グローバルの財務指標から競合比較まで可視化 セルフサービスBIで加速する 花王のデータドリブン経営

作成者:高橋 正樹投稿日:2022年5月24日

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顧客の多様化やビジネスの複雑化に伴い、データドリブン経営の重要性が今まで以上に高まっています。日用品や化粧品などのグローバルメーカーとして知られる花王株式会社では、意思決定の早期化に向けてSAPのクラウドBI・分析ツールSAP Analytics Cloudを導入し、SAP Central Finance上の会計データや、競合他社の非財務データや市場データなどの外部データを合わせて可視化し、経営層や会計財務部門の担当者が把握・分析するためのBI導入を推進しています。

リアルタイムに経営指標を確認し、迅速な意思決定へ

「豊かな共生世界の実現」をパーパスに、一般消費者向けの「ハイジーン&リビングケア」「ヘルス&ビューティケア」「ライフケア」「化粧品」の4事業と、法人向けの「ケミカル事業」を展開する花王。現在、国内、欧州、アメリカ、アジアの各国に拠点を有し、100以上の国と地域に商品を提供しています。

花王グループの会計財務部門がSAP ERPを導入したのは、2000年代初頭でした。アジアを皮切りに欧州、アメリカ、日本と展開し、現在は約98%のグループ企業がSAP ERPを利用しています。2018年にはグローバルの経営情報の把握に向けてSAP Central Financeをグローバル経営管理情報の基盤として導入し、グローバル4インスタンスの会計データの一元管理を実現しました。

花王株式会社 会計財務部門 牧野 秀生氏 (*2022年5月時点)

一方、会計データのレポートや可視化はExcel中心だったため、タイムリーに経営情報を把握することが困難でした。そこで同社は、視覚化による感覚的な理解・分析とより短サイクルなマネジメントを目指してBIツールの導入に乗り出しました。

「花王グループのセグメント情報だけでは十分な分析とはいえないため、競合他社の動向データと合わせて財務比較、ESG比較、セグメント別比較などを可視化することにしました」と、会計財務部門 管理部長の牧野秀生氏は語ります。

 


SAP Analytics Cloudを段階的に導入し、セルフサービスBIを推進

花王はSAP Central Financeとの親和性、処理スピードの速さ、操作画面のわかりやすさ、SaaS型の利便性を評価してSAP Analytics Cloudを採用。情報システム部門 ESM部 コーポレートサービスグループ の渡沼智己氏は「SAP Central Financeで確立していたBWレポートをそのまま活用し、より発展的な形でデータの可視化・レポーティングができるSAP Analysis Cloudの利便性が導入の決め手となりました」と語ります。

花王株式会社 情報システム部門 ESM部 コーポレートサービスグループ 渡沼 智己氏(*2022年5月時点)

導入プロジェクトは2020年4月から開始し、複数のステップに分けて進行。最初は1つの事業部をターゲットに、オーソドックスな管理会計データの可視化を3カ月で実現し、そこから会計財務部門の担当者主導でさらなるレポートの改善・追加、データ活用を推進しました。2ndステップで1stステップのレポートをベースに複数事業部に拡張し、3rdステップではより高度な分析指標の提供、4thステップでは可視化・分析の領域を非財務・外部データまで発展させました。2022年2月時点で5thステップまで進み、現在もデータ活用の取り組みを続けています。

今回のデータ活用プロジェクトは、会計財務部門が主導で立ち上げ、業務側の意思をIT部門が受け止め、意識統一を図った体制のもとで進められました。「2000年代のSAP ERP導入時から、当社では会計財務担当とIT担当が同じ部署にいた時代もあり、業務部門のニーズをIT部門が聞きながら解決してきた実績があります。そのため業務側とIT部門に信頼関係があり、ワンチーム体制で進めることについては自信がありました」(牧野氏)

また、SAP Analytics Cloudの導入とデータの可視化、BIのセルフサービス化、SAP Central Financeとのデータ連携、非財務・外部データの加工とデータ連携についてはアビームコンサルティング株式会社に支援を要請しました。

「これまでのExcel表形式のレポートと異なり、グラフなどを使用したダッシュボードの設計やSAP Analytics Cloud上でのレポート開発は、当社にノウハウがなかったため、アビームコンサルティングに最初に叩き台を作っていただき、ユーザーの意見を採り入れながらアジャイル開発で形にしていきました」(渡沼氏)

アビームコンサルティング デジタルプロセスビジネスユニット FMCセクター シニアマネージャー 児玉 篤彦氏(*2022年5月時点)

アビームコンサルティングでは、作り手思考でなく、使い手思考でレポートやダッシュボードを開発し、セルフサービスBIに向けてフェーズごとにハンズオンを実施しながら、業務ユーザー自身がBIを育てられるように支援を進めてきたといいます。アビームコンサルティング デジタルプロセスビジネスユニット FMCセクター シニアマネージャーの児玉篤彦氏は「私たちが作った叩き台をワークショップで検討いただき、ある程度まで完成した段階からハンズオンで改善し、徐々にユーザー主導で進める形で支援しました。1つの事業部から複数事業部、外部データとステップを踏みながら、導入、改善、セルフサービス化のサイクルを繰り返しました」と語ります。

 

一方、苦心したのは非財務・外部データ(Bloombergのデータ)とSAP Analytics Cloudとの連携でした。親和性の高いSAP Central FinanceとSAP Analytics Cloudの接続はスムーズに進んでライブ接続(分析時にデータソース側のデータを直接参照する接続形式)が実現したものの、非財務・外部データは加工要件が想定以上に多く工夫が必要でした。情報システム部門 ESM部 コーポレートサービスグループの積田佳晃氏は次のように語ります。

花王株式会社 情報システム部門 ESM部 コーポレートサービスグループ 積田 佳晃氏(*2022年5月時点)

 

「当初PaaSのETLツールを使った開発も検討しましたが、長期間かつ高価な開発となってしまうことがわかりました。そこでアビームコンサルティングと相談してライトで安価なPythonを使って外部データを加工し、SAP Analytics Cloudのインポート接続(分析対象データをSAP Analytics Cloud内にバッチ処理で読み込む接続形式)で連携する仕組みを3カ月で構築しました。Pythonによるデータ加工についてもグラフの可視化と同様、ユーザー参加型のワークショップで開発し、Pythonプログラムの維持も業務部門で行うEUC(エンドユーザーコンピューティング)を原則としています」

 

競合他社の財務情報やセグメント別比較情報を可視化

現在は経営層、各事業部の部長やブランド担当、会計財務部門の管理会計担当やEVA(経済的付加価値)担当など約250名がSAP Analytics Cloudを利用しています。花王グローバル全体でのセグメント別、製品グループ別、ブランド別の売上や利益の対予算比、対前年比、限界利益、固定費などに分解されたものを見ながら課題をざっくり把握。競合他社の情報も含め最新のデータを取り込んで財務状況やセグメント別の売上状況などを随時可視化して、具体的なアクションにつなげています。

「例えば、新型コロナウイルスの感染拡大で花王グループ全体が在宅勤務にシフトした際には、旅費交通費、渡航費、会議費、交際費などの活動費をグローバル全体で見直しました。ガソリン代の高騰による物流費の変動の際にも、経費のレポートを見ながらグループ全体のインパクトを予測してアクションにつなげることができました。これまで頻繁に見ることができなかった競合情報も取り込めることで、当社のポジションを相対的に比較することが可能になっています」(牧野氏)

データを可視化するための工数も、Excelレポート作成からSAP Analytics Cloudにシフトしたことで約90%削減され、その分の時間を別の業務に割くことが可能になっています。セルフサービスBIの導入により、会計財務担当者の当事者意識も高まり、全体の底上げが実現しました。

こうしたデータ活用推進の取り組みは社内からも評価され、2021年には社内表彰も受けました。「SAP Analytics Cloudを導入した事業部からは、見やすくてわかりやすいという評価の声をもらうこともあります。IT部門と業務部門の共同プロジェクトが社内から認められた喜びも大きく、これまでのERPの導入・保守運用とは違った形で貢献ができたことは、モチベーション向上にもつながりました」(渡沼氏)

データドリブン経営の加速に向け、AIを用いたアクションの自動化を検討

今後はグローバル対応に向けて、現在日本語のみ対応しているレポートやダッシュボードを英語化し、外国人のマネジメント層にも活用を拡大していく方針です。さらに、BIレポートの充実も図り、業務部門の担当者がより分析しやすくなるように改善を進めていく予定です。

分析環境についても、販売会社も含めた花王グループ全体を巻き込みながら連携するデータの種類や数を増やし、ブランド別、チェーン別、セグメント別、チャネル別などの新たな切り口を追加しながら分析軸の多様化を進めていく考えです。

データドリブン経営の実現に向けては、事業部長から現場の担当者までが分析結果を見ながら具体的なアクションに落とし込むことが今後の検討課題となっています。牧野氏は「現在、人手を介して実施している見込予測を、管理会計データを使って機械学習で予測モデルを作成しながら信頼性の高い見込を実現したり、AIを用いて予測からアクションまでを自動化したりすることに取り組んでいきたいと思います」と語っています。


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