化学業界が直面するグローバル・サプライチェーンの課題と克服の手段とは?

作成者:中谷 俊哉 投稿日:2013年10月10日

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SAPジャパンの中谷です。今回から3回にわたって、化学業界におけるビジネスの現状とグローバリゼーションをはじめとした課題の分析、そして、SAP ソリューションを活用した具体的な解決のヒントをご紹介していきます。第1回は、わが国の化学業界で現在起きている変化と、目指すべき方向性について、少し詳しくお話ししていきましょう。

グローバル化に向けた日本の特殊性という課題

Factory, Rotterdam, Netherlands, Europe

これからの成長の方法を探る上でまず認識しておきたいのが、日本の化学業界の特殊性という問題です。わが国の化学業界は、電機や自動車など国内の基幹産業を支える素材産業として重要な地位を占め、顧客や地域と密接に連動してきました。この歴史を通じて、日本の化学製品は品質や納期そして価格を至上課題とし、そうした顧客の高い要求レベルに応えることで成功を築いてきたのです。またこの背景には、長らく日本の製造業は輸出型産業であり、コストに優先して品質や納期が重視されてきたという事情もあります。いずれにせよ、こうした特殊事情ゆえに国内ではコストに対する意識が海外に比べて遅れていたという事実は否めません。

しかし現在、この状況は大きく変わりつつあります。世界規模で経済が低成長時代を迎え、わが国の製造業も海外進出を余儀なくされています。化学業界にもこうしたグローバル化を推進する製造業に対して、競争力の後押しとなるサービスが求められています。やや大げさに言えば、日本のものづくりがグローバル市場で生き残るために、化学業界も強力なバックアップと、そのための変化を要求されているのです。

さらに、化学業界自身にも国内市場の減少や原料の高騰などの問題が押し寄せており、もはや日本国内だけでは利益を確保できなくなってきています。厳しいようですが、これが日本の化学業界を取り巻く偽らざる環境です。

グローバル化の最大のポイントはサプライチェーン改革

274900_l_srgb_s_glではこのグローバル化の中で、化学業界はどのような戦略で行動していけばよいでしょうか。それには従来の業界特有のコスト構造から、根本的な改革を図っていく努力が必要です。日本の製造業には納期厳守という“美風”がありましたが、別の見方をすれば、これは避けられない高コスト構造でもあります。この足かせがある限り、グローバル市場の競争にはハンディがつきまといます。加えて、急速に海外での生産を拡大している顧客に対して、自分たちだけが国内のしかも装置産業としてとどまっているわけにはいきません。グローバル対応は化学業界にとっても不可避の課題であり、同時に今後の成長戦略を考える上でもっとも重要な選択肢となっています。

言うまでもなくグローバル市場への進出には、日本のこれまでの特殊性、独自性に固執することなく、世界市場で競争相手に打ち勝つための方針転換と新たな発想が必要です。たとえば、日本の化学企業は海外での販売比率が増えたとはいえ、いまだにその多くを商社経由で販売しています。つまり世界中に顧客が増えても、売る相手は変わらず少数の、それもこちらの事情をよく理解してくれている商社で済むのです。一方、海外のグローバル企業は各国の拠点を直接自社でコントロールしています。こうした例を見ても、サプライチェーンとバリューチェーンが、日本企業と大きく異なっていることがわかります。

グローバル企業は、すでに世界を視野に入れたビジネスと経営を成り立たせています。そのためにグローバルでの全体最適化を進めており、コストや利益のコントロールも世界規模で見て利益が上がっているか、コストが最適化されているかという判断に基づいて行われています。このためサプライチェーンマネージメント(SCM)が非常に発達しており、経営判断においても、SCM の品質と成果が大きく問われます。残念ながら、この点で日本企業はSCM への認識がいまだに不足しており、当然ノウハウの蓄積やマネージメントを実行できる組織もありません。この問題を解決するのが、グローバル化への第一歩であり急務であるのは疑いのないところです。

複雑化する需要/供給をコントロールするイノベーション基盤

具体的な SCM の実践にかかる前に、今一度グローバル化におけるSCM、そしてITの位置付けについて確認しておきましょう。グローバル企業では、ITはもはやツールではなく事業の基盤として位置付けられています。世界の各地に点在する拠点やマーケットの、それぞれに異なる特性やニーズを正確に把握することは容易ではありません。まして新興国や新規競合企業の台頭、シェール革命による原料価格の変動など、ますます激しく複雑に変化していくさまざまな要因をリアルタイムで収集・分析し、迅速な経営判断と生産のコントロールに反映させていくことは、IT なしには考えることができません。

SAP ではそうした変化をいち早く先取りしてサプライチェーンを最適化するSAP Sales and Operations Planningを提供しています。このソリューションを活用することで、販売予測や生産能力の管理だけでなく、企業の財務目標やマーケティング活動、在庫目標などあらゆる要素を統合した包括的な計画と、財務要件を満たす需要/供給計画の策定の双方が可能になります。これをベースにサプライチェーン全体を迅速に最適化して経営のかじ取りをしていくことで、イノベーションの実現とコスト最適化、そして新たな利益創出が実現するのです。

予見分析ソフトウェアに劇的な進化をもたらすインメモリーテクノロジー

すでに国内でも、こうした取り組みを始めている企業がいくつか出てきていますが、今後はここにいかに日本独自の工夫や強みを生かした差別化を加味していけるかが、わが国化学業界の競争力の源泉となっていくでしょう。その具体的な原動力となる最新の、そして画期的なツールが、2013年8月6日に発表されたクラウドアプリケーションの新製品SAP Sales and Operations Planning powered by SAP HANAです。

これはサプライチェーンのデータを統合、分析し、需給業務計画の策定や調整を支援するクラウドアプリケーションです。サプライチェーン管理に最適化されたツール機能とSAP HANAの強力なインメモリーデータベース パワーを組み合わせることによって、グローバルで展開する拠点や部門のデータをリアルタイムで集約、分析し、需給業務計画に反映することが可能になります。さらに、シナリオ分析機能も備わっており、複数の生産、販売シナリオやシミュレーションをリアルタイムで実行、検証できる点も大きな特長です。

SAP Sales and Operations Planning powered by SAP HANAによって、これまでは物理的距離を始めさまざまな障壁によって隔てられていた世界の拠点がバーチャルな1つの統合組織として再編、標準化され、激しい世界市場の動きに対して迅速かつ最適な判断を実行できるようになるのです。

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SAP Sales and Operations Planning powered by SAP HANA

次回は、これまでコストや管理とは一線を画す傾向になった“聖域”、研究開発領域に管理視点を導入することで、イノベーションとコスト最適化を両立させる手法についてお話しする予定です。

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