SAP HR Connect Autumn 2021:アステラス製薬の人事戦略 ~経営改革に貢献する人事部門の在り方とは~

作成者:SAP SuccessFactors編集部投稿日:2021年12月20日

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2021年11月25日、「SAP HR Connect Autumn 2021」がオンラインで開催されました。本稿では当日行われた3つのセッションのうち、アステラス製薬株式会社 人事部門長 杉田勝好様による「経営改革に貢献する人事部門の在り方とは」をご紹介します。

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同社は2005年に山之内製薬(旧)と藤沢薬品(旧)の合併により発足。中期経営戦略「Corporate Strategic Plan(CSP)2021」を掲げ、「人事は何のために存在しているのか」「ビジネスニーズを満たすために人事はどのような貢献ができるのか」を念頭に、人事戦略へ取り組まれています。今回は2025年までの達成を目指すCSPに向けた、OHG(組織健全目標/Organizational Health Goals)の観点を踏まえた人事戦略をご紹介いただきました。


アステラス製薬株式会社 人事部門長 杉田 勝好 様

 

冒頭、杉田様はアステラス製薬が掲げるビジョン「変化する医療の最先端に立ち、科学の進歩を患者さんの価値に変える」を紹介。「リソースの配分を研究開発費へさらに投資していくことが重要」と述べました。

■人事は何のために存在し、どのような貢献ができるのか

同社の日本国内での社員数はやや減少傾向にある一方、海外の社員数は今後も増加が見込まれています。また、既にレポーティングラインはセールスや研究開発など部門ごとにグローバル統合が完了。杉田様は「このグローバルなレポーティングラインの統合が、HRの行う人事施策やアクションにも大きく影響を及ぼしました。」と語ります。
杉田様は「HRメンバーも経営データを常に気にしながら動かなければなりません。私も部門全体会議などの機会ではデータを用いて説明しています。」と、HRがデータを活用する重要性を語りました。

■アステラス製薬におけるビジネス戦略と人事面の戦略やアプローチ

アステラス製薬では、2021~2025年における中期計画「Corporate Strategic Plan(CSP) 2021」を打ち出し、さらなる価値を生むための4つの戦略目標を定めました。また、同社の成果目標として株式時価総額の向上を掲げ、現在3.5兆円から倍増となる時価総額7兆円を達成するための、3つの目標を立てました(図①)。

<図①:2021年中期計画目標>

杉田様は「外部から当社への期待・評価の観点から、時価総額に関してはまだ伸びしろがある。」と語り、今後の新製品のパイプライン・研究開発と、売上伸長による時価総額目標の達成に自信を覗かせます。

組織健全性目標

杉田様は「経営課題に対するハードな目標設定だけではなく、会社としてどのような環境や文化を構築するか、どんな人材を多く集めるかといった点に手を付けなければ、満足いく結果は望めないという、これまでの反省点から、2021年中期計画と同時に『組織健全性目標(OHG)』を設定しました。」と語ります(図②)。
OHGはイノベーションの促進・人材の活躍・コラボレーションの浸透を図り、目標実現に向けた実行力の向上が目的。杉田様は「HRだけで達成できる目標ではないため、トップマネジメントをはじめとするビジネスリーダーなど、あらゆる人との団結が重要です。」と語ります。

<図②:3つの組織健全性目標(OHG)>

組織健全性目標は、大きく以下の3つに分けられます。

果敢なチャレンジで大きな成果を追求

適切なリスクを取れるよう社員に権限を与え、イノベーションに注力できる環境の構築。2021中計の遂行には一人ひとりの行動意識が大事であると捉え、この目標が立てられました。杉田様は「ビジネスの中でイノベーションを進めるためには、これまで以上にチャレンジが必要。」と語ります。

人材とリーダーシップの活躍

これまで人材・リーダーシップ・マネジメントに十分注力できていなかった反省点から策定された目標です。杉田様は「科学的な領域だけでなく、マーケティングやセールスのイノベーションも進めることで、会社としてより成果が追求できます。」と述べました。

One Astellasで高みを目指す

製品開発に関わる多くの人たちの、連携の重要性が謳われています。杉田様は「特に医薬品の場合には、スムーズに製品開発を進めるには、多くの人たちが連携を確実にとり、業務途中でも次の準備にとりかかるくらいのスピード感が必要です。」と語ります。

「全社的に、国内の社員よりも海外の社員が多いですし、レポートラインもグローバルに機能毎につながっているため、横のコラボレーションが起きにくいかたちになっています。そのため、部門を超えたつながりを意識的に強化していかなければなりません。」と円滑なコミュニケーションなどグローバル化への課題を挙げました。

HRの年間ターゲット達成に向けた取り組み「トップ・プライオリティ・プロジェクト」

続いて杉田様は「年間ターゲットに向けたHRの日々の活動」について紹介(図③)。同社HRでは、戦略的な方向性の明確化、HR自身の組織能力の向上、プロセスの調和、さらなるテクノロジーの活用などをテーマとしています。

<図③:HR年間ターゲットにつなげるための活動>

カルチャー変革に関するプロジェクト(Project Art

HRメンバーがグローバル全体で総力を挙げて取り組んでいる、OHGに関するさまざまなカルチャー変革を包含しているプロジェクトです。

人材とリーダーシップに関するプロジェクト(Talent Strategy and Leadership Model)

OHGの項目にある「人材とリーダーシップの活躍」とダイレクトにリンクしているプロジェクトです。HRとしてOHG達成には、人材育成に力を入れることも重要視されています。

ハイブリッドな働き方に関するプロジェクト(Project Tomorrow

現在リモートやハイブリッドな働き方が主流になりつつあるのに対し、それをどのように活用すれば効率的にコラボレーションがうまく図れるのか、を考えるものです。これも、One Astellasで働くことに深く関連しています。
杉田様は「我々は、今やろうとしていることがOHGと関係しているのか?を常に自分たちに問いかけています。もしこれがはっきり言えない場合は、本当の意味でビジネスに貢献しているとは言えないかもしれません。」と語り、HRの活動とOHGの関連性を明確にすることが、中期経営計画の実現には欠かせないと説明しました。

HRの最優先課題はすべて、中期計画実現に資する人事施策であるべき

同社HRでは、目標に関して「Shared(共有)」「Stretch(意欲的)」「Transparent(透明性)」が重要であり、OHGにつながる項目とされています(図④)。

<図④:HRの目標への意識・考え方>

「One Astellas」取り組みの一例としては、たとえばマーケティングチームの目標をセールスチームが理解しているようにする、ということです。これはTransparentの部分に該当し、目標を設定する段階でお互いに調整したり、達成に向けて協力できることが、One Astellasの目指すものです。
また、お互いにフィードバックし合う「Peer and Upward Feedback」、チャレンジ・協力に対する承認「Recognition」も重要です。杉田様は「チャレンジや協力に関して、それらが褒められなければ自分のやったことが良かったのかが分からない」と、チャレンジや協力への評価の重要性を述べました。

組織健全性(OHG)パネルセッション

同社は、CXO層が参加するOHGパネルセッションを実施しています(図⑤)。現在はリモートで実施され、1回に700~800人ものメンバーが参加する約1時間のセッションです。

<図⑤:組織健全性目標(OHG)パネルセッション>

パネルセッションでは杉田様がファシリテーションを担当。パネルセッションの内容に関して杉田様はと、人事と現場のコミュニケーションが重要であることも語りました。

多くの質問が寄せられ、1時間のセッションでは消化しきれない状態に。しかし、CEOやCXOは「もらった質問は全部答えたい」と、すべての質問に対して返事をしているそうです。

HR内部の課題

杉田様が「One Team」「One HR」を強く意識する理由の一つに「HR内部の課題」があります(図⑥)。「HRはグローバルなチームで、顔を合わせたコミュニケーションは頻繁にはありません。言葉も違うため、どのようにOne Teamを実現するかが非常に難しい部分です。」と、杉田様はグローバル組織ならではの苦労を語りました。

<図⑥:HR内部の課題>

もう一つの大きな課題として、自チームに関してはしっかり取り組む一方、他チームで起きた問題には関心を持たない点があります。他部門から見れば一つのHRチームであり、自分たちの役に立つことをやってほしいと思っているので、「ビジネスに貢献するためには、まずはOne HRの浸透が重要課題」と語りました。

■最後に

杉田様は「アステラスには、中期計画実現の指標となるOHGがあり、HRの活動がOHGとミスアラインしていないかを常に考えていけば、中期計画実現へ前進できる。」と述べ、OHGのような明確な指標があるからこそ、中期計画実現に向けてスムーズに活動できると語ります。そして最後に「人事としてビジネスにどれだけの貢献ができるかを考えており、その成果はどれだけスムーズに目標とのリンクを維持できるかに尽きる」と結びました。

■対談セッション

講演後、アステラス製薬株式会社 人事部門長 杉田 勝好 様と、SAPジャパン株式会社 人事・人財ソリューションアドバイザリー本部 本部長 佐々見 直文が対談を行いました。

SAPジャパン株式会社 人事・人財ソリューションアドバイザリー本部 本部長 佐々見 直文(左)
アステラス製薬株式会社 人事部門長 杉田 勝好 様(右)

佐々見は杉田様の講演テーマから、以下の4つについて質問しました。

  1. OHGの戦略・企画に対しグローバルでの合意を取ることの大変さ
  2. カルチャー変革を促す中で各国の労務面での課題
  3. 変化する人事の役割とそれに伴う教育
  4. マーケットの評価を高めるために取り組んでいること

杉田様からは「国ごとの差を乗り越えるため、一番よいHRの仕組み作りに今、チャレンジをしている」「より専門性を持ってビジネスに貢献するということに重きを置いている」など、グローバルな人事運営の観点から、今後取り組んでいきたいことを中心にご回答いただきました。

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