最新のデジタルの知見を活かし、Jリーグのマーケティング改革に貢献

作成者:SAP編集部投稿日:2022年2月8日

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SAP社員に聞く、 ニッポンの未来へ向けた取り組みと想い#7 最新のデジタルの知見を活かし、Jリーグのマーケティング改革に貢献

ニッポンの「未来」を現実にするために、SAPジャパンの社員が取り組んでいるさまざまな変革プロジェクトをご紹介する本連載。7回目の今回は、SAPジャパンからJリーグ(公益社団法人 日本プロサッカーリーグ)へ出向し、マーケティング部門の一員として奮闘する濱本秋紀さんをご紹介します。
Jリーグが現在、掲げているビジョンの1つに「2030年にはJ1リーグのすべての試合を満員にする」という目標があり、デジタルを活用した新たなファンの開拓やサポーターとのエンゲージメント強化に大きな力を注いでいます。デジタルマーケティングの知見を駆使して、この取り組みを支援する濱本さんの仕事からは、SAPの新たな戦略領域であるスポーツマーケティングの最前線が見えてきます。
(聞き手:SAP編集部)

SAPジャパン 濱本秋紀さん

Jリーグのデジタルマーケティングの強化に向けたSAPの支援

「出向」として社外に異動するのはSAPジャパンでは珍しいケースですが、濱本さんがJリーグのデジタルマーケティングを担当するようになった経緯を教えてください。

濱本 2014年にブラジルで開催されたW杯では、ドイツが圧倒的な力を見せつけて優勝しました。この時、SAPはドイツ代表チームのパートナーとして「SAP Sports One」の原型となるサッカーのデータ解析システムを共同開発し、チームの強化に大きく貢献しました。当時はスポーツ・アナリティクスへの関心が世界的に高まっていた時期でもありましたので、ドイツ優勝のニュースと共にSAPの取り組みはスポーツ業界で広く知られることになりました。

それまでスポーツの領域におけるSAPの取り組みはマーケティング支援が中心でしたが、W杯を機にスポーツ業界から多くのニーズが寄せられるようになったことで、グローバルで新たにスポーツ&エンターテインメントの部門が起ち上がりました。この流れの中で、SAPジャパンでも日本のスポーツ産業に向けたビジネスに力を入れるようになったのです。

ちょうどその頃、Jリーグも新たなファンやサポーターの獲得を目的としたマーケティング改革に取り組んでいました。その中でも最大の要は、Jリーグの多くのクラブが利用するデジタルマーケティングの共通基盤の構築です。
当時の上司であったSAPジャパンの役員がJリーグの理事を務めていたご縁もあり、私は2018年8月から正式にJリーグに出向して、各クラブのマーケティング活動や人材育成の支援などに携わることになりました。

Jリーグとしては外部からデジタルマーケティングの専門家を招き入れて、集客力の強化や観客の満足度向上を図ろうとしたわけですね。

濱本 Jリーグでは、それ以前から重点戦略の1つとして「デジタル技術の活用推進」を掲げていました。しかし、集客などのマーケティング施策は各クラブが個別に実施していたこともあり、システムの導入コストやデジタル人材の不足などがネックとなって、新たなファンの獲得に向けたデジタルマーケティングがなかなか浸透しない状況が続いていました。

こうした背景から、Jリーグではクラブが共同利用するデジタルマーケティングの共通基盤を構築したわけですが、私が出向することになったのは、もう1つの課題である人材の観点からです。SAPジャパンにとっても、スポーツの分野におけるファン・エンゲージメントや顧客体験に関する新たな知見の獲得は重要なテーマでしたので、その意味でもSAPとJリーグの考えが一致したということだと思います。

マーケティングプラットフォームのアウトライン

マーケティングプラットフォームのアウトライン

コロナ禍における安心・安全な観戦体験をSAP Qualtricsでスコア化

Jリーグでの現在の主な仕事内容について教えてください。

濱本 仕事の中心は、やはりデータを活用したデジタルマーケティングの支援です。具体的には、データを使った効果的な集客やファンとのエンゲージメント強化といった、スタジアムを満員にするための工夫をアドバイスしたり、新たな企画を他のメンバーと一緒に考えたりしています。

もう1つの仕事として、Jリーグではデジタルマーケティングの共通基盤を浸透させるために、全クラブを対象とした「デジタルマーケティング人材育成講座」を開催していて、私がその座長的な役割を任されています。講座では、各クラブのファン・サポーターやスタジアムへの来場者を増やすために「デジタルを活用してどのような施策を実施していけばよいのか?」といった視点で座学を行ったり、クラブ同士がお互いに学びを共有できるような場づくりを行っています。

コロナ禍によって、仕事の内容にも大きな変化が生まれていると聞いています。

濱本 Jリーグのマーケティング活動の最大の目標は、何と言ってもサッカーの魅力を多くの方にお伝えして、ファンやサポーターを増やしていくことです。ここでは「スタジアムでの観戦体験の向上」が大きな意味を持ち、私はこのリードを担当しています。具体的には、顧客体験の管理ツールであるSAP Qualtricsを使ったアンケートなどを通じて、ファンやサポーターの生の声を集めて分析し、サービスの改善や新たな企画につなげるための活動を続けています。

こうしたとき、2020年の初頭に発生したのが新型コロナウイルス感染症によるパンデミックです。これ以降、Jリーグのスタジアム観戦の醍醐味でもあった互いのサポーター同士で応援合戦をするといった観戦体験も一切提供できなくなってしまいました。私たちのマーケティング活動もコロナへの対応に軸足を移して、「安心・安全なスタジアム観戦を提供できているか?」といったことが最優先のテーマとなりました。

2020年のシーズンは、SAP Qualtricsを使ってスタジアム観戦の顧客体験を定量的に可視化し、再来場の確率を上げるために必要な改善サイクルを回していく予定でした。しかし、Jリーグはコロナ対策として2月末にいち早くリーグの中断を決定。その後、リモートマッチ(無観客試合)を経て7月に有観客での試合を再開し、そのタイミングでSAP Qualtricsを活用した安心・安全なスタジアム観戦のモニタリングを始めました。Jリーグが定めた感染症対応ガイドラインに基づいてスタジアム運営ができているか、その運営に対して来場者が安心・安全を感じているかといったことをモニタリングして、各クラブの感染対策の改善に役立ててもらっています。

分析結果をJクラブと共有して、NPSも急速に回復

これまでの取り組みの中で生まれた成果をいくつかご紹介いただけますか。

濱本 直近では、やはりコロナ対策が中心になります。SAP Qualtricsを活用して実施している観戦者調査では、さまざまな指標をモニタリングしていますが、その中でも重要視しているのが推奨意向(NPS:Net Promoter Score)です。

2020年7月に実施した調査では、その推奨度がとても低いスコアになりました。コアなサポーターの皆さんは、感染の不安がある中でも対策を徹底してスタジアムに来ていただけたのですが、やはりスタジアムに行ったことを他の人には言えなかったり、ましてや人を誘ったりすることなどは、その当時はできない状況だったと思います。

しかしながら、スタジアムでの感染対策を徹底した結果、「Jリーグの感染症対応ガイドラインは信頼できる」「コロナ禍でも安心・安全なスタジアム運営をありがとう」といった声がたいへん多く寄せられるようになりました。こうしてスタジアムに来場している人たちへの調査によって、感染症対応ガイドラインを十分に満たしているかどうかを定量的に把握することができ、それに呼応する形で推奨意向も回復していきました。

コロナ禍観戦者アンケート2021年11月期における重要5指標の結果と推移

コロナ禍観戦者アンケート2021年11月期における重要5指標の結果と推移

こうしたデータはJリーグ本体だけでなく、Jクラブにも提供されているのですか。

濱本 SAP Qualtricsで取得したアンケート結果は、全クラブと必ず共有しています。これらのデータをもとに、たとえばコロナ禍でどれくらいお客様が離脱して、現在はどれくらい戻ってきているかといった実態の評価や、仮に既存のお客様が減ったとしても、新規のお客様でそれを補えれば、全体の観客数は維持できるといった分析結果を各クラブに提供しています。

例えば、下の図はSAP Qualtricsに標準で用意されているキードライバー分析を使って、「スタジアム観戦体験のどこを改善すれば安心度が向上するのか?」を分析しているものです。Jリーグ全体の分析結果だけではなく、SAP Qualtricsのダッシュボードを使ってクラブ毎の分析結果も見えるようになっています。このようなレポートを通じて、感染対策の改善に役立てていただきました。

各種資料のレポート(左)とキードライバー分析(右)の例

各種資料のレポート(左)とキードライバー分析(右)の例

Jリーグでの仕事を通じて、人々の人生を豊かにするSAPのパーパスを実践

濱本さんがお考えになっているJリーグでの今後の取り組みや活動方針などについてお聞かせください。

濱本 これからはマーケティング以外のさまざまな領域にもチャレンジしていきたいですね。たとえば、このところSAPも注力しているサステナビリティやSDGsといった領域です。こうしたテーマについてはJリーグも注目しており、SAPジャパンとして何をご支援できるかについての話し合いを重ねています。このほか、ドイツ代表チームを支援したような競技面でのデータ活用もいずれは手がけたいと思っています。

今後もJリーグの一員としてデジタルマーケティングに取り組んでいくわけですが、SAPジャパンの社内にいたときと現在の環境で違いを感じることはありますか。

濱本 私は昔からSAPのビジョンが好きで、現在パーパスとして掲げられている “Help the world run better and improve people’s lives(世界をより良くし人々の生活を向上させる)” にも大きな共感を覚えています。とはいえ、SAPの社内でマーケティングを担当していたときは個人ではなく企業がお客様でしたので、自分の業務がパーパスに直結していることを実感しづらい面がありました。その点、Jリーグの仕事に携わるようになってからは、目の前にサッカー観戦を生きがいとしているファンやサポーターの皆さんがいて、コロナ禍でも全力で応援してくれています。そうした人たちを見ていると、サッカーを通じて本当に豊かな人生を歩んでいるんだなと思いますし、それに少しでも貢献できている自分の仕事に喜びを感じます。

仕事としてファンやサポーターを増やしていくことはもちろん大切な目標ですが、決してそれだけではない。スポーツを通じて人々の人生を豊かにすることができる。このやりがいこそが私自身の仕事のモチベーションになっていますし、SAPのパーパスそのものでもあります。そして、私にこうした環境を与えてくれたSAPとJリーグのような信頼関係が、これから他のスポーツ競技でも生まれることを心から願っています。


Jリーグは2月12日(土)のFUJI FILM SUPER CUPを皮切りに2022シーズンが開幕します。
世界の一流プレイヤーや日本代表選手らがしのぎを削る姿を是非お近くのスタジアムでご観戦ください。

※画像クリックでビデオが再生されます
2021年10月、緊急事態宣言解除後にJリーグファン・サポーターの皆さまにスタジアムに戻ってきていただきたいという願いを込めて濱本さんが制作ディレクションしたPV。
DAZNやJリーグのYouTubeチャンネルなどで配信されました。


■関連リンク
連載 vol.5:SAP Experience Center Tokyo―新たな体験を通じて、SAPジャパンが目指す未来への共創
連載 vol.6:Inspired.Lab―新規事業の創出による日本発のイノベーションを支える「伴走者」―
→ 過去の連載はこちら

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