人事情報一元化のその先へ 人材データ活用のはじめかた 第2回:データ利用者の役割ごとの課題意識

作成者:籔本 レオ投稿日:2022年2月1日

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「ヒト」は「モノ」や「カネ」と違って定量化が難しい、経験と勘によるアナログな管理が必要と言われることが多い人事・人材領域においても、昨今、人事戦略や方針の中で「データドリブン」、「データ活用」という単語を見ること、聞くことが多くなりました。本稿シリーズでは、人材データの活用を検討する際の考え方や、勘所をご紹介します。

第2回は、活用イメージをもっていただくために、データ利用者の役割ごとの人材データ活用例を紹介します。

(第1回はこちら)

画像

 

データ利用者の役割ごとの課題意識を整理する

第1回で、人材データ活用を表面的な取り組みで終わらせないためには、データ活用の目的を考えることが重要という紹介をしました。ここでは、データ利用者の役割ごとに、人材データ活用に期待していること、考えられるデータ活用の目的を例示していきます。

ダッシュボードモデル

役割別の人材データ活用例

 

 

経営層 – 経営上の非財務指標を常に把握し、判断できるようにする

経営層は、経営に直結するような人材に関する重要非財務指標を追いたいと考えています。主な指標は、従業員数、人件費、自己都合退職率(または従業員定着率)、女性管理職比率、従業員エンゲージメント指数などです。特に統合報告書などで外部に公開している指標については、最新状況をいつでも把握できるようにしておくことが重要です。短期間で増減しない指標が多いですが、目標に掲げている数値に届いている・届く見込みで推移しているのかの状況把握・判断に活用します。年齢別(若手人材比率)、国別のような属性別の従業員数内訳、経営に対する信頼度・共感度のサーベイ結果を加えている例もあります。

また、経営層は業績への影響を意識しています。人事領域では採用領域のコスト増インパクトが大きいため、人員計画に対する欠員状況、欠員の採用状況(未採用、オファー済など)、おおよそのコストインパクトなどを見ながら、全体または部分的な採用凍結、社内異動でのやりくりなどの意思決定に活用する例もあります。

ダッシュボード1

経営向けダッシュボードのサンプルイメージ

 

人事リーダー(CHRO、人事部長) – 人事・人材戦略の進捗を定量的に評価する

CHRO、人事部長のような人事部門のリーダーは、人事・人材戦略の進捗を把握したいと考えています。「戦略」という形で整理されていない場合でも、自社における人事や人材に対する考え方はあるはずで、その進捗状況を評価できるようにします。

例えば、人を惹きつける会社になるという目標であれば、外部採用に関する指標や従業員定着率などが指標となります。キャリアの自律化であれば、一人当たりの研修受講数、社内公募の応募・決定数などが候補となります。働きやすい環境づくりということであれば、従業員エンゲージメントスコアに加え、上司の信頼度、働く環境に対する受容度、D&I関連指数などがあげられます。

ここでも重要なのは、戦略(考え方)と指標を結びつけて考えることです。そうすることで定量的な目標値(少なくとも増減の方向性)をもち、定期的にふりかえることで戦略と整合した活動ができているのか、それが有効に機能しているのかの判断ができます。

 

ビジネスリーダー・事業部長向け – 事業目標達成のための人的リソースを最適化する

事業部長のような複数組織・階層を統括するビジネスリーダーは、事業目標の達成や自事業のPL(損益)に影響を与える情報を求めています。

例えば、人員の出入りやその内訳、今後の人員増減見込みが可視化されていると、人員数・人件費の点でビジネスプラン通りに進捗しているのか、どのような課題・リスクがあるかを把握し見通すことができます。

また、経営層が追っているものと同じ重要非財務指標を見せることで、事業単位でも全社の指標を意識した運営が期待できます。

ダッシュボード2

ビジネスリーダー向けダッシュボードのサンプルイメージ

 

現場マネージャ向け – ピープルマネジメントの武器とする

マネージャは、会社によって人事権限の範囲や人材マネジメントへの期待値が異なります。こちらの例では、部下をもつ上司は「ピープルマネージャ」であり、自組織の人材マネジメント・部下の育成に責任をもつという前提にしています。

ピープルマネージャは、組織目標達成と、部下一人ひとりのパフォーマンス最大化、エンゲージメント向上が関心事となります。組織目標達成という点では、組織全体を把握できる指標として、人員計画予実、等級、職種などの属性別人員数、従業員エンゲージメント及びその重要因子、D&I関連指数などがあげられます。

少人数の組織であれば、ダッシュボードで見なくてもわかる情報もありますが、あえて見せることで指標を意識させる効果もあります。例えば、従業員エンゲージメントやD&I関連指数のような非財務指標は、社外に公開しているだけでは社内では他人事扱いで、全社どころか自組織の指標も把握していないということがあります。一方、自組織の非財務指標が身近に見えるようになると、会社が重視している指標であること、全社の現状及び目標と比べてどのような状況かを把握でき、マネージャが自社の重視している指標を語れるようになります。

部下一人ひとりの人材マネジメントについては、個人別の人材プロファイル情報、年間目標及びキャリア計画、1オン1の対話記録などが役立ちますが、部下の属性情報を横並びにして相対的に見ることで、状況判断しやすい場合があります。例えば、勤務時間や休暇取得状況、各等級の報酬レンジ上の位置などです。また、部下とのコミュニケーション活性化の目的で、誕生日(月日)や記念日(入社〇周年)を通知している例もあります。

 

人事部門各チーム向け – 各人事業務・施策の有効性を測り、形骸化を防ぐ

人事部門はコストセンターであり、月次、四半期、年次などで決められた業務イベントをミスなく予定どおりまわすことだけに注力すればよいと認識されていることがあります。周囲の部門だけでなく、人事部門自身でもそのような役割認識をもっていることが多いです。たしかに、給与計算のように「ミスなく予定どおりに」が重要な業務もありますが、従業員が働きやすい環境を提供する、人材の成長を支援する、会社の業績向上に貢献するなどの目的で作られた制度や施策において「ミスなく予定どおりに」のみに注力しすぎると、単なるスケジュール上のイベントとして無難にまわすことが使命になるリスクがあります。実際、人事制度について課題ヒアリングをすると「形骸化」という言葉が頻出します。そこで、人事部門向けには、実施策を形骸化させないためのパフォーマンス指標を公開することが考えられます。

例えば、人材育成領域であれば、能動的に学べる研修機会を提供する会社が増えていますが、その全体受講数、一人あたり受講数などを可視化することで利用状況がわかります。十分利用されているのであれば、従業員エンゲージメントやパフォーマンス向上との相関から効果検証することができますし、件数が少なければ、認知度や利用を高めるための検討から始める必要があります。予定どおりに研修プログラムを提供することまでが自らの業務であると考えている研修担当に対しては、人事施策・業務の状況可視化だけでも意識改革につながります。

社内公募、1オン1ミーティング、メンター制度、人事へのキャリア相談など、その他の人事制度についても同様で、「制度がある」ことで終わらせないことが重要です。まずは状況の可視化から始めて、制度として有効に機能しているか、形骸化の兆候が見られないかを判断してみることをおすすめします。

 

社外向けのデータ公開はどのように取り組むべきか?

ここまで社内の関係者へのデータ公開の例を出しましたが、社外へ公開する場合もこれらのデータや考え方がベースとなります。社内において重視している非財務指標は何か、それをどう解釈しているのか、どうしたいのか、どのような取り組みと関連づけているのか、などのことは、社内で意思をもって指標管理、データ活用をしているからこそ社外向けにも語ることができます。社外公開向けの指標管理から検討が始まってしまうこともありますが、社内での活用と整合して取り組むことが重要です。

 

はじめやすい人材データ活用としてのダッシュボード

人材データの活用というと、

  • 人間が気付かないすごい予測や示唆をAIが出してくれる
  • ただし、そのためには現在管理していないようなさまざまなデータを収集・蓄積しなくてはならない
  • さらに、各データの定義を考えなければならない

というイメージをもたれることがあり、自社で実現するには遠すぎる道のりと諦めている方もいます。たしかにこのような活用例もありますが、実現するのは簡単ではありません。

そこで本稿では、比較的はじめやすい、たどり着きやすい指標管理およびダッシュボードの例を紹介しました。ダッシュボードとは計器盤、つまり、見る人にとって必要なさまざまな情報が一か所にまとめられたツール(画面)のことです。経営層、ビジネス、人事部門などの各関係者に適切な情報が適時に提供され、その結果として有益な判断・アクションがなされれば、十分なデータ活用と言えます。

まずはこれらを参考にデータ活用を始めてみて、目的や必要性に応じてデータ管理の幅を広げる、高度な分析技術を利用していくのもよいと思います。

 

次回は、データ標準化と品質向上について紹介します。データを活用するためには「品質の高いデータがある」ことが前提となりますが、そのために必要なデータ標準化や品質向上について、グループ横断で取り組む場合の例も含めて取り扱う予定です。

※ 第3回はこちら

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