SAP SuccessFactorsをプラットフォームとして、EYが推進する人事変革プロジェクト「Symphony」

作成者:SAP Japan イベント 投稿日:2022年8月18日

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3年ぶりのリアルイベントとして、7月12日にグランドプリンスホテル新高輪で開催されたSAP Sapphire Tokyoの初日セッションでは、各業界の経営課題にフォーカスした多数の事例セッションが用意されました。本ブログでは、その中からEYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社がSAP SuccessFactorsを活用して、グローバルで推進する人事変革プロジェクト「Symphony」を成功に導いた道のりについてご紹介します。

人事サービスのデジタル変革に向けた「Symphony」プロジェクトの推進

EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社(以下、EY)は、「Building a better working world」を自らのパーパス(存在意義)として掲げ、個別の企業にとどまらず、政府、業界までを含めた幅広いステークホルダーに向けた課題解決の支援を通じて、豊かな社会の実現を目指すプロフェッショナルサービス企業です。同社では現在、グローバルで約30万人の従業員が150を超える国で幅広い業務領域のサービスを提供し、本セッションのテーマである人事領域だけでも、グローバルで1万3,000人、日本では約260人のプロフェッショナルが在籍し、多くの顧客をサポートしています。
EYでは、これまで自社の人事サービス機能の変革にも積極的に取り組んできました。その象徴とも言えるのが、2016年にスタートした人事サービスのデジタル変革プロジェクト「Symphony(シンフォニー)」です。このプロジェクトの大きな狙いは、グローバルの組織全体にSTEM(科学・技術・工学・数学)人材を配置して、より柔軟な働き方を実現するとともに、デジタルを活用したプロセスの合理化やコスト削減、またシェアードサービスへの移行によって運用の効率化を図ることにありました。

EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社 田口陽一氏

EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社
ピープル・アドバイザリー・サービス
パートナー 田口 陽一 氏

同社のピープル・アドバイザリー・サービス HRトランスフォーメーションリーダー(Japan & APAC)を務める田口陽一氏は、「SAP SuccessFactorsをプラットフォームとして採用したSymphonyは、154の国と地域に12の言語で展開される非常に大規模なプロジェクトです。おそらくEYは、グローバルでも最大級のSAP SuccessFactorsユーザーの1つだと思います」と話します。
Symphonyプロジェクトには、同社のコンサルティング部門に所属する200人以上のコンサルタントが参画し、SAPとの協働を通じてSAP SuccessFactorsのさまざまなモジュールを実装してきました。
例えば、コア人事業務を担うSAP SuccessFactors Employee Centralの導入では、EYのチームとSAPが密接に連携し、拡張機能を利用しながら組織や職階などの複雑な要件に対応していきました。
SAP SuccessFactors Employee Centralでは、130のグローバルおよびローカルのレポートを導入し、戦略・運用・コンプライアンス関連業務のサポートを行うほか、SAP SuccessFactorsから主要な人材ハブにデータを共有し、ローカルハブを介して下流のアプリケーションに接続する仕組みも構築。給与計算や福利厚生サービスなどの主要なプロバイダーとの連携以外にも、ServiceNow、ADP GlobalView、SAP Finance、Identify Managementといったさまざまなソリューションとの統合が可能になっています。こうした連携により、SAP SuccessFactors Employee Centralには約550万件の最新の人事データが取り込まれています。
さらに、自動化およびイノベーションの促進のために、さまざまな業務領域をサポートするボットも複数開発されています。わずか31日で開発されたチャットボット「Goldie」は、導入から28日間で50万件の質問に対応し、350万ドルものコスト削減に貢献しました。
下の図はSymphonyのグローバル展開のタイムラインです。最初にオンボーディングのシステムを導入し、次に目標・評価に関わるLEAD(EY独自の人事評価)の仕組み、その後はラーニング、研修管理のシステムをリージョンごとに段階的に展開していきました。また、並行してコア人事システムの導入を進めており、これは2020年に完了しています。

Symphonyのグローバル展開のタイムライン

従業員を中心とした「Human@Center」を通じて人事関連のエクスペリエンスを向上

Symphonyプロジェクトでは、その大きな理念として「Human@Center」の実現が掲げられています。同社の重要な戦略課題の1つでもある「Human@Center」は、従業員を中心に据えた人材育成やリーダーシップ開発を通じて、働きがいのある職場の創出を目指すものです。
田口氏は、そのためのプラットフォームとしてSAP SuccessFactorsを採用した理由として、「グローバルで共有できる人事領域で最高クラスのプラットフォームであること」「必要に応じてモジュール単位で導入できる柔軟性」「SAPの継続的なテクノロジー開発および投資による拡張性」の3つを挙げます。
「入社、研修、ゴールの設定から、キャリア相談、報酬面、退職まで、一連の人事関連業務をSAP SuccessFactorsで統合し、エクスペリエンスの向上を目指しました。また、グローバルで一元管理される人事データの分析による新たな戦略策定、モバイルからアクセスできる利便性の高い環境づくりにも取り組みました」(田口氏)

Humans@Centerを実現するためのSymphony概念図

Symphonyプロジェクトがもたらした効率性、利便性の向上とコスト削減

「Symphonyプロジェクトをスタートする以前は、地域ごとにバラバラの人事システムを使っており、そこには効率性にとどまらないさまざまな課題がありました。人事を含めたプロフェッショナルサービスを提供する当社としても、自らの利益創出に資するシステムの構築が求められていたのです」と田口氏は振り返ります。
また、出張やクライアント先での常駐が多いコンサルタントから寄せられるより利便性の高い人事システムへのニーズ、さらには研修の実施、パフォーマンスの評価、人材開発・育成などにおける地理的、文化的なギャップも課題だったといいます。

人事機能のデジタル変革をグローバルに実現するプラットフォームとしてSAP SuccessFactorsを選択

こうした課題についても、Symphonyプロジェクトでグローバルの人事プロセスを統合した結果、業務効率の大幅な改善が実現したといいます。例えば、同社では3万を超えるラーニングコースを展開しており、各従業員は専門性を高めるために毎年決められた時間の研修受講を義務付けられています。これをSAP SuccessFactorsの研修プラットフォームで展開する仕組みにしたところ、受講履歴を一元的に管理できるようになりました。また、出張先やクライアント先でもモバイルからアクセスできる機能が充実し、ユーザー側の利便性も大きく向上しています。
さらに、田口氏は「人材の可視化」についても言及しました。
「当社では、『ディスカバリー』と呼ばれる約30万人の従業員のスキルや職務経歴を登録したデータベースを構築しています。ディスカバリーによって、誰がどの分野の知見を備えているかを一元的に把握できるため、プロジェクトチームの編成などで役立っています」
これらの効率改善や新規サービスの相乗効果により、人事関連業務のコストはグローバル全体で10%低減。また、バラバラだったシステムの統合が進んだことで、インターフェースも70%削減することができました。

EYのSAP SuccessFactors導入メソドロジーの集大成「HR360」

田口氏は、Symphonyプロジェクトが着実な成果を生み出すことができている要因として、EYの社内にSAP SuccessFactorsの経験が豊富な専門家が多く在籍していることが大きいと明かします。
「人事領域の業務および機能に精通したコンサルタントがいたことで、独自のツールやアクセラレーターを柔軟に活用することができました。給与モジュールに関しては、ペイロールコントロールセンター(Payroll Control Center:PCC)の機能をSAPと共同開発するといったこともありました」
また、インドにあるオフショア開発センターの専門チームの存在、そしてデータ移行のツールが標準装備されていたことも、プロジェクトの推進に大きな貢献を果たしました。
こうしたEYのSAP SuccessFactors導入メソドロジーはパッケージ化され、「HR360」と名付けられています。ここには、迅速な要件定義、ベストプラクティスを活用したオペレーションの標準化、各国の要件とのFit & Gapなどをサポートする各種ツールやテンプレートが用意され、これらを活用することで多くの顧客のプロジェクト支援も可能になるといいます。
2016年以来、グローバルで展開してきたSymphonyプロジェクトについて、田口氏は「複雑な要件が絡み合う長期にわたるジャーニー」だと話します。まさにグローバルな規模で従業員を中心に据えた「Human@Center」の実現を目指すEYの人事変革ジャーニーは、2023年度末のゴールに向けて現在も進行中です。

HR360: Symphonyプロジェクトにおいて利用したSAP SuccessFactors導入メソドロジー

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