世界の人々の生活インフラを「止めずに」支えるSAPのイノベーション
作成者:瀬尾 直仁 投稿日:2013年9月4日
SAPジャパンの瀬尾です。今回は前回に引き続き、SAPの予見分析ソリューションの導入事例をご紹介します。風力発電やアフリカでの生活水供給サービスなど、SAP の予見分析ソリューションは重要な社会インフラ領域における画期的なイノベーションによって、人びとの暮らしに貢献するさまざまな事例が世界中から報告されています。
風力発電設備:3万基の発電機をリアルタイム監視して問題を即座に検知
前回は自動車エンジンのテストにおいて、ERPに蓄積された過去の実績データと試験場に設置されている各種センサーデータを組み合わせて解析するメルセデスAMGの導入事例をご紹介しました。実はこれと同じような仕組みが、すでに風力発電というエネルギー分野でも実証化されています。ある風力発電会社では設備のSCADA(遠隔制御監視システム)にSAP Predictive Analysisソリューションを利用して、機器故障が起きる可能性のあるセンサーデータの相関性を分析、そのロジックをSAP Sybase Event Stream Processorに組み込むことでリアルタイムに異常の発見をし、保守管理の効率化&自動化に成功しました。
風力発電設備におけるビジネス課題と予見分析のもたらすメリット
発電設備という重要な社会インフラの障害を未然に防ぐ上で、“予見分析”を使ったSAP のPredictive Maintenanceソリューションは非常に有効です。このSCADAでは合計3万基の風力発電設備から送られてくる毎秒500メッセージ以上の監視データを、リアルタイムで処理・加工・分析しています。ここでは過去の分析から得た「どのようなデータパターンが現れたときに故障が発生するか」を判断するロジックがSAP Sybase Event Stream Processorに格納されており、故障する可能性が高いパターンのセンサーパターンを検知した瞬間、自動的に管理者に緊急メッセージが送信される仕組みになっています。
リアルタイムに設備情報をモバイルで可視化する仕組み
実際のSCADA上では、風力発電設備に関するさまざまな要素が複層的にマッピングされています。まず各発電設備がどこにあるかという全体の位置情報や、配電ネットワークの情報、さらに風力発電には欠かせない各地域の気象情報なども収集してきて、それらを地図上に重ねてマッピングします。一方、それぞれの機器の稼働状況を、ダッシュボード上でリアルタイムに見ることも可能です。ここで機器の動作に異常があれば、関連のアラートなどもすべて見られるようになっています。
ここで注目したいのは、故障の予見分析だけでなく、対応のオペレーションまでを直接システムが実行できる点です。従来のデータ分析では「故障が発生する」という予測、判断まではできても、その先の作業指示や人員配置などは人手が頼りでした。ところがこのソリューションでは、ERPから保守要員リストを抽出してきて作業指示を出したり、その後の工程全体のタイムラインなどのスケジュール管理までが可能です。これはERPをコアに持つSAPだけが実現できる高度なデータ分析・活用であり、従来のBIやデータマイニングなどとは一線を画す、新しい次元のソリューションだと言えます。
Grundfos:ケニアの人々の水供給を守るプロアクティブな保守対応
もう1つ、SAP Predictive Analysisソリューションが、アフリカの人々の生活改善に貢献している事例をご紹介します。Grundfosというデンマークのポンプメーカーが、アフリカのケニアで展開しているプロジェクト「Grundfos LIFELINK」です。アフリカには水道や井戸もなく、安全な生活水を手に入れるのが困難な人々が大勢います。そうした人々を支援するために、Grundfos社では自社のポンプ技術を活用した水の供給システムLIFELINKステーションを各地域に展開。2009年から始まったこのケニアでのパイロット事例では、すでに1万2,000人に安全で衛生的な水を提供する体制が確立されています。
そして、このLIFELINKステーションをデータ分析・活用の面から支えているのがSAP Predictive Analysisソリューションです。LIFELINKステーションは写真のような小屋で、屋根の太陽光発電パネルから供給される電気で浄水器を稼働し、訪れた人に水を提供しています。しかし現地は満足な道路もなく、LIFELINKステーションの故障の際はすぐに保守作業が駆けつけることができません。それだけに、地域の生命線である給水設備を止めないためにも、故障をあらかじめ予見し、先手を打つことが不可欠です。この設備を遠隔監視するセンサーの情報分析を担っているのが、SAP Predictive AnalysisとSAP HANAなのです。
具体的には、LIFELINKステーションのポンプに取り付けられたセンサーが、ポンプの水圧や水量、温度などをモニタして情報を無線でSAP HANAに送信。過去の故障の前兆を示すデータパターンとセンサー情報とを照合して、さまざまな故障を予見します。下の画面は、その予見分析の流れです。
地図上に描かれたドット(円)はLIFELINKステーションの位置を示し、ドットの大きさは水の消費量です。そしてドットの色はポンプの状態を表しており、緑色は正常、薄茶色は故障の可能性を示しています。さらにこの茶色のLIFELINKステーションのデータをドリルダウンしていくと、ポンプの異常箇所までが特定できます。現在は、「茶色のドットが表示されると3日以内で90%の確率で故障する」というレベルまで予測精度が高められています。
また、故障の予兆を発見するだけではなく、根本的な原因究明も可能です。画面ではポンプのセンサー情報から、一定のレベルを超えた2度の大きな振動が原因だと推測されました。この「一定のレベル」とは、過去のデータ分析から導き出されたしきい値であり、これを全体の機器に適用・共有して予防のパーセンテージを向上させられるのも、ERPをコアに置いた予見分析ならではの大きな特長です。
さらに、SAP Predictive AnalysisソリューションはLIFELINKステーションのより効率的で効果的な展開にも貢献します。たとえば、どの拠点にどれだけの水の需要があるのか、病気の発生地域や天候といった多様なデータを統合解析しながら、より高精度で効果の高い今後の展開計画が可能になります。
真のビッグデータ分析・活用を可能にするSAP の予見分析ソリューション
さて、ここまでご覧になったとおり、予見分析においては、より大量のデータを多様な側面から分析することで、新しく有意義なサービスやビジネスが生まれてきます。今回ご紹介した2つの事例でも、「センサーデータ=リアルタイムの現象」と「ERP=過去の実績・知見」を組み合わせて分析することで、これから起こる事象の予見と対応のためのアクションにつなげています。
ここからわかるのは、いわゆるビッグデータ自体がすばらしいのではなく、何か新しいことを実現しようとすれば、これまで活用していなかったデータも必然的に必要となり、結果ビッグデータ化するということです。導入事例が示すように、こうしたビッグデータに確実に対応できるのは、SAP Predictive AnalysisとSAP HANAによるソリューションだけと言っても過言ではありません。データ分析においては、分析そのものよりもいかにビジネスを変革していくかが重要であり、SAPはそのためのソリューションを常に世界に先駆けて提供し続けてきました。今回の予見分析ソリューションに関心を持たれた方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。ご質問はチャットやWebからも受け付けています。
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