建設DXにより業務改革を推進する日本国土開発、SAP S/4HANAで次世代の経営基盤を確立

作成者:SAP編集部 投稿日:2022年3月15日

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土木と建築を軸に、幅広い事業を展開する日本国土開発株式会社。2029年度をターゲットとする「長期ビジョン」において、グローバル市場における新しい価値の創出により、成長する企業を目指すことを掲げる同社は、デジタルトランスフォーメーション(DX)の基盤としてSAP S/4HANAを採用しました。SAP S/4HANAの導入により、業務の標準化、自動化が加速し、リアルタイムで精度の高い経営情報の提供が可能になっています。次世代の経営基盤の確立を目指す同社の取り組みを紹介します。


人手不足の建設業界でDX推進による業務の効率化へ

日本国土開発は1951年、日本の戦後復興に向けて人力中心の建設業から、建設機械を活用した工事方式への転換を図り、その普及を担うことを目的に設立されました。当初は輸入したブルドーザーなどの機械と操作オペレーターの賃貸業を中心としていましたが、その後、機械土工に強い工事会社へと転換し、ゼネコンへと発展してきました。
現在は、社会基盤整備や災害復興関連工事などに強みを持つ「土木事業」、物流・商業施設、超高層マンション、リフォームなどを手掛ける「建築事業」、不動産開発事業や太陽光発電を中心とした再生可能エネルギー事業を展開する「関連事業」の3つを中心に展開しています。2019年には東証1部への再上場を果たすとともに、「健康経営」「働き方改革」にも注力し、2020年から2年連続で経産省・東証から「健康経営銘柄」に選出されています。
2019年7月には10年後の目指すべき姿として、2029年度をターゲットとする「長期ビジョン」を策定しました。「建設」×「マシナリー」×「ICT」というユニークな経営基盤を活用し、グローバル市場における新しい価値を創出して、成長する企業を目指すことを掲げています。

長期ビジョン「2029年度の目指すべき姿」 *

長期ビジョン「2029年度の目指すべき姿」
日本国土開発HP「コーポレートレポート2021」より

一方、国内では人口減少や少子高齢化が急激に進み、建設業界全体の担い手不足が課題となっています。この危機に対して同社は、強みである「機械力」に「ICT」を加えた独自のDXを推進し、施工の省人化や自動化、安全性向上などを積極的に進めています。近年では、ドローンやBIM/CIMなどのDXツールを活用したICT土工を推進。3D地形データを活用して降雨時の流域と流量を精度よく算出し、実効的な防災対策を立案したり、地形を考慮した高度な運土計画を作成したりしながら業務効率化の徹底を図っています。

日本国土開発 代表取締役社長 朝倉健夫氏

日本国土開発 代表取締役社長
朝倉健夫氏

基幹システムの刷新も、生産性向上を目指すDX戦略の1つです。同社は経営管理情報の可視化や業務効率改善を目的に、2017年より業務プロセスの見直し(BPR)を進めてきました。しかし、検討を進めるうちに「調達業務の効率化」、「工事原価の早期把握」、「資金の予実管理」、「連結決算業務の効率化」などの課題が浮き彫りになってきます。例えば、連結決算は人手で処理しており、決算の確定には約20営業日を要していました。その他、紙ベースでの申請のため電子帳簿保存法に未対応、業務ごとのデータが未連携で資金管理が困難、建設業務以外の業務プロセスが整備されていないため今後の「関連事業」の拡充に対応できないなどの問題がありました。
これらを既存のERP(国産クラウドシステム)で解決することは難しいと判断した同社は、BPRと並行してERPを刷新し、業務のデジタル化を推進することを決断。代表取締役 社長の朝倉健夫氏は「取引先や協力会社との契約、見積り、請求といった業務を電子化するのは当然の流れとなっています。さらにAIの領域を取り込みながら、DXによる生産性改革を目指します」と語ります。

一気通貫のデータ連携、電帳法への対応などを評価してSAP S/4HANAを採用

新たなERPの導入を検討した同社は、2018年3月にSAP S/4HANAの採用を決定しました。活用領域は、工事管理(PS)、購買/調達管理(MM)、財務/管理会計(FI/CO)で、別途国土交通省が定める建設産業界標準のEDI「CI-NET規約」に準拠したクラウド電子商取引システム「CIWEB」を導入してSAP S/4HANAと連携することにしました。
管理本部 情報システム部長の藤岡隆氏は「SAP S/4HANAなら、工事の受注から原価管理まで一気通貫でつながり、グループおよび事業本部ごとの目標に対する進捗状況を管理することができます。電子帳簿保存法にも対応し、経理業務の電子化による生産性向上や記帳水準の向上にも貢献できます。建設業EDIのCIWEBとの連携についても、SAPの標準インターフェースであるBAPIを使って短期間に構築できることもポイントになりました」と語ります。

システム全体図

システム全体図


導入プロジェクトは2018年6月から着手し、年度切り替えの2020年6月から本稼動を開始。プロジェクトは経理部門が主導し、事業部門(土木事業、建築事業、関連事業)から実務担当者数名をメンバーに選抜して業務フローの策定やシステムの要件定義を進めました。導入はテンプレートを採用して業務メンバーが主体となって現在の業務フローを細かく洗い出したうえで、業務の効率化、内部統制・IT統制の観点から新業務フローを作成しました。さらにSAPの標準機能で「収益認識基準変更への対応」「業務の平準化」を図りながら、現場部門に使いやすいUIを実装し、経営管理情報の可視化を実現する経営基盤を確立しています。

標準化によって現状の業務が変わることについて、事業部門からは反対する声も一部にはあったものの、会社の決定事項であること、内部統制として重要であることなどを説明して説得しながら、プロジェクトを進めたといいます。カスタマイズは、外部帳票、インターフェース、管理資料を中心に実施し、一部JVの会計機能はアドオンで作成しました。
旧システムからのデータ移行とマスター整備は、経理部門を中心としたメンバーを選抜し、移行データの作成・残高確認、マスター設定状況の確認などを行いました。コロナ禍の中、本稼動前には、事業部門、経理部門ごとにオンライン形式での説明会を開催後、ユーザー教育を実施してスムーズな移行を実現しています。

リアルタイムに整合性の取れた経営情報管理

現在、新基幹システムは、事業部門(土木事業、建築事業、関連事業)の実務担当者、経理部門の全社員、管理部門の事務担当者、グループ会社の2社が利用しています。事業部門の担当者は、フロントシステムを介して工事案件(受注/変更/引渡)、見積予算、実行予算稟議などを登録し、SAP S/4HANAの工事管理機能(PS)上で工事の進捗状況や原価を管理しています。
仕入先とはCIWEBを介してデータをやり取りし、フロントシステムを介してSAP S/4HANAの購買/調達管理機能(MM)上で購買情報を管理。CIWEBの加入協力会社は2021年10月時点で219社、契約件数は60件ですが、CIWEB連携により大幅な省力化およびコスト削減(印紙税)が実現しています。
受注から購買、会計までのデータがシームレスにつながった結果、工事進捗、事業部別売上、工事別予実管理などが、リアルタイムに整合性の取れた経営情報として一元的に管理できるようになり、目標に沿った業績管理を実現しています。決算業務も、単体決算なら10営業日以内で終了し、連結決算についてもユーザーの習熟度が向上し、約10営業日で確定できるようになっています。

業績予測や新たな施策の実施にAIの活用へ

SAPの標準業務プロセスに合わせた業務改革により人への依存度も減り、付加価値の高い業務へのシフトや、新たな業務への人材集中が加速しています。
「自動化によって、数字の集計を中心としていたこれまでの業務から、データを解析する業務へのシフトが可能になり、人材のプロフェッショナル化を進めています。今後は、過去の実績に基づく業績予測や、新たな施策の実施などでAIを活用することも考えていきます」(藤岡氏)
IT面でも情報システム機器の管理基準の統一による運用管理コストの削減、運用保守業務のアウトソーシング化による企画業務への変革などが実現しています。
土木・建築業界でも注目されている同社の取り組みについて、朝倉氏は「結果として建設業界の先進モデルになれるよう、今後もSAP S/4HANAを中心とした基幹システムを経営管理に活用していきます」と展望を語っています。

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