ハイテク業界のビジネストレンド【その③】――垂直統合と水平分業を組み合わせた、変化に柔軟なハイブリッド型の生産体制


こんにちは、SAPジャパンの柳浦です。連載3回目となる今回のキーワードは「柔軟な生産体制」です。変化する市場のニーズにフレキシブルに対応していくための生産体制は、ハイテク関連の製造業にとってビジネスの生命線ともいえる重要な収益基盤です。以下で、その基盤づくりに向けた基本的な考え方と実践ポイントについてご紹介していきましょう。

ビジネス目標に合わせて、複数の生産体制を使い分ける新たなチャレンジ

Silhouette of a bucket wheel reclaimer at an iron ore mine

「柔軟な生産体制」というキーワードを突き詰めていくと、製造業にとって永遠のテーマである「コスト削減」に行き着きます。もともと原価低減や生産の効率化は日本の製造業が得意とするところであり、いわゆる「カイゼン」などはその典型でしょう。

しかし、これだけ市場がドラスティックに変わっていく時代において、これまでのように既存の拠点の中だけで改善活動を進めても、大きなコスト変動を吸収しきれなくなってきます。しかも、グローバル化の中では原価だけでなく、為替変動のようなリスクにも対応しなければなりません。結果として、国内に自社工場を構えてそこでコスト削減と効率化の道を探っていくモデルから、海外の低賃金の国や地域に生産拠点を移すといった新しい選択肢も出てきます。

ハイテク製造業におけるEMS(Electronics Manufacturing Service:自社では生産設備を持たない企業に対する電子機器などの受託生産サービス)の存在感は、アジアを中心に日増しに強くなっています。最近では単なる受注生産だけでなく、設計やデザインまで手がける企業も出てきています。そうなると、こうしたEMSとうまくつき合っていくことで、需要変動にいち早く対応する、あるいは市場への製品投入スピードを高めるなどの課題に対しても、外部に委託して解決する方が賢明といった判断もあるでしょう。

もちろん、時代の状況に応じて企業の戦略には違いがありますが、いずれにせよ市場対応におけるアジリティ向上やリスクヘッジを考えた場合に、①自社で生産する、②自社の海外拠点で生産する、③外部の企業に委託する、といった選択肢を有効に使い分けることが重要になってきます。ただし、単純にどれか1つを選べば良いということではありません。現実には自社の置かれた状況や市場のニーズを分析しながら、複数の選択肢を組み合わせたハイブリッド構成として巧みに管理していくことが求められていきます。

これら複数の戦略を、状況に応じてバランス配分しながら管理、実行していくのは非常に大変なことですが、あえてそこに前向きに取り組んでいくことが、現代のハイテク製造業に求められています。たとえばアップルのように、自社工場を持たずにすべてEMSに委託するという方針を採るのであれば、いかに外部の生産工場とのコラボレーションを確立するか=いかにバーチャルな生産管理体制を構築できるかが、IT戦略の実現におけるチャレンジとなっていくでしょう。

「垂直統合と水平分業」を併用した、複眼的・多重思考のマネージメント

Printここではそうしたチャレンジのヒントとして、「垂直統合と水平分業」を重要なキーワードに挙げたいと思います。もし生産を自社工場だけで行う場合、当然その管理は垂直統合型となります。この場合の課題は、いかに生産管理を細分化された領域にまで徹底していくかということです。そこには、いわゆるMES(Manufacturing Execution System:製造実行システム)の領域も含まれてくるでしょう。

一方、海外の自社拠点であれEMSであれ、他の製造拠点に委託する場合は、分散した拠点をバランスよく配分し、なおかつ高品質かつ省コストの生産体制を維持・運用していく「水平分業」の視点が必要になってきます。

そして実際の生産管理では、やはりここでも「ハイブリッド構成」が求められます。垂直統合と水平分業の双方を同時にマネージメントしながら、状況の変化に応じてどちらに比重をかけるか、どのタイミングで現在の配分を変更すべきかといった中・長期的な戦略を立てることが必要です。しかも同時に、目の前の市場動向をにらみながら直近の製販計画をコントロールしていくといったアジリティも要求されます。ここでも複眼的、多重思考的な同時並行のマネージメントが求められてきているのです。

SAPではこうした現代のハイテク製造業における柔軟な生産体制の構築を支援するために、多彩なソリューションをこれまでも提供してきました。その昔、まだERPしかなかった時代から取り組み、近年では水平分業、垂直統合のいずれにも対応できるフレキシブルなソリューションを提供しています。これらはいずれも、SAPの提唱する「パーフェクトプラント構想」に基づいています。

具体的なソリューションをいくつか紹介しましょう。まず垂直統合では、製造実行管理ソリューションSAP Manufacturing Executionがあります。これは、生産計画から製造指図、作業実績までの情報をシームレスに連携させ、業務のスピードアップと現場オペレーションの可視化を実現するソリューションです。

一方、水平分業ではSAP Supply Chain Management(SAP SCM)に含まれるSAP Supply Network Collaboration (SAP SNC)が有効です。SAP SNCで部品サプライヤーと自社との間の情報フローを同期することにより、在庫管理情報や発注情報の共有など、一連のビジネスプロセスにおける情報を共有・管理することが可能になります。

これらのソリューションを活用して、たとえば垂直統合型管理では計画の変更時にもタイムリーに情報を共有し、水平分業型管理の部分では市場の変化をすぐに全部のサプライヤーに伝達・共有することも可能になります。この結果、トータルで俊敏な製造体制というものが確立できようになるのです。

もちろん、こうしたソリューションは今までにもありましたし、それぞれに機能を特化したパッケージを提供しているベンダーもあります。しかし、SAPは垂直統合、水平分業の両方のソリューションを提供している点がユニークだといえます。というのも、SAPはERPの時代からSCMへと領域を広げていく過程で、常に製造管理というものをMES的な観点も含めてトータルに考えてきました。その結果が、いずれの領域もカバーするソリューションを持たなくてはならないという確信につながっているのです。まずソリューションありきではなく、収益や効率という視点から本当に有効な生産体制というものを考え続けてきた、これはSAPならではのアドバンテージといえるでしょう。

「利益を最大化する生産体制」を念頭に置いた生産計画を目指す

次に生産体制から一歩踏み込んで、生産計画という面からも考えてみます。生産計画の立案にあたっては、需要の変動をいち早く察知し、計画に反映させることが重要ですが、これまでは「需要の変動の反映」と言っても、あくまで数量ベースの変更でしかありませんでした。しかしこれからの時代、収益性の高い製品から優先的に供給していくことの重要性を考えると、従来のいわゆるSCM=数をベースとしたサプライチェーン計画から、より収益を考慮した、「お金の観点からどこを優先的に生産していくのか?」といった方向にシフトしていくことが必然的に求められてきます。

さらに、その収益の高い製品は自社生産なのかそれとも外部委託するのかといった判断も問われます。同時並行的に市場の変化やさまざまな制約事項を勘案しながら、「収益をもっとも高く保つためには、どの製品をどの拠点で、どのタイミングでどれだけ作ったら良いのか」ということを掘り下げていき、最終的に「垂直統合の拠点で作るのか、水平分業の外部へ委託するのか」といった具体的な決定を下していくのです。

こうした意思決定のために、SAPではSAP Sales and Operations Planningと呼ばれるアプリケーションを提供しています。

このアプリケーションは、販売/運用計画プロセスに関わる経営層から現場の人々までが共有できる単一の計画を策定し、それに基づいて業務を行うためのさまざまなサポートを提供します。従来のSCMにもこうしたツールは存在しましたが、これらもやはり数量ベースの計画しかサポートしていませんでした。その点、SAP Sales and Operations Planningは数量の情報を事業計画と連携させながら、売上金額と利益を考慮した計画策定が可能な点が大きな特長です。

垂直統合と水平分業をバランスよく使い分ける生産体制へのチャレンジは、日本でも増えてきていると実感してます。

これから「柔軟な生産体制」の構築にチャレンジしようと考えている企業は、まず自社のもっとも強い部分=コアコンピタンスはどこかをもう一度振り返ってください。そして、そのコンピテンシーをもとにした成長戦略の青写真に対して、私たちSAPはさまざまなご提案をご用意できます。激しく変化する市場やサプライチェーンへの対応には、膨大なエネルギーが必要です。このプロセス作りで自社の事業エネルギーを消耗させてはなりません。必要なのはそのプロセスを自動化し効率化させるシステムを構築し、そこで収益を上げる生産を実現することであり、SAPにはそのための支援をいつでも提供することができます。ぜひ私たちと一緒に、利益を生む柔軟で強靱な生産体制の構築にチャレンジしていきましょう。

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