サステナビリティに向けた実践手引き9~ZERO WASTE2 as Enabler~
作成者:福岡 浩二 投稿日:2022年8月3日
今回から、ZERO WASTEに関わるEnableの視点、つまり社外向け活動について紹介します。
前回触れたとおり、この領域は「循環型経済」と深いつながりがあります。
特にこのテーマの性格上、自社だけでなく社外組織とのコラボレーションを推し進めています。
循環型経済の原則を定めたエレン・マッカーサー財団とのパートナーシップもその1つです。
SAPとエレン・マッカーサー財団が再生型ビジネスを実現する循環型経済パートナーシップを発表(SAP 2022/4)
NPO/NGO含む多様な団体とのパートナーシップも含めて、循環型経済への取り組みについて体系的に表現した図は以下の通りです。
再生型ビジネス(Regenerative business)の構築を目指して、SAPが重要と考えている3つの要素は”Eliminate”・”Circulate”・”Regenerate”です。
それぞれの要素に応じた主要製品の一覧が下記となります。今回の投稿では、主に”Eliminate”を担うSAP Responsible Design and Production(以下RDP)に絞って紹介します。
上図左上に”Regulation and Tax Reporting”とあるように、RDPは主にグローバルでの排出規制に関わる製品です。
以前より消費財業界などでは、生産者責任拡大(EPR:Extended Producer Responsiblity)という概念が注目されています。
文字通り、売った後だけでなくその生産活動まで責任範囲を広げようという概念です。
EPRはあくまで一般的な概念ですが、その具体的なテーマとして、今日本でも注目されているのが「プラスチック排出規制」に対応したものです。
規制ですので、国・地域ごとにルールは異なりますが、欧州や北米一部地域ではすでに「プラスチック税」が導入されつつあります。
例えば、英国では、2022年4月に「プラスチック製包装税」が施行されました。
その内容は、英国内で製造・輸入したプラスチック製の包装資材のうち、製造・加工するのに使われたプラスチックのリサイクル率が一定の割合に達しないと課税されます。(厳密にいえば、たとえその割合を超えても、ある程度のプラスチック生産量を超えると対象となります)
言い方を変えると、対象となるプラスチック製品を製造しているメーカーでは税金への対応のためにその含有率を可視化する必要があります。
日本国内でも2022年4月に、通称「プラスチック資源循環促進法」が施工されています。
これも、プラスチック製品の設計から販売、廃棄物の処理という全体の流れのなかで3R+Renewableを進めて循環型経済を推し進めることを目指したものです。
SAP RDPは、主にプラスチック税への対応を背景に開発されてきました。
プラスチック製品に関わるデータを、SAP S/4HANAと連携しつつ多角的に表示することができます。
こちらでは、ある消費財の包装データとして、材料の比率(ガラス、金属、紙・カートン、熱可塑性プラスチック、熱硬化性樹脂、木材) や、リサイクル比率などをカテゴリごとにみることができます。
左下にはNGOなど外部向けレポートに関する進捗・アラートなどを視覚的に気づかせる画面です。
課題の多くは、こういったデータが社内外に散在しており、必要に応じてExcelバケツリレーになっている点です。
規制に絡む話ですので各地域・国で画一的にはいきませんが、例えば下記のようなつながりでRDPは位置づけられます。
上図の緑鎖線は、まさにパートナーの皆様と一緒に国内外で共同開発を進めているところです。
循環型経済は、一社だけで実現することはできません。
そもそも目指すのは企業単体での最適化だけでなく、循環の仕組みを通じて社会の最適化だと思います。
単なる税対応コストを削減という目的だけでなく、こういった機会を通じて、バリューチェーン全体で循環可能な仕組みを一緒に考えるきっかけになればと思います。
参考までに英語ですが、今回のテーマに関係する同僚のBlogも紹介しておきます。(こちら)
最後に、SAP RDPの紹介動画を引用しておきます。
以前の記事はこちら