SAP S/4HANAへの移行基礎知識2022年度版:第3回 SAP Readiness Checkとシステムコンバージョンのステップを知ろう

作成者:野上田 亮 投稿日:2022年8月2日

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SAP  S/4HANAへの移行に関する最新情報をご紹介するブログシリーズの第3回になります。なお、本ブログの内容は2022年6月の技術情報に基づくものであり、将来変更となる可能性があります。

第1回 何故、SAP S/4HANAに移行するのか?目的の作り方
第2回 移行オプションの選択とプロジェクトの進め方を知ろう
第3回 SAP Readiness Checkとシステムコンバージョンのステップを知ろう
第4回  主に気を付けるべきSAP ERPとSAP S/4HANAの機能差とは?
第5回 カスタムコード(アドオン)はどのように移行できるのか?
第6回 SAPサービスによるSAP S/4HANA移行支援とは?

SAP Readiness Check for SAP S/4HANA

システムコンバージョンによりSAP S/4HANAへ移行する場合の技術的影響と必要なアクションを確認するためのツールがSAP Readiness Check for SAP S/4HANAです。この実行結果はコンバージョンを計画するに当たって最も重要な基礎情報であり、必須のステップとなります。以下の図ではその特徴をご説明しています。

ご使用中のSAP ERPのデータに基づいて、関連するSimplification Itemはどれなのか?どのような事前・事後作業が必要なのか?やアドオンへの影響度などが表示されます。
また、Simplification Itemの観点だけでなく、サイジングの観点や推奨のFiori アプリなども分析・表示されます。

SAP Readiness Check for SAP S/4HANAには随時、機能が追加されており、特徴的な新機能を以下にご説明します。

会計データの品質統計は既存データの不整合をプロジェクト開始前に把握するための機能になります。実際のプロジェクトでは会計データの不整合があると移行の作業が止まってしまうため、事前に状況を把握して対策を立てておくことで、S/4HANAへの移行をスムーズに行うことができます。
計画ダウンタイム予測は、他のS/4移行プロジェクトでの類似ケースに基づいたダウンタイム予測という機能で、グローバル統計からダウンタイムの参考値が出ます。なお、グローバル統計を基準にしているため、一般的には日本でのプロジェクトに比べ、ダウンタイムは若干短めに算出されます。
また、コンパチビリティパックとの関連性について表示されるようになりました。

SAP Readiness Check for S/4HANAはセルフサービスで本番機または本番機相当の環境にて実行します。実行の詳細についてはこちらのブログをご参照ください。。
またReadiness Checkは日々進化し、分析できる内容が追加されていますので、実行に当たっては最新のヘルプをご参照ください。

システムコンバージョンの詳細ステップ

システムコンバージョンのステップ(準備フェーズ、SUM、後処理)についてご紹介します。

準備フェーズ:

  • Maintenance Plannerでは、SAP ERP上にインストールされているAdd-onコンポーネントや有効化されているビジネスファンクションのSAP S/4HANAでの適合性確認を行います。SUMで使用するスタックファイルも作成するので、必須ステップになります。
  • Simplification Item-Checkでは、現行システムをコンバージョンする際の影響範囲を事前に調査します。具体的には、Simplification Itemの関連性チェックと整合性問題の存在チェックを行います。整合性チェックでエラーを解消していることがSUMの前提になります。
  • Custom Code Migrationについては、第5回ブログでご説明します。
  • Cross-app & Application-Specific Preparationsでは、システムやアプリケーション依存で必要な事前マニュアル処理を実施します。代表的なステップの詳細は第4回ブログでご説明します。

コンバージョン (SUM):

  • テクニカルコンバージョンを Software Update Manager (SUM)で実行します。自動化された一連のコンバージョンプロセスを実施して、対象システムをSAP S/4HANA化します。ソフトウェアがSAP ERPからSAP S/4HANAになり、データのS/4HANAのテーブル構造に合わせた変換も行われます。ロジスティックスのデータ変換はこのステップで実行されます。
    SAP ERPのデータベースがSAP HANAではない場合にはSAP HANAへのDB MigrationがSUM前に必要となります。SUM with DMO(Database Migration Option)を使用するとSAP HANA化とSAP S/4HANA化を一連の処理として実行することができます。

後処理:

  • システムやアプリケーション依存で必要な事後のマニュアル処理を実施します。会計カスタマイズの変換、会計データ変換、また一部のロジスティクスマスタの登録・設定はこのステップで実行します。

コンバージョンステップの詳細ついては、SAP Help Portalのコンバージョンガイドを確認ください。

まとめ

SAP S/4HANAへの移行準備に必須のツールであるSAP Readiness Checkの概要についてご説明しました。また、システムコンバージョンのステップについてもご紹介しました。若干、技術寄りな内容でしたが、移行関連ツールの大体のイメージをご理解いただけたら幸いです。

以前・後続のブログ投稿
第1回 何故、SAP S/4HANAに移行するのか?目的の作り方
第2回 移行オプションの選択とプロジェクトの進め方を知ろう
第4回  主に気を付けるべきSAP ERPとSAP S/4HANAの機能差とは?
第5回 カスタムコード(アドオン)はどのように移行できるのか?
第6回 SAPサービスによるSAP S/4HANA移行支援とは?

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