サステナビリティに向けた実践手引き4~SAPの構造~

作成者:福岡 浩二 投稿日:2022年1月31日

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今回の記事では、今まで触れた考え方を踏まえて、SAPのケースを中心に紹介していきたいと思います。
個社の方針によって異なって当然かと思いますので、1つのグローバルIT企業例としてとらえていただければと思います。

SAPでのSustainiblity体系図

SAPで進めているSustainiblityにかかわる構造を体系的に表すと以下の図になります。

こちらの記事でも触れたとおり、SAPのSustainabilityの原点は”Purpose”にあり過去の原体験が大きなきっかけとなっています。
SAPに限らず、今はあらゆる企業で”Sustainable Business”が求められています。SAPも、他人事にするのではなく、まずは”Exemplar(自分事)”として制度設計とそれを測る「データ化」を進めてきました。

社内には様々なダッシュボードを用意していますが、そのうち、全従業員がアクセスできるSustainiblity Dashaboardが下記です。(右画面は社員の植樹活動実績)

これはDXでも全く同様ですが、「測れないものは評価できません」。
組織として重要な結果・先行指標は出来る限り社内でも透明化することを心がけています。

SAPの独自調査によると(出所)、8割近くの企業が「現在のSustainiblityにかかわるデータの品質に不満を持っている」ことがわかりました。
そして同時に、大半の回答者が「環境への取り組みは財務インパクトにかかわる」ことを感じていることも分かり、その課題感が明らかになりました。

 

データ戦略で見たSustainiblityへの取り組みについて

データの見える化」は、初期の制度設計(Purpose & 方針決め)を起点とした実行への第一歩です。ただ、これは同類プロジェクトでよく見かける問題ですが、「見えたけど何も行動が変わらない・・・」のはこの領域でも起こりがちです。
したがって、そこで留まるのではなく、次に日々の業務プロセスとの紐づけ、そして企業のパフォーマンス評価とも連関させていくことが望ましいと考えています。

それを実現するためには、従来と切り離したプロジェクトでなく、むしろ既存業務にどう新しい評価指標とプロセスを導入して変革していくのかがカギとなります。

SAPは企業の業務を支えるERP(Enterprise Resource Planning)ソフトウェアを中心に50年以上も提供してきました。

社会・産業へ幅広く貢献する手段として、自分たちの日常に閉じるだけでなく、多くの企業の日常的なプロセスにSustainableな仕組みを提供することは、我々が貢献できる価値と考えています。
もう少し踏み込むと、Sustainiblityは既に企業の追加コストではなく「競争優位性」と考えています。

例えば日本でも、2022年4月から新しい市場再編が正式にスタートし、なかでも「プライム市場」では、よりESG投資を意識したグローバル投資家との建設的な対話が求められます。

出所:日本取引所グループHP

「守り」と「攻め」の両面において、もはやすべての企業でSustainiblityは直面すべき経営課題といってもよいと思います。

 

主要な施策概要

SAPではその対外的な支援を”Enabler“と称して、「Exemplarと同じ枠組み」として、下記の4つの主要な施策を設計しています。

   1. Zero Emisison:CO2など温暖化ガス排出量の抑制

   2. Zero Waste:不要な廃棄物の抑制

   3. Zero Inequality:社会での不平等の是正

   4. Holistic Steering & Reporting:統合型業績の評価

 

個々の詳細は今後の投稿で深堀をしていきたいと思いますが、4については若干耳慣れない表現かもしれません。
これがまさに上記で触れた最後の「企業パフォーマンス」にかかわるテーマです。

例えば、
「カーボン抑制はもちろん会社として推進したいが、どこまで企業リソースを投入すべきか、またはどう対外的に表現すべきか」は、よくうかがいます。

言い方を変えると、「非財務と財務データをどう統合的に管理するのか」ともいえます。

一足飛びに実現できる簡単なテーマではありません。しかし、ステークホルダーの多様化が進む現代においては今後ますます重要になっていきます。

SAP自身もまだ道半ばですが、本投稿を通じて読者の皆様と一緒に考えるきっかけになればと思います。

 


以前の記事はこちら

 

2022/2/25に、サステナブル・ブランド国際会議2022横浜で、サーキュラーエコノミーをテーマとしたパネルディスカッションにてSAPの取り組みについて講演します。

※追記
本イベントは終了いたしました。

https://www.sustainablebrands.jp/event/sb2022/

 

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