連帯の決意 – Standing in Solidarity ウクライナ避難民支援プラットフォームの取り組み

作成者:長阪 数馬 投稿日:2022年6月10日

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はじめに

2022年4月21日付けのプレスリリース(リンク)で初報したSAPとQualtricsによるウクライナ避難民支援プラットフォームが6月10日付けプレスリリースで発表の通り日本財団及びウクライナ大使館をはじめとした関係諸機関によってご活用頂くことになりました。

本ブログではウクライナ避難民支援プラットフォームの概要、どのような活用を目指しているのか、ここまで至る経緯を踏まえてまとめていきたいと思います。

日本におけるウクライナ避難民の現状

本ブログを執筆している2022年6月時点でウクライナから脱出した避難民は累計700万人(Source: UNCHR)を超えました。日本においても6日時点で1,239人のウクライナ人が避難して来ております(Source: 出入国在留管理庁)。受け入れる日本としては連日の報道の通り、国をはじめとした関係各機関、地方自治体、NPO、民間企業、市民の多くが様々な支援をおこなっております。

来日したウクライナ避難民は図1の通り、性別・年齢等、多様な構成になっており、日本にいる身寄りを頼って来日した人、身寄りなく避難した人が、それぞれ日本各地で生活を始めています。

日本に入国したウクライナ避難民

(Source: https://www.moj.go.jp/isa/publications/materials/01_00234.html

日本におけるウクライナ避難民の現状から見えて来たチャレンジ

ウクライナにとって日本は文化や言語が異なる外国です。悲惨な戦争という大きな困難から避難して来たウクライナ避難民が、少しでも早く日本に慣れてもらい、安心して生活してもらうためにも、我々日本が主体的に動き支援することが重要になります。

ウクライナ避難民がどのような支援を必要としているのか、自立した生活を行うためには喫緊で何が必要なのか、要支援者にはどのようなサポートが必要なのか、教育はどうするべきなのか、多くのことに向き合い理解する必要がありますが、国をはじめ自治体、NPO、市民含め本当のニーズの理解は言語やコミュニケーションの問題があり手探りの状況が続いています。

またウクライナ避難民は日本の各地に避難しているために、避難民に対する支援を効果的に行うためにもどこに所在しているかを全体として把握することが重要です。しかしながら現時点では日本人と同様に基礎自治体で住民登録されるまでは所在地の把握はできず、また住民登録は各自治体での管理になるために、全体把握が困難です。

また戦争からの避難であり異文化での生活となるとメンタルヘルスのケアも重要になります。災害時避難と同様に長期にメンタルヘルスの状況を把握し、必要なメンタルヘルス介入を行うことも重要です。

日本に避難して来ているウクライナ避難民はすでに1,000名を超し、この先さらに増加することが見込まれます。多くのウクライナ避難民の正しい状況を全体として把握し、全体・個別に必要な支援につなげる、そのための仕組みが必要です。

SAPとQualtricsのコラボレーション

2021年にワクチン接種ソリューション(プレスリンクビデオ)を主導したSAPとQualtricsの合同チームが再度集結し、ソフトウェアの力でどのように支援出来るかを考えました。日本で少しでも安心して生活してもらうためにはウクライナ避難民が日本滞在中に直面する様々な課題やニーズを可視化し、ウクライナ大使館や受け入れ自治体をはじめとした関係諸機関が連携して支援にあたる枠組みが作れるのではとの仮説に基づき「ウクライナ避難民支援プラットフォーム」を構築しました。本プラットフォームは下記図の通りウクライナ避難民と支援する関係機関をつなぐハブとして、避難における様々なステージにおいて活用できます。

ウクライナ避難民支援プラットフォーム概要

ウクライナ避難民支援プラットフォームで出来ること

日本におけるウクライナ避難民の滞在先、避難中に本当に必要としている支援の内容、戦争からの避難によるメンタルヘルスの課題等について、本プラットフォームを通して把握し、ウクライナ避難民に対して支援を実施している関係諸機関が機動的に連携し必要なサポートを迅速に提供することを目指しています。

ウクライナ避難民支援プラットフォームは、以下の機能を有しています。

1: 避難民へのエンゲージメント

入国前からタッチポイントを構築し、入国情報や日本の情報を発信。また入国時には氏名・年齢・連絡先・滞在先・初期支援ニーズの把握を行い、滞在中においては適時サポートニーズの調査、ストレス具合のチェックをスマートフォン・PCを通して行います。この仕組みはSAPグループ会社であるExperience Managementを取り扱っているQualtricsのソリューションを活用しウクライナ語を含む多言語・マルチデバイスで対応します。

ウクライナ避難民利用画面サンプル

2: 全体・個別可視化を実現するダッシュボードとワークフロー

ウクライナ避難民からのフィードバックは全体として集約され、どの自治体にどのような方が避難しているか、優先して必要な支援は何か、メンタルヘルスの状況はどうかがリアルタイムで可視化されます。また個別コメントにおいてもウクライナ語を日本語に自動翻訳され、またコメントの重みづけから支援の優先事項を洗い出すことも可能になります。

これらの情報をもとに支援関係団体は必要な支援の優先順位を決定、支援リソースの配分につなげ、また個別支援介入が必要な場合は支援ワークフローを作成し支援の実施・完了の確認を一気通貫に行います。

支援機関側ダッシュボード

3: コラボレーションサイトJAMの活用

様々な情報が世に溢れている中、ウクライナ避難民が本当に必要な正しい情報を伝えることが重要になります。SAPのコラボレーションツールSAP Jamを活用することで、適切な情報伝達を実現します。

コラボレーションサイトJAM

関係各機関との連携

元々の目的であるウクライナ避難民の状況を可視化し、機動的な支援を実現し、少しでも安心して日々を過ごしてもらうためには、支援する関係諸機関が共に連携して活動することが重要です。

SAPとQualtricsでは様々な関係者と連携を模索し、ウクライナ避難民支援をリードしている公益財団法人 日本財団 ウクライナ避難民支援室のチーム、ウクライナ大使館、ウクライナ避難民を受け入れている各自治体、多くの関係機関との連携を推進して来ました。その結果、ウクライナ避難民支援プラットフォームは日本財団が運用元となり、ウクライナ大使館や自治体をはじめとした関係諸機関、NPOとの連携を図るプラットフォームとして活用する枠組みが固まりました。

これからー最後に

このプラットフォームの活用により関係諸機関が連携し、日本全国に避難しているウクライナ避難民の実情を理解し、彼らが本当に必要としている事項に対して機動的にオールジャパンで支援していくことを目指します。その取り組みは当然ながらシステムだけでは成り立たず、想いを同じにしている組織・人が集まり共に作り上げ、連携し、最終受益者であるウクライナ避難民に貢献する、そのためにはより大きな枠組みで活動を推進することが重要であると考えております。

本ブログを読んで頂き、ご関心のある方々はSAPまでご一報頂ければ幸いです。

お問合せ先:SAP Japan ウクライナ避難民支援タスクフォース

お問合せWeb:www.sap.com/japan/contactsap/

 

 

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