中長期的人材不足の解決策 ~トータルワークフォース管理による柔軟な“人財”確保

作成者:藤本 晋太郎投稿日:2022年7月5日

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どのような事業においても事業戦略を形にする際に、“人”が最重要な資本であることは、昨今の人的資本主義の議論を待たずとも自明です。特に少子高齢化という社会的構造の中で、技術革新やDX推進の波を乗り切り、COVID-19などの急激な環境変化に対応しつづけるには、 「正社員」や「非正規社員」といった枠組みを超えて“人財”を確保することが、人事としての最重要テーマとなります。

本稿では「いつも人材が不足している」とお感じの方に向け、トータルワークフォース管理 (※) による柔軟な“人財”確保の考え方をご紹介させていただきます。(※ 正社員のみでなく非正規の外部人材・プロフェッショナル人材までをも総合的に含めた人材管理)

この考え方を取り入れることにより、下記のような人材不足にまつわる様々な課題に対処しやすくなります。

  • 現場管理職      :現場業務を遂行する上で、特定のスキルを持つ人をタイムリーに確保・配置できない
  • 人事担当        :「質x量」の両方が不足し、組織力強化が進まない
  • 経営企画担当  :事業戦略は描けても、実施可能な人財がいない
  • 財務担当          :都度現場採用により人件費が抑制できていない

 

1. 日本企業における人材確保の限界

日本企業の強みと言われてきた「新卒一括採用/ジェネラリスト育成/ローテーション配置」のみによる組織強化には限界が来ており、「中途採用の推進/専門家育成/機動的なアサイン」にフォーカスが当てられてきているのはなぜでしょうか?

高度成長期からバブル期に至るまで、日本企業の主たる戦略は「事業規模拡大による売り上げ伸張」でした。この時期は、国内人口の増加、輸出産業の拡大、国内消費の増加が好循環となり、GDPも世界2位まで伸びた時代となります。日本企業はこのような時代の流れに乗り切るために、若く優秀な就業未経験者を大量雇用し、現場配置の中で育成し、その中からマネジメント適性を見出して選抜するという、「長い時間軸」での人材育成・配置を実施してきました。

ところがバブル崩壊後の30年間においても、日本企業の基本的な人材確保・配置の考え方は大きく変化していません。日本の新卒層人口はこの30年間で約40%も減少し、少子高齢化の流れの中で「大量に新卒採用を確保して選抜する」ということもできなくなり、働き方が多様化する中で、正社員・フルタイムで活躍できる人が減ってきているにも拘わらず、です。

また、DX化の推進やSDGs経営へのシフト、派遣法の度重なる改正などへの対応を踏まえつつ、コロナ禍インパクトによるリモートワークの急速な普及を最大活用することなど、経営層から様々な難題を出されている皆様も多いのではないでしょうか?

 

2. 先行事例に見る、トータルワークフォースの考え方

ここで、先行事例から「組織力確保にはこのような考え方もあるのか」という気付きを得ていただきたいと思います。

事例1)海外医療機器メーカー事例
該社はCOVID-19発生時、モニターや人工呼吸器の急な増産要請を受けました。その際、製造ラインを1ラインから3ラインへ増やし、更に1シフト制から24時間対応への切り替えを行うことができました。下記3つの備えがあったことで、迅速な再配置と人材調達を実現できた事例です。

  • 従業員や派遣、フリーランス、業務委託スタッフを横断して可視化・管理する基盤を備え、どの契約タイプの人材がどこにいて、どのビルへのアクセス権限を持つのかを瞬時に確認できたこと(物理的な配置換えが円滑に行えたこと)
  • 従業員採用を担う人事部門と、サービス調達を担う購買部門、そして派遣社員の採用・管理を担うMSPパートナーの間で、戦略的な連携があったこと
  • サードパーティのフリーランス採用基盤と自社所有のキャリアサイトを集約し、人材情報ソースをリッチにしていたこと


事例2)海外サービス業事例
“人財”の質で事業収益が大きく変わるサービス業においては、顧客ニーズの変化に対応したスキル確保という面でも外部人材確保は企業命題でもあります。
海外では高度専門職者が個人契約者として従業、活躍する度合いが年々高まっています。社員として採用するという考え方のみでなく、最新の求職情報をそういった外部人材マーケットにも常に共有し、10日以内に、80%以上の確率で最適な“人財”確保が可能となった事例も出てきています。


事例3)国内製造業事例
製造ラインにおいて、外注を利用して、複数のサプライヤから採用された派遣スタッフと業務委託スタッフがそれぞれ作業をしている企業は多いと思います。その際、同一の作業に対し同一のコストで人材を活用できているでしょうか。
いかにコスト効率よく外部人材を獲得して活用するか、その課題にチャレンジする事例が日本で出始めています。ある製造業企業では、同じ業務をしているヒトがいくらで雇われているのか、契約形態と地域性で単価を整理し管理しています。ある業務を外注する際に、自社の指揮命令者の有無やそのコストも加味して、派遣と業務委託のいずれか適切な契約形態で人材を獲得できるようになったそうです。

上記の事例を日本国内の“人財”確保の参考にするならば、下記のような視点が必要となるでしょう。

  1. 契約形態に関わらず、全社で統一されたプロセスで対応する
    ほとんどの企業では、従業員採用は人事部門、業務委託者は購買部門、そして派遣社員は各部署独自で管理というのが実態でしょう。そのため、現場で必要な人員数や配置の調整が行われず、要員計画は永久に満たされないということになりがちです。今後は、トータルワークフォース管理として正社員・契約社員・業務委託(FTE換算で把握)・派遣社員を統合管理するとともに、(事例1のように)人材確保プロセスも統合し、検索~契約~受入~支払まで含めた抜本的なプロセス改革が必要になると思われます。
  2. 市場から幅広く探す
    多くの企業では、欠員が出た際に異動配置か、採用か、外部人材確保かの3択をしていると思われます。人材確保の可能性拡大・リードタイム短縮を鑑みると、3つのプロセスを連動させ、同時に人探しができるプロセスへと高度化していく必要があります。特に高度専門職は世界的にも争奪戦となっており、社員として確保するという考え方のみでなく、プロジェクトベースでの契約をタイムリーに行うなど、(事例2のように)外部人材活用にも目を向ける必要性が高まっていると思われます。
  3. 職務内容における適正価格を会社全体で把握する
    上記とも関連しますが、人材確保経路や主管部門が異なることは、会社全体として「この仕事はいくらで対応してもらうのが適正なのか?」という標準価格を見定められない上に、バイイングパワーも効かないため、人件費高騰の要因となります。これを抑止するためには、プロセス統合と並行し、(事例3のように)人件費の標準価格を保持し、常に適正な価格での人材獲得を行える対応が必要になると思われます。

 

3. 日本企業でのより柔軟な“人財”確保に向けて

海外では、業務内容を定めたのち、スキルや能力、勤務地、単価、そしてアベイラビリティに基づいてマーケットで人材を比較し、最適な人材をあてがうトータルワークフォース管理をすでに実現しています。ここでは、正社員を配置転換するのと新規に採用するのではどちらが良いのか、外部から人材を調達してくるのが良いのか、調達する場合は派遣契約と業務委託契約のどちらが適切かを評価し、決定することが一つのポイントです。

外部から調達する判断をした場合、従業員のような直接雇用とは異なる方法で人材を確保しなければなりません。派遣や業務委託スタッフのような間接雇用では、指名による人材獲得が禁止されているためです。そこで重要になるのが、外部人材やサービスを供給するサプライヤのコントロールです。必要なスキルセットの人材を必要なタイミングで必要なコストで確保できるかは、サプライヤ管理に大きく依存します。同一職種の人材を様々なサプライヤから散発的に確保しているケースでは、最適な条件で人材を確保することは難しくなります。

  • サプライヤの集約と中長期のコミットメントをもって、選ばれたサプライヤと付き合いを深める
  • 以降は、選定されたサプライヤを使い、事前に定めた単価の範囲内で調達するように現場の取引を統制する
  • 取引の蓄積から得られたサプライヤKPIをモニターしながら、サプライヤとの間に緊張感を維持する

以上を重視して、既存サプライヤと交渉して条件の改善・向上に繋げ、よりよい調達を目指します。このプロセスを一元的に管理するのが、SAP Fieldglass に代表されるVender Management System (VMS) と呼ばれるソリューションです。

SAP Fieldglassは外部人材や役務サービスを扱うことに特化した仕組みであるため、通常の調達購買管理の機能に加え、人材管理の機能を備えているのが特長です。業務プロセスにおいては、人材管理特有のオンボードやオフボード管理機能、評価機能が加わっています。データにおいては、ヒトの情報が加わり、スキル情報や勤務地、指揮命令者、パフォーマンスなど、業務に必要な人材情報を取引データに紐付け管理します。また、ヒトに特有な労働法規に関してもソリューションをご提供し、日本の多くのお客様にご利用頂いています。

従業員情報を管理するSAP SuccessFactorsにSAP Fieldglassを連携することで、従業員+外部人材のトータルワークフォースが可視化されます。例えば、従業員だけでなく外部人材も含めて現場の生産性を測ることで、生産性向上に向けた議論を一歩先に進めることにも繋がります。また、外部人材の職種やロケーション、コスト情報なども見える化されるため、コスト効率の良い人材確保の選択にも繋がります。

本稿でご紹介した考え方は海外では顕著になってきており、グローバルで連携している人材マーケットを通してこの流れが日本に及ぶ時は遠くないでしょう。
その時に慌てることの無きよう、事業戦略推進を担う貴重な“人財”獲得戦争に負けることの無きよう、トータルワークフォース管理の実現をご支援さしあげたく、ご連絡お待ちしております。

 

トータルワークフォース管理、またSAP SuccessFactorsおよびSAP Fieldglassに関するご質問は Web からも受け付けております。お気軽にお問い合わせください。
・お問い合わせ先
Web問い合わせフォーム
電話: 0120-554-881(受付時間:平日 9:00~18:00)

2022年6月22日に開催されたSAP HR Connect 2022のオンデマンドサイトがオープンしました。こちらよりアクセスいただけます。

2022年6月9日に開催されたイベント「これからの外部人材調達:MSPを活用した経営基盤強化」収録版は、こちらよりご視聴いただけます。

 

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