」の4つの視点で2032年におけるSAPジャパンのあるべき姿を定義したものですが、20年という長期にわたるビジョンであることから、どうしても漠然とした面が否めませんでした。

また、その策定から約9年の時間が経過する中で世の中の仕組みやビジネスはますます複雑化し、変化のスピードも速くなっています。そこで、このビジョンの実現に向けた具体的な道筋を示すべく、2023年までに解決すべき重要なビジネス課題にターゲットを絞って、2020年4月にスタートした3カ年の変革プログラムが「SAP Japan 2023 Beyond」です。

五十嵐:「SAPジャパンビジョン2032」は、そのスローガンとして「ニッポンの『未来』を現実にする」を掲げています。ここには世界の叡智と革新性をもって、すべての人と共により良い明日を創造するという意味が込められていますが、「SAP Japan 2023 Beyond」ではそれを受ける形で、「日本発、世界にさらなる躍動を」というスローガンをあらためて設定しました。これは「世界はどうなっていくのか?」という受け身の姿勢ではなく、「世界をどうしていきたいのか」というマインドに基づいて、お客様と共に取り組むさまざまな変革課題を「自分ごと」として、SAPジャパンの社員全員が自ら動くことの重要性を表現したものです。

ー特にこの数年、SAPは単なるソリューションベンダーではなく、お客様と共に新たな未来を創造するパートナーとしての姿勢より鮮明に打ち出しています。「SAP Japan 2023 Beyond」も、こうした理念を具体化した変革プログラムだということですね。

大我:その通りです。「SAP Japan 2023 Beyond」の目標は大きく分けて、①お客様に対する新たな価値の提供、②社内における従業員体験の向上、③SAPジャパンのビジネスを通じた社会的価値の向上の3つです。特に「①お客様に対する新たな価値の提供」については、社会そのものや市場環境の変化に伴って、ビジネスのあり方は確実に変わりつつあります。例えば、本格的なクラウド時代を迎える中、そこで求められるのは従来のようなオンプレミスのERPパッケージだけではありません。SAPはすでにクラウドを活用した多彩なソリューションを提供していますが、これからは私たちが提供する製品やサービスに対する評価も、そこからどのような価値が生まれたかというアウトカムベース(成果重視)のモデルに変わっていく可能性があります。私たちは過去の発想に縛られることなく、そうした変化にも柔軟に対応していかなくてはなりません。

五十嵐:こうした新たなビジネスモデルを実践する上では、お客様の期待に応えるための組織の再構築と同時に、社員のマインドやスキルの変革が不可欠です。つまり、組織と人をどのようにして変えていくかが非常に重要な課題となります。そのため、「②社内における従業員体験の向上」についても、その方向性を具体的かつ実践レベルで示していくことを目指しています。

すべての活動を「自分ごと化」して、メンバーの主体性を引き出す

ー「SAP Japan 2023 Beyond」の組織構成やメンバーの選抜は、どのようにして決定しているのでしょうか。

五十嵐:「SAP Japan 2023 Beyond」では、課題領域を「社会」「顧客」「人」「製品・サービス」「認知」の5つのカテゴリーに分け、さらに各カテゴリーで個別のテーマを持って活動する12のフォーカスチームを設定して、それぞれが目標達成に取り組んでいます。

これらの活動の中では、それぞれのフォーカスチームが取り組んでいる課題の進捗を図る指標としてOKR(Objectives and Key Results)が設けられています。例えば、「社会」の領域で「CSR for Everyone:CSR活動を通して社会への貢献に関する従業員のマインドセットを醸成、向上させる」をテーマにしたチームであれば、「SAPジャパンの従業員が、年間で延べ3,000回のCSR活動を実施する」といった指標が用意されています。これにより、単なるビジョンにとどまることなく、個々の活動が具体的な成果につながっているかどうかを客観的に評価することができます。

大我:5つの課題領域や12のフォーカスチームの設定については、初期段階で約30名の選抜メンバーが集まり、プログラムの骨子をとりまとめました。その後は各テーマに関心のある社員を自ら手を挙げてもらう形で募りながら、現在は150名くらいの体制でプログラムが運営されています。

ここには経営層、マネージャー層から若手社員に至るまで多様なメンバーが参加しています。具体的な活動計画においては、デザインシンキングなどの手法を使った100時間を超える議論を通じて、すべての活動を「自分ごと」にするための下地を作ることができました。

ー参加メンバーの皆さんは、それぞれの所属部署で「本業」をお持ちだと思いますが、このプログラムに対するモチベーションはどのようにして維持しているのでしょうか。

大我:組織がどのような戦略を打ち出したとしても、それを実践するのは人です。やはり、すべての社員が戦略課題を「自分ごと」として捉え、自ら主体的に動くことが何よりも重要です。そこで「SAP Japan 2023 Beyond」では、「SAPジャパンが2023年にどうなっていれば、あなたは自分の仕事を家族に誇れますか?」という問いをメンバー全員に投げかけました。

その結果、メンバーからは多くの意見が寄せられ、議論も当然のように盛り上がりました。主催者側が議論のテーマや進め方をあらかじめ決めずに、参加者のエモーショナルな気持ちや行動を引き出すこの手法は「アンカンファレンス」と呼ばれますが、「SAP Japan 2023 Beyond」の計画策定においても役立てることができました。

常務執行役員 チーフ・トランスフォーメーション・オフィサー 大我猛

ー日本の組織風土、企業文化を考えると、経営層やマネージャーも同席する場では、若手社員が声を上げにくい気もします。

五十嵐:立場を超えた自由な議論ができるのは、デザインシンキングなどを通じてSAPが長年培ってきたカルチャーのおかげだと思います。自分の考えや意見を否定されることなく、自由に表明できるカルチャーが醸成されていることによって、誰もがためらいなく自分の想いを話すことができます。このプログラムがスタートした2020年4月は、コロナ禍の最中にあって対面での会話ができない状況でしたが、こうした中でもオンラインで活発な議論がなされ、SAPのカルチャーが生きていることを実感することができました。

部門を横断した人材ネットワークで、取り組みの成果を広く社会に還元

ー現在どのような取り組みが進んでいるかについて、いくつかご紹介いただけますか。

大我:私たちは「SAP Japan 2023 Beyond」の取り組みを通じて、これまで課題先進国と言われてきた日本の現状を、課題「解決」先進国に変えていきたいと考えています。この考え方は、SAPのコーポレートビジョンである「Help the World Run Better and Improve People’s Lives(世界をより良くし、人々の生活を向上させる)」で提唱されている理念そのものでもあります。

SAPのビジネスはお客様企業を相手としたBtoBビジネスですが、私たちのソリューションを導入して変革に取り組むお客様の先には多くの消費者や市民、ひいては社会そのものがあります。つまり、私たちのすべての取り組みは、その成果が広く社会に還元される重要な意味を持っていることを常に肝に銘じておかなければなりません。

五十嵐:こうした考え方に基づく取り組みの1つとして、沖縄市と一緒に進めている「ワクチン・コラボレーション・ハブ(VCH)」のプログラムがあります。SAPでは、2020年11月から企業によるワクチンの供給と流通の管理を改善し、政府と業界パートナーによる集団ワクチン接種プログラムの調整・展開を支援するVCHをグローバルで展開してきました。これを日本でも展開することになり、沖縄市とのコラボレーションがスタートしました。現在はVCHを利用することで、沖縄市の14万人の市民の皆さんに安心してワクチン接種を受けていただける仕組みを提供しています。

もう1つ、大分大学と共同で進めている「防災・減災のための情報活用プラットフォーム」の構築に向けた実証実験も、皆さんの生活にとって身近なテーマです。地震や台風などの自然災害は人間の力で止めることはできないわけですが、この取り組みではドローンなどを使って収集した多様なデータを分析することで、災害発生時に正確な情報を共有して人々の行動変容を促し、被害をできるだけ少なくすることを目指しています。このプラットフォームは、アジア各国で発生している複合型災害の対策にも活かせることから、現在は組織的なネットワークのさらなる拡大も進めています。

ーこうした社内横断的なプロジェクトにおいては、部門の壁が阻害要因になることがよくあります。SAPジャパンでは、部門間の連携や人材のネットワークがうまく機能しているということでしょうか。

五十嵐:変革に取り組んでいくためには、部門ごとに独自のルールがある縦割りの組織構造から脱却して、解決すべき課題に対して最適な人材が集まりチームを編成していかなければいけません。組織で決められた役割に基づいて自身の活動が決まるのではなく、実現したいビジョンに基づいて自身がやるべきことを決める必要があります。「SAP Japan 2023 Beyond」のすべてのフォーカスチームは多部門からメンバーが集まっています。どのような変化に対しても全社を横断してフレキシブルに対応できる体制づくりを目指しています。

SAP Japan 2023 Beyond PMOメンバー 五十嵐剛

企業の社会的価値を支える「パーパス経営」の重要性

プログラムのスタートから約1年半が経過していますが、参加しているSAPジャパンのメンバーにはどのような変化が生まれていますか。

大我:やはり、目指すべきところが「自分ごと化」された点が一番大きいのではないでしょうか。各メンバーの自らの取り組みに対する熱量は以前と比べても高くなっていて、誰に言われるまでもなく、全員が主体的に動く組織ができ上がりつつあります。

もう1つの変化は、このプログラムに関わっている約150名のメンバーの行動や発言が、所属部署の他のメンバーにも良い影響を与えていることです。ここで生まれるマインドの変化や人のネットワークも、これからの活動の大きな推進力となります。

ー全社横断のプログラムである「SAP Japan 2023 Beyond」が、SAPジャパンという組織の中で着実に成果を生み出しつつあるということですね。

大我:最近、「パーパス経営」という言葉が注目を集めていますが、SAPはかなり以前からパーパスを意識した組織運営を行ってきました。ここでは売上や利益といった財務指標だけではなく、社員とのエンゲージメントやブランドの認知度などの「非財務指標」が重要な意味を持ちます。例えば、「社員が売り上げに直接反映されないところで会社に貢献する意識を持っているか」「自分の仕事に誇りを感じているか」「他社から同等の給与や条件でオファーされても自社に残るか」といった非財務指標と従来の財務指標を組み合わせたパーパス経営は、企業が社会からの信頼を維持する上でこれからますます重要になっていきます。

また、パーパスは人材の育成という観点でも大きな意味を持っています。すべての社員が自分のパーパスを言語化し、深く認識することで仕事に主体的に取り組めるようになり、それが新たなスキルを習得する意欲にもつながります。SAPのパーパス経営も、こうして人材と組織が共に成長していくことを目指しています。

「SAP Japan 2023 Beyond」の中で、こうしたサイクルが生まれつつあることはとても素晴らしいことだと感じています。今まさに進行している活動、また今後生まれる活動において、すべての社員のパーパス意識が広く社会の中で新たな価値を生み出していくことは間違いありません。私たち事務局としても、こうした社員の活動の支援にこれまで以上に尽力していく考えです。

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