サステナビリティに向けた実践手引き6~ZERO EMISSION2 as Enabler~
作成者:福岡 浩二 投稿日:2022年7月14日
今回は、前回同様ZERO Emissionをテーマに、他社とともに実現していく”Enabler”について触れてみたいと思います。
まず、SAPが本製品含めて提供したい価値の構造について下図で紹介しておきます。以後の回でも他の製品を紹介しますが、共通の考えです。
あえて文字でもシンプルに書いておくと、下記の流れです。
①非財務データの見える化→②事業活動への組み込み→③新しい価値創造
今回紹介する製品は、SAP Product Footprint Management(以後PFMと呼称)と呼び、上記でいう、②を目指した製品となります。
CO2排出量には、GHG Protocolが考案したSCOPEという分類が普及しており、一般的に取り組みが難しいのが社外発生由来のSCOPE3、という話を前回行いました。
SCOPE3も15個のカテゴリに分類され、モノづくり系で比較的に多いのがそのうち「1.購入した製品・サービス」です。分かりやすい例を挙げると自社製品を作るうえで調達する原材料などに相当します。
PFMは、今後機能拡充が予定されていますが、投稿時点(2022年7月)ではまさにこのカテゴリに照準を合わせた製品です。
製品がもたらす提供価値から書くと、
サプライヤーからの調達活動の流れで排出量を可視化して抑制を働きかけることができる、
という点です。
これをもう少しSAP製品機能で言い換えると、
SAP S/4HANAの購買/在庫モジュールMM(Material Management)上で調達した原材料単位で排出量を可視化できます。
PFMの位置づけは、SAP S/4HANAへの計算エンジンの役割です。そのデータフローをビジュアル化したのが下記図です。今後MM以外のモジュールについても拡充予定です。
ここからは、この製品がもたらすビジネス価値について触れておきます。
おそらくは、材料をサプライヤーから調達するときには、QCD(Qualtiry、Cost、Delivery)の基準で選択するケースが多いと思います。
ただし、こういった経済合理性の追求だけでは、残念ながらSCOPE3の抑制にはつながりません。経済性と合わせてSCOPE3の削減を目指した新しい基準を設ける必要があります。
今回ではそれが「材料単位でのCO2排出量」にあたり、購買担当者は与えられた各サプライヤーまたは対象製品ごとの排出量目標を基に、サプライヤーと協調的な活動を行うことができます。
そして、本製品を通じて集計された排出量は、他のSCOPEとも合算されて、企業全体での外部報告につながります。
後続の回でそれを直接支援する製品もご紹介しますが、外部報告での段階にくると経営層の範疇といっても過言ではありません。
つまり、サステナビリティのテーマでも、SAP S/4HANAを通じて経営から実務まで共通のデータをもとに各層ごとに内部の意思決定・外部への説明責任を果たすことができます。
これは、いわゆる「ヒト・モノ・カネ」の最適化を志向してきた経営を支えるERPの、時代に応じた自然な拡張とも言えます。
次回は、本製品以外でZero Emissionに属する他製品をご紹介します。
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