ビジネスモデル転換に取り組むNECの人材マネジメント領域における企業変革

作成者:SAP Japan イベント 投稿日:2022年8月17日

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多くの企業が取り組んでいるDX戦略ですが、戦略を実行して成功に導くためには人材の強化が欠かせません。2022年7月に開催された年次イベントSAP Sapphire Tokyoの事例セッションでは、日本電気株式会社 取締役執行役員常務 兼 CHRO(最高人事責任者) の松倉肇氏が登壇。「挑戦する人の、NEC。-DX時代の成長戦略-」と題して、人材マネジメント領域における企業変革について経営視点から戦略や取り組みを語りました。

日本電気株式会社 取締役 執行役員常務 兼 CHRO(最高人事責任者) 松倉 肇 氏

日本電気株式会社
取締役 執行役員常務 兼 CHRO(最高人事責任者)
松倉 肇 氏

Purpose経営の実現に向けて「人・カルチャーの変革」に注力

創業から120年以上の歴史を誇るNEC。直近の20年はこれまでの国内市場中心から、グローバル市場を視野に入れた事業へ、さらにハードウェアやシステムインテグレーションの提供から、社会価値を提案する事業へとビジネスモデルの転換に取り組んできました。

「ビジネスモデルの大転換を加速させるために、2012年から幾度も役員合宿を実施し、NECの社会における存在意義を見つめ直しました。丸1日議論を尽くしてたどり着いたのは、安全・安心・公平・効率の4つの言葉でした」(松倉氏)
抜本的な企業変革を進める中、人材マネジメントも変化を続けています。現在の人事戦略の拠り所となっているのは、「NECは、安全・安心・公平・効率という社会価値を創造し、誰もが人間性を十分に発揮できる持続可能な社会の実現を目指します」というPurposeです。
2025中期経営計画では改めて「Purpose経営」を強く打ち出し、「戦略」と「文化」をその両輪に位置付けています。
「これまで120年間続いている古い会社が本当に文化を変えることができるのか? と外部の方から質問されることもあります。確かに“社風”は変えることはできませんが、“行動様式”を変えることはできます」(松倉氏)
NECには、人やカルチャーのあるべきカタチを示した「NEC Way」があり、この実践そのものが人事戦略の目的となります。「NEC Way」は、企業としてふるまう姿を示した「Purpose(存在意義)」「Principles(行動原則)」と、一人ひとりの価値観・ふるまいを示した「Code of Values(行動基準)」「Code of Conduct(行動規範)」で構成されています。そして人事戦略の肝になる行動基準「Code of Values」は、“視線は外向き、未来を見通すように”“思考はシンプル、戦略を示せるように”など、5つの行動基準として明文化されています。
「Code of Valuesで明示した5つの行動基準は、人事評価の最も重要な指標として組み込み、1on1などを通じて社内への徹底周知を図っています」(松倉氏)

「人・カルチャーの変革」とは、会社の姿勢と従業員一人ひとりの価値観・行動 とのつながりを示した「NEC Way」の実践そのもの

社員が誇りを感じながら働ける職場へ

「NEC Way」の実践を人事戦略の目的とし、5つのCode of Valuesによるカルチャー変革を掲げるNECが目指すのは、社員が誇りを感じながら働けるエンゲージメントの高い職場にすることです。そのために、2025年度までに達成すべきKGIとして、エンゲージメントスコア50%を定めています。
「エンゲージメントスコア50%は、グローバルに見ると上位25パーセンタイルに該当し、決して簡単な目標ではありません。しかし、これを実現することにより、社員を含む多様なステークホルダーから選ばれる会社になることが、当社の目指すところです」(松倉氏)

「NEC Way」を軸とした3つの人事戦略

人事戦略の目標達成に向けて、具体的に実践していることは「インクルージョン&ダイバーシティ」「キャリアオーナーシップ」「Smart Work 2.0(働き方改革)」の3つです。
1つめの「インクルージョン&ダイバーシティ」は、「NEC Way」の価値観に共感し、それを実践できる人が集まり、活躍する土壌を作ることです。その際、ジェンダー、世代、国籍などは問いません。そのため、この4年間で中途採用のキャリア人材は500人以上、グローバル人材は1.1万人、女性管理職比率は2.3%増えています。
「まずはお互いがインクルーシブ、つまり認め合うことです。ですから、ダイバーシティ&インクルージョンではなく、インクルージョン&ダイバーシティとしています」(松倉氏)
具体的な取り組みとして、「NEC Way」を自分ごと化してもらうためにトップから担当レベルまで一人ひとりがNEC Wayと向き合い、自身のWayを考え・共有していくセッション「連鎖ミーティング」を2020年から1年間実施しました。
「連鎖ミーティングでは、社長が役員に対して自分のWayとNEC Wayがどう結びついているかを語り、次に役員が事業部長へ、事業部長が自分のメンバーへと、順番に話をして自分の目指す姿を明らかにしていきました。施策後に実施した調査では、理解度99%、実践度89%と非常に高い数字となり、成果として現れています」(松倉氏)

「NEC Wayに共感し実践する」という傘の下に、 バックグランドの異なる多様な人材が集まり活躍する土壌をつくる

2つめの「キャリアオーナーシップ」は、キャリアは組織や上司が作ってくれる、会社が守ってくれるという従来の意識から、キャリアは自分自身で考え、行動し、デザインしていくという意識へシフトするための取り組みです。大企業に染み付いたマインドセットを変えていくために、社員が組織を自発的に選ぶ、または組織が社員を選ぶ「NEC Growth Careers」という社内人材公募制度を、若手社員の発案によって拡充。2022年2月現在、募集ポジションの数は約1,300件、社内応募者の登録数は約1,700件と、確実に社内人材の流動性は高まっています。
その他にも、ジョブ型マネジメントを促進するための制度変更や、社員一人ひとりのキャリアに寄り添いながらリスキリング、配置転換、キャリアデザインなどを支援する新会社の立ち上げなど、さまざまな取り組みを進めています。

自律を支援するための様々な新制度を導入し、 個人の意識を組織主導のキャリア形成から脱却させる

3つめの「Smart Work 2.0(働き方改革)」は、個人がCode of Valuesの実践を通して、自律的な成長と働く誇りにつながる経験を獲得するために、組織が環境と機会を提供するものです。例えば、2021年10月に本社ビル内に社外のパートナーや部門を超えたメンバーと体験を共有できる「FIELD」という共創空間をオープン。その他にもコロナ禍を受けてオフィス改革を加速し、オフィス・フロア構成の変更、オフィス面積の削減、共創空間の拡大などに取り組んでいます。

個人がCode of Valuesを実践し、組織はそのための環境と機会を提供することで、 自律的な成長と働く誇りにつながる経験を獲得する

これらの3つの取り組みを下支えするのがデジタル基盤です。NECでは、世界を統合したジョブ型人材マネジメントを実現するために、またキャリア採用・新卒採用者の育成のために、グローバルなHRのプラットフォームとしてSAP SuccessFactorsを採用しました。
「SAP SuccessFactorsの導入と並行して、これまでの人事部門が一括したオペレーションから、ラインマネージャーへ権限を委譲する取り組みも進めています。これらを実現し、デジタルコミュニケーションインフラとの連携を拡充したり、次世代の社内システムと融合させたりすることが、従業員エクスペリエンスの向上に寄与すると考えています」(松倉氏)

「自ら考え、自ら変わる」を目指し、「走り続けることを常態化する」

松倉氏が2018年にCHROに就任してから2021年までの3年間は、変わるための助走期間(Un-freeze)としてきました。その結果、2020年度から2021年度の1年間でエンゲージメントスコアは25%から35%へと上昇し、2025年度までの目標に掲げたエンゲージメントスコア50%のKGIに着々と近づいています。2021年度からは、人とカルチャーの変革を本格化させ、「自ら考え、自ら変わる」人材育成を推し進めるChangeフェーズに突入しています。この先には、変わり続けることを文化として定着させるRe-freezeを目指して、歩みを止めずに進めていく考えです。

人とカルチャーの変革を本格化させ、 「自ら考え、自ら変わる」を推し進めていくフェーズに突入

「CHROに就任して以来、人やカルチャーが、企業の価値創造を持続的に続けるための大きなエネルギーになっていることを強く感じています。しかし、人の気持ちは戻りやすいもので、変革を続けると疲れる人が出てきます。それでも走り続けることを常態化することが重要で、走り続けることが気持ちよい状態にならなければ、激変する環境への対応力も向上しません。今後も小さな成果を全社で共有しながら熱量を保ち、一歩ずつ文化の定着というゴールに近づいていきます」(松倉氏)
NEC自身の変革を通して蓄積したナレッジやノウハウは、顧客の企業変革にも展開していく構想です。松倉氏は「皆様とも、共に価値を生みだすパートナーとしてご一緒できる機会を楽しみにしています」と語り、講演を締めくくりました。

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