連結決算プロセスにイノベーションを! ~SAP S/4HANA for Group Reporting 連載企画 第1弾(全5回)~

作成者:河崎 秀樹投稿日:2022年3月25日

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SAP S/4HANA for Group Reporting(以降 Group Reporting)“ 読者の皆さまも言葉くらいは耳にしたことがあるかも知れません。このソリューションは、SAP S/4HANAの連結機能として2017年にリリースされました。過去SAPの連結ソリューションは、幾つかのラインナップが提供されていましたが、今後 主たる開発の投資先としては下図の通り、このGroup Reportingになることが明らかになっています。(最新のロードマップ情報はこちら)また、Group Reportingは、SAP ERPの時代から提供されているEC-CSをベースにSAP S/4HANAのポテンシャルを最大限発揮できるよう新たなソリューションとして、SAP自身によって開発されており、既にグローバルでは50以上のプロジェクトが本稼働、500以上のプロジェクトが進行中となっています。国内でも新規導入に加え、FC(Financial Consolidation)やSEM-BCS、EC-CSからの乗り換えプロジェクトなど本稼働プロジェクトを含め10以上のプロジェクトが進行しており、大変注目を集めています。また、英語にはなりますが、コミュニティサイトも賑わっておりますので、ご関心がございましたらこちらのサイトを訪問頂ければと思います。

今回は連載企画とし、Group Reportingのコンセプトやメリット、機能などをより深く知って頂けるよう全5回に渡って連載させて頂く予定です。是非、ご一読頂ければと思います。

SAP S/4HANA for Group Reporting 連載企画(全5回アジェンダ)
1.製品コンセプトと特長編 ※当ブログ
2.内部取引照合編 ※期中・月中でのグループ間取引の照合プロセス
3.データ収集編 ※リアルタイムデータ収集とマニュアルデータ収集(WEBベース)
4.連結処理編 ※外貨換算、内部取引消去、資本連結など
5.管理連結とレポーティング編 ※複数通貨連結、計画連結、セグメント連結など

さて、第1回となります当ブログではGroup Reportingの製品コンセプトや特長についてご紹介させて頂きます。

Group Reportingの製品コンセプト~一般的な連結システムとの違い~

Group Reportingは、SAP S/4HANA(以降 S/4HANA)のコア機能の1つになっており、従来型の連結システムのようにETL(データ抽出・変換)ツールなどを用いて、データ連携を行う必要がありません。S/4HANAで管理されるグループ各社の総勘定元帳(ACDOCA)から即時に必要なデータを抽出、集計し連結処理することが可能になっています。このデータの抽出処理は何度でも実行することが可能になっていますので、月次や四半期での1次締め、2次締めといった運用をされている場合、各々の締めタイミングで連結処理を実行し、数値を確認することができます。また、最新の転記済み伝票データをそのまま即時に集計し連携していますので、データの集計漏れといった不整合が起きない仕組みになっています。更に連結用の元帳(ACDOCU)と個社の総勘定元帳が1つの仕組みで管理されているので、例えば、連結レポート(試算表、損益計算書、貸借対照表など)の数値から個社総勘定元帳へドリルスルーして元取引の内容(会計伝票のみならず受発注伝票にもトレース可能)を確認することが可能です。これは、連結数値に何か異常が見られる場合、直ちにその問題を分析することで、伝票の訂正や数値の妥当性を素早く確認するといったことができます。
ここでご紹介した「即時でのデータ収集」、「個社の会計伝票をそのまま連携」、「元取引へのドリルスルー」は、いずれもGroup Reportingにしかできない差別化要素となっており、一般的な連結システムと最も異なるコンセプトになります。このようなユニークな特長によって、連結決算の効率化や制度、管理両面での連結数値の精度向上といったことが期待できます。

ここまで一般的な連結システムとGroup Reportingの違いをご紹介させて頂きましたが、皆さんの中で疑問に感じられているところが1つあると思います。それは、そもそもグループ各社がS/4HANAを利用していることが前提であり、利用していない場合には、これらのメリットは享受できないのでは?というものです。確かに、Group Reportingのポテンシャルを最大限発揮するには、個社の総勘定元帳がS/4HANAに存在することが大前提となりますので、その疑問は正しいです。では、個社がS/4HANAを利用していない場合(他の会計システムを利用している場合)、どのような対応方法があるか?ということですが、ここでは最もお勧めのソリューションをご紹介したいと思います。もしかすると既にお聞きになったこともあるかも知れませんが、セントラルファイナンスというソリューションになります。このソリューションは、グループ各社が利用している会計システムからリアルタイムもしくは定期バッチにて会計伝票のレベルでS/4HANAの総勘定元帳に連携させることが可能です。導入は口で言うほど容易ではありませんが、グループ各社の総勘定元帳が一元管理されるメリットは大きく、連結への活用以外にもBEPS対応(税源浸食と利益移転)や勘定分析、支払集中化など多岐に渡りますので、ご検討の価値はあるかと思います。

Group Reportingの特長~連結決算プロセスの変革~

さて、ここからはGroup Reportingを活用することによって、どのように連結プロセスの改革が図れ、連結決算業務が効率化されるのかという点を3点ご紹介していきたいと思います。

1.グループ間取引照合の前倒しによるプロセス改革と効率化

一般的な連結プロセスでは、連結処理の中でグループ間取引の消去が行われます。多くの場合、この消去処理で違算が生じ、本社連結担当者は、この原因調査と対応に奔走することになります。海外とのやりとりは、時差の兼ね合いもあって時間も掛かってしまい、結果として非効率が生じてしまいますので、このプロセス課題にはしっかりとメスを入れたいところです。ここで考えられるソリューションとしては、手元にあるグループ各社の総勘定元帳を活用(債権・債務や売上・仕入などの伝票)し、月中や期中にて内部取引のデータ照合を行うということです。これによって、連結処理での消去違算を最小化し、業務の効率化を図ることができます。こういったグループ間取引の照合処理は、連結決算の効率化に留まらず、グループ間取引決済(ネッティング)の事前作業としても重要ですので、正に一石二鳥のソリューションになります。

この月中・期中での照合プロセスを効率的にサポートする機能が、Intercompany Matching and Reconciliation(以降、ICMR)です。ICMRでは、予め設定しておいたマッチングルールに基づいて、グループ間取引の照合を伝票単位で照合することが可能です。また、昨年には機械学習機能もリリースされていますので、更なる効率化が図れるようになっています。このICMRを活用した内部取引照合につきましては、次回の「内部取引照合編」にて詳しくご紹介したいと思います。

2.連結レポートから各社総勘定元帳へのドリルスルーによる問題調査・対応の効率化

2つ目は、Group Reportingのコンセプトでも触れました、連結レポートから各社の総勘定元帳へのドリルスルーによる問題調査・対応の効率化になります。通常、連結に必要な情報は、グループ各社が各々データを集計したりコード変換しながら報告データを作成し、本社連結担当者へ送られてきます。本社の連結担当者は、これらのデータを合算し、外貨換算や内部取引等の消去処理、資本連結処理などを行い連結財務諸表を作成します。実業務では、作成した連結財務諸表の数値が想定していたものと大きく異なることも珍しくありません。グループ各社が送ってくる個別財務諸表に集計されているはずのデータが集計されていなかったり、連結側で入力すべき修正仕訳が入力されていなかったり、原因は色々考えられますが、結局のところ、本社連結担当者がグループ各社に個別に連絡をとって、その確認を行っているのが実情です。Group Reportingでは、報告目的や分析目的で作成された連結レポートからグループ各社の総勘定元帳へリアルタイムにドリルスルーすることができます。更に受注や発注といった伝票に加え、そのステータスまで確認することができます。例えば、受注伝票のステータスを確認することができれば、どういった取引なのか、入金済みなのか、入金遅延なのかを確認できますし、その取引が正しいのか、訂正が必要なのかを判断することができたりします。このように、グループ各社の総勘定元帳へのドリルスルーは、これまで人海戦術で行っていた問題調査やその対応時間を大幅に改善することが可能になります。

3.制度連結と管理連結の一元化による業務の効率化とレポート精度の向上

3つ目は、制度連結と管理連結の一元処理についてです。Group Reportingでは、個社総勘定元帳から取り込んだ伝票データをそのまま連結処理しています。つまり、ここでもS/4HANAのコンセプトである1Fact1Placeを実践しているという訳です。取り込んだ伝票データは、制度連結や管理連結に無加工で利用できますので、わざわざ管理連結用(管理事業連結や地域連結など)にデータを取り込み直すといった必要性がありません。一般的な連結システムでは、管理事業連結や地域連結を行う際、事業別や地域別にデータを再集計し、取り込み直す必要があります。この作業は、データを作成する子会社の業務負担にもなりますし、データを集計するタイミングや切り口が変われば、その集計結果が正しいということをどのように担保すべきかという別の問題も生じます。もちろんシステム的にインターフェースプログラムを開発することによって対応することも可能ですが、開発費用や保守運用費用も掛かることになります。作らずに済むのであれば、それに越したことはありません。Group Reportingでは、伝票レベルの詳細なデータを連結用データとして保持しておき、このデータを制度連結や管理連結の要件に応じて、即時に集計し、連結処理することができますので、それぞれの連結結果の整合性をきちんと担保する仕組みになっています。業務的には、制度連結と管理連結の結果は、一般的に異なることが多いのですが、それらが、換算レートによるもの、調整伝票や連結範囲の違いによるものなど、この辺りもしっかりと分析できるようになっており、結果として連結業務の効率化や連結数値の精度向上に繋がります。

ここまで、Group Reportingのコンセプトや特長、メリットなどを一般的なプロセスや連結システムと比較しながらご紹介させて頂きました。グループ各社の総勘定元帳と連結データが一元管理されるという点が、連結決算のプロセス改革に大きく寄与するということが、ご理解頂けましたら幸いです。

次号では、内部取引照合編として、月中における内部取引照合をどのように実施できるのか、一歩踏み込んだICMR(SAP Intercompany Matching and Reconciliation)ソリューションの概要をお伝えさせて頂きます。

 

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