サステナビリティに向けた実践手引き11~ZERO INEQUALITY1 as Exemplar~
作成者:福岡 浩二 投稿日:2022年8月19日
今回から3つ目の主要施策”ZERO INEQUALITY”について、紹介していきます。
改めて全体図を再掲して、位置づけを振り返っておきます。(どの企業改革も、枝葉ばかり見ると木や森がおろそかになりがちですね・・・)
平等(EQUALITY)という言葉を使うと、人権問題を連想し、日本での生活では実感が持ちにくいかもしれません。
ただし、我々が普段購買・消費している商品の製造工程を遡ると、実は無縁ではありません。
その例として、前回紹介したGBA(Global Battery Alliance)事例で、我々が使っているスマホのバッテリに使われるレアメタル採掘で起こっている「児童労働」問題について言及しました。
モノに付随するサプライチェーンだけでなく、企業を取り巻く環境が大きく変わっており、そこには従業員の価値観も含まれてきます。
日本でも話題にされるジェンダーやマイノリティ問題はその1つの表れですが、そのような社会と個人の価値観の変容に対して重要な考え方が「多様性の受容」です。
以前からD&I(Diversity & Includion)といわれていますが、SAPでは近年、間にE(Equity:公平性)を入れて、DE&I(またはDEI)という言葉も使っています。
参考までに、EqualityとEquityの違いを補足しておきます。(よく混同されがちです)
Equalityとは「同じ権利を与える」こと、Equityは「同じ条件となるように配慮すること」です。
よく例えられるのが、移動を目的とした場合、Equalityは幼児も大人も同じ自転車を与え、Equityは幼児には乗りこなせる三輪車に代える、というイメージです。
SAPでは、DE&Iを推し進めるためのマニフェストがあり、下記4つがその骨格となります。
1.Global Culture:文化の多様性を活かし、お客様や社会に価値を提供し続けるために
私たちは国籍や人種にとらわれずに行動し、多種多様な文化・考えを取り入れることで、新しい価値を創造します2.Gender:すべての人がより自分らしく活躍するために
私たちは性別にとらわれずに、社員一人一人が能力を最大限に発揮し活躍できる環境を作っていきます3.Generation:世代間のコラボレーションによる持続可能な組織であるために
私たちは世代間が連携することで、専門知識を経験に加え、リスクを恐れない変革的な思考や革新的なアイデアを備えた組織を目指し、世界に誇れる人材を未来に向けて育成することを推進していきます。4.Beyond 3Gs:すべての人がインクルーシブに協働できる環境を目指す
私たちの目標は、健全かつ公正で、インクルーシブな職場を実現し、維持することです。社員一人一人が常にその重要性を意識できるようにさまざまな活動を実施していきます。
これはグローバル共通の指針ですが、どうしても全社方針だけだと日常に落とし込みにくい、という課題があります。
SAP Japanでは、Globalの方針に沿った範囲内で、日本独自に組織的な活動を立ち上げています。
そこでは、社員有志が本業に加えて日常的にD&I活動を推進しています。そのリーダーが背景や具体的な取り組みについて触れたインタビュー記事をこちらで掲載しています。
上記引用記事内でも触れていますが、重要なのはトップダウンとボトムアップの融合です。
おそらく、多くの日本企業でもトップダウン、つまり統合報告書や全社イベントなどで、「D&I(またはDEI)を強化する」、と社外または社員向けに発信しているところは増えていると感じています。
ただ、同時によく伺う課題がボトムアップの欠如、つまり個々の社員がなかなか自発的に動いてくれない、という悩みです。
特効薬とまでは言いませんが、比較的実行しやすい自社事例として、ボトムアップ型の取り組み例をご紹介します。
SAPでは、グローバル全体で”Pledge to Flex”という働き方の柔軟性を目指した取り組みを2022年より始めました。
実はSAPでは、”Chief Future Of Work Officer“というユニークな役職もあり、こちらのBlog(英語)でその経緯や考え方を本人が発信しています。
ただし、物理的移動の自由度を高めると、どうしても社員同士の接点が希薄になりがちです。
そこでSAP Japanでは独自に、有志の企画・運営の下で、社員を定期的に紹介しています。
具体的には、今のライフスタイルや趣味・仕事のTipsなどを自由に書いてもらい、例えば下記のようなイメージで3・4ページぐらいの分量です。(執筆者からは公開許諾済み)
これを読む当事者としての感想ですが、むしろコロナ禍以前よりも同僚の個性や知られざる趣味を知る機会が増え、社員間のエンゲージメントが高まっているのではないか?とすら想像します。
これは重要なポイントで、むしろ今の状況下だからこそできる新しい価値創り、と受けとめて臨むほうがよいと思います。
共有の仕方とか内容の質はあまり気にせずに、出来る限り運用負荷を低くして、皆がゆる〰く楽しめるような仕掛けのほうが好ましいです。
最後に、SAP Japan新入社員(当時)による手作り企画を紹介して締めたいと思います。
SDGsに興味を持って、自分たちで自主的に学びつつ社内関係者を巻き込み、ついには社長まで動かしてインタビューまで実現しました。
インタビュー内容も今回のテーマと関連しますが、いかに我々一人一人が自分事化できるか、に尽きると思います。
次回からは、社外を巻き込んだEnablerの視点で、ZERO INEQUILTYに関わるトピックを紹介します。
以前の記事はこちら
- サステナビリティに向けた実践手引き
- サステナビリティに向けた実践手引き2 ~全体設計とPurpose~
- サステナビリティに向けた実践手引き3 ~全体方針~
- サステナビリティに向けた実践手引き4 ~SAPの構造~
- サステナビリティに向けた実践手引き5~ZERO EMISSION1 as Exemplar~
- サステナビリティに向けた実践手引き6~ZERO EMISSION2 as Enabler~
- サステナビリティに向けた実践手引き7~ZERO EMISSION3 as Enabler~
- サステナビリティに向けた実践手引き8~ZERO WASTE1 as Exemplar~
- サステナビリティに向けた実践手引き9~ZERO WASTE2 as Enabler~
- サステナビリティに向けた実践手引き10~ZERO WASTE3 as Enabler~