イベント開催報告:成長企業を創るこれからの人材戦略~事例と最新の研究内容から学ぶ~

作成者:SAP SuccessFactors編集部 投稿日:2022年7月21日

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去る5/30、「成長企業を創るこれからの人材戦略~事例と最新の研究内容から学ぶ~」(主催:東洋経済新報社、協賛:SAPジャパン株式会社)がオンライン配信により開催されました。

著名な講演者をお迎えし、企業の持続的成長に必要な人材戦略について、最新の事例と研究結果をお話しいただいたこちらのイベントの内容を、振り返ってみたいと思います。

 

〜尖れ、つながれ〜 「個」の可能性を引き出す共創型組織づくり

株式会社ポーラ 執行役員 人事戦略部長 荘司 祐子氏

 

POLAの人事戦略の考え方

はじめに荘司氏は、「一人一人」と「つながり」を大切にする創業当初からの想いは、会社・社員・人材戦略においても同じであると説きました。

POLAではありたい組織を共創組織、ありたい社員像をValue Creatorと定義しており、Value Creatorが個性や 「らしさ」を発揮し組織を高め合うつながりを大切にする「共創組織」を目指すことで、価値の最大化が図れるとしました。

そして、新価値の創造には多様な思考や視点をぶつけ合う「対話」が不可欠であるということも説きました。

 

POLAの取り組み

次に庄司氏はPOLAの具体的な取り組みを紹介しました。

POLAは2016年に、社員の活躍や会社の成長を加速し、社員のリテンション率をあげるエンゲージメントスコアに着目した組織風土改革をスタートさせました。ここでは社長や役員全員で全国の全組織を行脚し、対話機会を創造しました。

続けて2017年には、マサチューセッツ工科大学組織学習センターの共同創始者であるダニエル・キム氏が提唱した「組織の循環モデル」という思考法を取り入れ、タテ・ヨコ・ナナメの部署内外のコミュニケーションの促進を図りました。

加えて2020年には、個のつながりとそこから生まれる活躍を重点化する「尖れ、つながれ」というテーマを掲げ、以下の実績を上げました。

  • テーマに沿った様々な社内活動が可視化されるようになり、アワードやその他の活動報告会の開催が2021年度だけで174件
  • 自組織の業務改善から、地域の大学との協働活動で「美についての学び場の提供」まで多岐にわたる取り組みを実施

 

組織風土改革の具体施策の紹介

荘司氏はさらに、特に全社を巻き込んだ組織風土改革の具体的な施策を、大きく2つのカテゴリーに分けて紹介しました。

  1. 「尖れ、つながれ」のテーマ浸透施策
    • 目標評価の変革:自分のやりたいこと、実現したいことを個人目標化。半期目標のうち25%を個人目標に設定し、自らのパーパスと会社のパーパスを結ぶ導線を設計
    • 座談会の実施:自分のやりたいを顕在化させ、一緒にやりたいことに向かう仲間を募る機会を提供
    • ワーキンググループ支援:座談会などで繋がった仲間でできるワーキンググループを社内で見える化し応援
  2. マネージメントレイヤーの改革
    ① 事業と近い距離にいるマネージメントレイヤーを改革しなくては組織改革、ダイバーシティの取り組みは推進されないとし、「組織風土の検討」や「メンバーのキャリアビジョン実現に向けた上長支援」などをテーマにマネージメントレイヤーの研修を月一で開催

② ウェルビーイング経営を考えていく「ポーラ幸せ研究所」をマネージメントレイヤー含む有志で発足。メンバーの幸せ・働きがいについて職層関係なく話し合う場を創造

 

今後の成長を考えた際の課題

最後に荘司氏は、POLAの今後の成長を考えた際の課題を説きました。

「会社が育ててくれる、キャリアは会社に作ってもらうもの」という意識は社員の成長を阻害するものだという考えから、自主自立の意識とキャリアの自立、並びにその欲求を浸透させる必要があります。

この課題を乗り越えるための施策として、
・無意識バイアスに気づいてもらう機会として、職種別マネージメント研修の実施

・キャリアオーナーシップの醸成と育成環境を一体化した、人材成長プログラムの整備

を進めていると、未来の組織への期待を述べました。

 

基調講演「成長企業を創るこれからの人材づくり チームワーキング・リモート時代にチームを動かす3つのスキル」

立教大学 経営学部 教授 中原 淳氏

 

 

企業成長を支えるのはチーム・職場

はじめに中原氏は、企業成長を支えるのはチームであるとしたうえで、コロナ禍でニッポンのチーム・職場には不安が広がっていると説きました。

そして「チームの求心力を作り出すのは、職場の管理職・リーダー」だと続け、状況がダイナミックに変化しているため、チームを常にモニタリングして管理することが必要であり、成果を上げるためにはリーダーがチームを動かすためのスキルを身につけることが欠かせないとしました。

 

チームワーキングモデルとチームを動かす3つのスキル

その上でチームがワークするための3つの行動原理を、「チームワーキングモデル」として紹介しました。

チームワーキングモデル

  1. Goal Holding
  • 目標は設定したその瞬間から「忘れ去られていく運命」にある
  • 成果の出るチームは、全員が「目標をホールド」している
  • 目標をホールドさせるためには、マネージャーが①Why do?(なぜするの?) ②Why now?(なんで今なの?) ③Why us? (なんでわたしたちなの?) ④What’s merit? (何がメリット)を繰り返し語らないといけない
  • 目標ホールドの鍵は「オープンな情報共有」「やる気なしメンバーを生み出さないこと」
  1. Feedbacking
  • 成果を生むのは「心理的安全なチーム」
  • こけるチームは徐々にフィードバックしなくなる
  • こけるチームは①「仲良し」が目的化する ②摩擦を避けて個人ワーク化が進行 ③お互いのタスクが見えなくなる ④「チーム全体」のことを誰も考えなくなる というステップを歩む
  1. Task Working
  • 課題とは、理想と現状のギャップ(問題空間)を解消する要因
  • 課題と解決策をすべてテーブルに並べ、解決策は実現可能性を重視して選択する
  • 解くべき課題を皆で解くことが必要だが、状況は常に変化しているので、解くべき課題を常に再設定する必要がある
  • 成果の出ないチームは振り返りをしないため、解くべき課題を解けない

オムスビ型組織を作れるリーダーに期待

最後に中原氏は、これからの成長企業の条件として1人1人の個性をなくして渾然一体にしてしまう「モチ型組織」ではなく、1人1人の個性を残しながら全体としてまとまりのある「オムスビ型組織」とたとえ、オムスビ型組織を作れるリーダーの登場に期待していました。

 

 

クロージングセッション 特別講演「人事システム改革 国際競争力に勝ち抜くために」

株式会社ヨコオ 取締役 兼 執行役員専務 管理本部担当 株式会社ヨコオみらいサポート 代表取締役 深川 浩一氏

 

 

ヨコオの事業を取り巻く環境

はじめに深川氏は、事業を取り巻く変化の激しい状況を共有しました。

生産年齢人口減少による技術蓄積の総和量維持が困難で、顧客の多くがグローバルリーディングカンパニーという背景から自社の知的装備のレベルアップが必須であり、これまで技術と経験は蓄積しているものの、多くのレガシー設備を抱え日本的な制度の改革が急務であることが、人事システム改革のきっかけだと解説しました。

 

人事改革の方向性

続いて、具体的な人事改革の内容として、基礎技術+世界最先端技術(知識)を競合よりも早く、確実に製品、プロセス、社員、ビジネスモデルに実装するという方向性を提示し、以下5つの改革の軸と狙いを共有しました。

  • 積極的な研究開発/設備投資→事業利益+増資資金を成長投資へ
  • ダイバシティ&インクルージョン→外国籍社員の育成と活躍ステージ拡大
  • 社員の内発的成長意欲喚起→自主的キャリア開発とスキルズマップ、能力開発支援体制強化
  • 効果の確認とPDCA→ラウンドテーブル、従業員エンゲージメント調査
  • 外部人財活用に向けたネットワーキング→産学連携協定、ベンチャー・エコシステム

ヨコオの競争ポジションと人事改革の方向性

具体的な施策

講演の後半では、ヨコオのこれまでの具体的な施策を挙げるとともに、将来の展望を提示しました。

  • 社員の内発的な成長意欲を高める施策として、自律支援のため外部キャリアコンサルタントによる支援体制を構築し、 スキル習得を支援する学習環境を整備
  • 調査機関と契約し職種ごとの報酬水準を確認
  • 社員情報の見える化、従業員エンゲージメント調査、評価制度のシステム化を2022年4月に完了
  • スキルズマップの実装や先端技術の取得を加速するための学習管理システムと後継者管理システムの立上げを実行
  • 課長職以上に対する職務給の導入、およびそれに伴う家族手当・住宅手当等の属人的手当の廃止とカフェテリアプランの導入

具体策


先進企業の人事戦略や最新のHRテクノロジーを紹介するイベント「SAP HR Connect 2022(2022年6月22日開催)」のもようを、下記リンクからご覧ください。オンデマンド視聴も可能となっております。

SAP HR Connect 2022のハイライトはこちらから

 

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