SAP Forum Tokyoレポート(後編):新たなテクノロジーをイノベーションにつなげるデザインシンキングの方法論にも言及


SAPジャパンの濱本です。前回に引き続き、2013年7月10日のSAP Forum Tokyoで公開されたJSUG代表者とSAPジャパンのスペシャリストによる 【JSUG×SAP】SAP Business Suite powered by SAP HANA スペシャルパネル討議 をレポートします。後半では主に技術的な観点での質疑応答が行われ、最後には新たなテクノロジーに対峙した時の心構えのレベルにまで議論が深まりました。

SAP Business Suite powered by SAP HANAへの移行方法は?

前半に議論されたSAP Business Suite powered by SAP HANA がもたらす業務革新、ビジネス価値というテーマに続いて、JSUGの鈴木様からは技術的な観点で「ではSAP Business Suite powered by SAP HANAへの移行時は、SAP ERPのアップグレードやユニコード対応が必要になるのか? また、それを支援する効果的な移行ツールは提供されるのか?」という質問が出されたのに対し、SAPジャパンの大本は次のように回答しています。

SAP Business Suite powered by SAP HANAへの移行は、通常のデータベースのマイグレーションと変わりません。必要なバージョンに既存のSAP ERPをアップデートしたうえで、データベースをSAP HANAに切り替えるだけです。

問題となるのは、マイグレーション期間中のマシンをどうするか、作業工数をどう確保するかといったことですが、最近はアマゾンのクラウドサービス(AWS)上に環境を間借りして、すべての作業を終えた段階で本番環境のみをオンプレミスに戻すというような移行方法が増えています。また、今後はより簡単に移行ができる手法や技術、マイグレーションツールなどが登場する見込みです」

アドオンのメンテナンスはどうなるのか?

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日本発条株式会社 鈴木孝司様

続いて鈴木様は、日本のユーザーがアドオンを多く抱えている問題に触れ、「SAP Business Suite powered by SAP HANAへの移行でアドオンはどう変わるか?」と問いかけました。それに対するSAPジャパン高山の答えは以下のとおりです。

「基本的にアドオンを捨てる必要はなく、むしろアドオンが恩恵を受けることもあります。実際、日本国内でも検証ベースでSAP Business Suite powered by SAP HANAにマイグレーションして、アドオンの高速化を実現したユーザー様がいらっしゃいます。既存のRDBをマイグレーションする場合は、データベースをチューニングする必要がありますので、代表的な例を2つ紹介します。

1つめは、一般的なABAPのチューニングです。あるユーザー様が既存環境のRDB上でアドオンプログラムをチューニングしたところ、30%のパフォーマンス改善を実現しました。同じ環境をSAP Business Suite powered by SAP HANAに載せ替えてチューニングを行ったケースでは、100%のパフォーマンス改善が見られています。

2つめのチューニングは、プッシュダウンという技術手法です。通常はアドオンプログラム上で実行されるデータの計算や並べ替え処理を、高速なSAP HANAのデータベース上で実行してしまおうというものです。アプリケーション側からデータベース側に処理を押し出すということから「プッシュダウン」と呼んでいます。プッシュダウンではSAP HANAの中に「HANAビュー」と呼ぶクエリーを作り、HANAビューを使うことでアドオンプログラムを高速化します。日本にもプッシュダウンでアドオンプログラムをリメイクし、夜間バッチで作成していたレポートをリアルタイムで作成しようと試みているユーザー様もいらっしゃいます。その他にも、アドオンテーブルやアドオンレポート、例えば組織変更や消費税の対応などで作成されたプログラムの高速化に悩まれている場合についても、SAP Business Suite powered by SAP HANAによる恩恵が得られると思われます」

新しいテクノロジーの対峙した時の心構えとは?

最後に、再びJSUGの佐々木様にマイクが戻り、「IT部門がSAP Business Suite powered by SAP HANAのような新しいテクノロジーに対峙した時の取り組み方、心構えについてアドバイスが欲しい」とのリクエストがありました。ここではSAPジャパンの馬場渉から、SAP HANAのプロジェクトに関わった経験をもとに以下のような提言がなされました。

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SAPジャパン株式会社 馬場渉

「変革を起こすためには“欲求”が必要です。しかし、個人の欲求とは別のところにあるビジネス的な欲求を、限られた時間の中で自問自答しながら導き出すことは容易ではありません。人間は経験を積むほど“地雷”の場所がわかるようになり、そこを避けるようになります。ところが、それが何年も続くと、新しいことにチャレンジしなくなってしまうのです。

私自身がSAP HANAのイノベーションに関わってきて感じていることは、ビジネスのバリューとは人間が変わるということです。人間の発想が変われば会社は変わりますが、システムが変わっても会社は変わりません。人間が変わるきっかけをシステムが与えてくれるなら、それは革命的なバリューになる。私にとってSAP HANAは、自分の中に芽生えていた制約を取り払うものでした。

それでは新しい価値を生み出すためには具体的に何をすればよいのでしょうか? 現実的な解決策の1つはリスクをとることです。重要なプロジェクトにイキのいい若手社員をアサインし、マネージメント層がリスクをとって好きにやらせることで、若手は自然と奮起するはずです。2つめはSAPが全社で採り入れている“デザインシンキング”という方法論。一定のトレーニングを積めば、誰でもイノベーション思想を身につけることができます。イノベーションと聞くと、才能に恵まれた一部の人間に限られていると思われがちですが、SAPの創業者でSAP HANAの生みの親でもあるハッソ・プラットナーは、トレーニングで6万5,000人の従業員すべてをクリエイティブなイノベーターに変えると宣言しています。

いずれの方法にせよ、全社員の体質を一気に変えてしまうことは無理なので、若手社員でも変人と呼ばれるような社員でも、いわゆるイノベーターをアサインすることが重要です。イノベーターにスポットが当たれば会社全体に気付きが生まれ、無関心だった社員も発想を変えるようになるでしょう」

ITの活用にとどまらず、デザインシンキングというイノベーションを実現するための方法論にまで及んだ熱い議論は、約1時間で終了。日頃からSAPのソリューションと身近な関係にあるJSUGの代表者との議論だけに、非常に濃密な内容となりました。SAPジャパンでは、イベント、セミナーなどさまざまな機会を通じて、ユーザー参加型の議論の場を設けています。このブログでは、今後もこうした話題を積極的にレポートしていきたいと思います。

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