デジタルが生み出すインテリジェントなビジネスネットワークがサステナブルな未来を創造する

作成者:SAP Japan イベント 投稿日:2022年8月23日

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SAPの顧客とパートナーのための最大の年次イベントとして、2022年は北米オーランドを皮切りに世界の9都市で開催されるSAP Sapphire。7月12日に開催されたSAP Sapphire Tokyoは、グランドプリンスホテル新高輪 国際館パミールに多くの招待客が集う3年ぶりのリアルイベントとして活況を呈しました。本ブログでは、「インテリジェントかつサステナブルな企業の実現から導き出されるパワー」と題して、海外から来日したExecutive Boardの主要メンバーも参加した基調講演の模様をダイジェストでお伝えします。

予測が困難な時代の成長を支えるビジネスネットワークの重要性

基調講演の冒頭で登壇したSAPジャパン 代表取締役社長の鈴木洋史は、新型コロナウイルス感染症の拡大、気候変動、またサプライチェーンの混乱やインフレなど、予測不能で不確実な状況が次々と発生する世界の現状を踏まえて、企業にとっては変化する情勢に俊敏に対応し、サステナブルなビジネスを実現することが重要な課題であることに言及しました。
その上で鈴木は、SAPが全世界で尽力しているサステナビリティの取り組み「Zero Emissions(排出をゼロにする)」「Zero Waste(ゴミをゼロにする)」「Zero Inequality(不平等をゼロにする)」を紹介し、新たな世界の創造に向けて企業が果たす役割について来場者と認識を共有しました。

SAPジャパン 代表取締役社長 鈴木洋史

鈴木 洋史(Hirofumi Suzuki)
SAPジャパン株式会社​ 代表取締役社長​

鈴木に続いて登壇したSAP Asia Pacific Japanのプレジデントを務めるポール・マリオットは、「私たちを待ち受けている未来は誰も予測することができません。しかし、SAPはいくつかの未来の予想図に備えるお手伝いをすることができます」と話し、その柱として「デジタルトランスフォメーション(DX)」「ビジネスネットワーク」「サステナビリティ」の3つを挙げ、特にビジネスネットワークを強化することの重要性について次のように話しました。
「世界規模のBtoB コラボレーションを実現するSAP Business Network上には、すでに約190カ国から数百万社にもおよぶ企業が参加しています。そこでは多くのメーカー、サプライヤー、物流プロバイダーなどがつながり、サプライチェーンの透明性、レジリエンス、アジリティが確保されています」
その具体例の1つとして紹介されたのが、2016年にSAP Aribaの導入を決定した世界的な空調機メーカーであるダイキン工業株式会社の取り組みです。同社では現在、すべての請求処理の75%がSAP Aribaのネットワーク上で電子化され、間接材購買のコスト削減、購買機能の統合、コンプライアンスの強化が実現しています。また、世界をリードする資源会社であるBHPも、SAP Aribaとのパートナーシップを通じて、ビジネスプロセスをエンド・ツー・エンドでデジタル化し、購買などに関連する新たなシステムを構築しています。
さらにマリオットは、SAPが約1年半前にリリースしたRISE with SAPについても触れ、多くの顧客がデジタルを活用したビジネス変革、またクラウドへの移行を加速していることを紹介。RISE with SAPは、すでにボーダフォン、Wipro、HCLといった企業のほか、日本国内においても日本電気(NEC)やパナソニックなど、世界のリーダー企業を筆頭に2,000社以上の顧客が利用しているといいます。

SAP Asia Pacific Japan プレジデント ポール・マリオット

ポール・マリオット(Paul Marriott)
President, SAP Asia Pacific and Japan

未来に向けたDXの推進におけるパートナーエコシステムの重要性

続いて登壇したSAP Asia Pacific JapanのCOOであるキャシー・ワードは、新たな未来に適応できる企業になるためには、勇気、好奇心、決意が必要であると同時に、未来を予測するテクノロジーが不可欠であることを強調しました。また、ワードとともに登壇したSAP SEのExecutive BoardメンバーでありCTOのユルゲン・ミュラーは、この課題に応えるためのテクノロジー活用について、Now(今やらなければならないこと)、Next(次に向けて何を準備するか)、New(これからやるべきことを予測する)という3つの次元を提示しました。
「企業が今すぐにでも着手しなければならないのは、ビジネスプロセスをエンド・ツー・エンドで可視化することです。このことは、SAP S/4HANAをDXの中核に据えることで実現します。この他にもSAP Business Networkを活用したサプライチェーンの強化や、SAPとパートナーが提供するインダストリークラウドを通じた業界向けソリューションの活用など、ビジネスプロセスの強化を支援するさまざまなテクノロジーが用意されています」
さらにミュラーは、SAPが未来に向けた施策としてAI、ロボット、ディープラーニング、量子コンピューティングの応用に取り組んでいることにも言及。これを受けてワードは、「アジアパシフィックおよび日本では、多くの顧客がNextを現在の課題として受け止め、その解決に向けた取り組みを進めています」と語り、その最新事例としてトラスコ中山株式会社における在庫管理の自動化、サプライチェーンのデジタル化の事例を紹介しました。同社はSAP Business Technology Platform(SAP BTP)の活用や、MROストッカーの導入といったイノベーションを推進する先進的な企業の1つです。
またミュラーは、化学の領域でBtoCビジネスを展開するヘンケルが年間2,000件ほどだったプロモーションを20万件にまで拡大できるようになった事例や、世界最大級の通信テクノロジー企業であるボーダフォンが24カ国にまたがるビジネスプロセスの70%を自動化した事例を紹介しました。これらの事例では、いずれにおいてもSAP BTPとSAP S/4HANA Cloudが活用されています。
これらの事例に関連して、ワードは「こうした取り組みは企業が単独で実践できるものではなく、SAPのエコシステムが重要な役割を果たしています。SAPは広範なパートナーエコシステムの中で、ハイパースケーラーとも柔軟に連携しています」とエコシステムの重要性を強調し、ミュラーも「本日ご参加いただいたパートナーの皆様には、このエコシステムの中でSAP Signavio、RISE with SAP、そしてSAP BTPのスキルをぜひ磨いてほしい」と呼びかけました。

SAP SE Executive Boardメンバー、CTO ユルゲン・ミュラー

左:ユルゲン・ミュラー(Juergen Mueller)
Member of the Executive Board, Chief Technology Officer, SAP SE
右:キャシー・ワード(Cathy Ward)
Chief Operating Officer, SAP Asia Pacific and Japan

イノベーションの共創に向けたNTTとの強固なパートナーシップ

続いて登壇したSAP SEのExecutive BoardメンバーでCustomer Success担当のスコット・ラッセルは、長年のパートナーであるNTT株式会社のHead of Strategic Allianceを務めるブランドン・リー氏を壇上に招き入れました。
「SAPは今年で創業50周年を迎えますが、それをはるかに超えて100年にわたって事業を継続するNTTは、まさに日本を牽引するICT企業です。NTTは現在の破壊的な変化に対して、どのように対応しているのでしょうか?」というラッセルの問いかけに対して、リー氏は次のように答えました。
「グローバルサプライチェーンの混乱、地政学的な衝突、インフレなど、こうした変化は私たちの長い歴史において決して新しいことではありませんが、現在のディスラプションへの対応策としてNTTが取り組んでいることは、大きく2つあります。1つは組織の変革で、これによって私たちの組織全体のアジリティを高めていこうとしています。もう1つはデジタル変革です。この主な目的は事業の可視化を促進していくことにあります。この2つの変革が実現すれば、私たちはどのような変化にもいち早く対応し、未来を鮮明に見通すことができます」
また、続いてラッセルから投げかけられた「効率性やレジリエンスはたしかに重要ですが、それ以上にイノベーションも重要なテーマです。イノベーションの観点でNTTはどのような成果を生み出していますか?」という問いに対して、リー氏が真っ先に挙げたのが「5Gの到来」というキーワードです。
「本格的な5G時代の到来によって、例えばヘルスケアの領域であれば、患者は自宅からでも高度な医療サービスを受けられるようになります。こうしたサステナブルな社会の実現に貢献できることは、NTTのコアバリューだと考えています」
NTTはそのための長期的な投資も行っており、その1つとして新たなコミュニケーション基盤を実現するIOWN構想(アイオン:Innovative Optical and Wireless Network)を提唱しています。これは、これまでの電子工学「Electronics」をベースから、光の科学と応用「Photonics」を中心に据えたネットワーク・情報処理基盤に移行していく構想で、これにより本当の意味でのサステナビリティを実現できるとNTTは考えています。
最後にリー氏は、SAPとのパートナーシップの重要性についても触れ、「SAPのコアバリューはインテリジェントなアプリケーション、NTTのコアバリューはサービスでありインフラです。つまり、私たちのパートナーシップは新たな価値の共創に向けた補完的な関係にあり、同じビジョンの共有はもちろんのこと、さらに長期的な未来を見据えているということです」と話しました。

NTT株式会社 Head of Strategic Alliance ブランドン・リー氏(左)と SAP SE Executive Boardメンバー Customer Success担当スコット・ラッセル(右)

左:ブランドン・リー 氏(Mr. Brandon Lee)
Head of Strategic Alliance, NTT Inc.
右:スコット・ラッセル(Scott Russell)
Member of the Executive Board for Customer Success, SAP SE

広範な社会課題の解決に挑むSAPのサステナビリティの取り組み

再びマリオットとともに登壇した鈴木は、SAPが10年以上前から取り組む「Zero Emissions」「Zero Waste」「Zero Inequality」に実現に向けたイニシアチブについて改めて説明しました。
「サステナビリティは、すべての企業にとって重要な課題です。企業は収益性を高めるだけでなく、環境や社会、そして従業員に対しても大きな責任を負っています。その中で現在の少子高齢化、エネルギー関連の問題など、さまざまな社会課題を解決するためにも、サステナビリティの実現に取り組まなければなりません」(鈴木)
その先進的な事例として、鈴木はまず旭化成株式会社の取り組みを挙げました。マテリアル、住宅、ヘルスケアという3つの事業をグローバルで展開する同社は、すべての事業に共通する理念としてサステナビリティを重視しています。例えばマテリアル事業では、合成ゴム製品のカーボンフットプリントを可視化し、それを顧客と共有するなど、まさに「Zero Emissions」に向けた取り組みをサプライチェーンの中で実践しています。
次に、マリオットからは「Zero Waste」の先進事例として、印刷インキ、有機顔料などで世界トップクラスのシェアを誇るDIC株式会社の取り組みが紹介されました。同社は、ブロックチェーン技術を用いて廃プラスチックのトレーサビリティを向上するために、GreenToken by SAPのパイロットプロジェクトを開始しています。これは、リサイクル原材料が製造・販売・消費、そして再利用される一連のプロセスを可視化し、消費者と共有することで、廃棄物の削減に貢献しようとする試みです。
また「Zero Inequality」の事例についても、鈴木はSAPジャパンが進めている新たな取り組みを紹介しました。これは一般社団法人グラミン日本、株式会社MAIA、SAPジャパンが発足したコンソーシアムの活動を通じて、愛媛県で2025年までに500人の女性のデジタル人材を育成し、就労支援を目指すというものです。この活動を通じて、SAPジャパンはITのリスキリングを行い、新たな就労の機会を生み出すと同時に、女性の働き方の多様化に貢献していきたいと考えています。

SAPの最新ソリューションがビジネス変革をトータルにサポート

SAP SEのExecutive Boardメンバーとして最後に登壇したCFOのルカ・ムチッチは、「分断と二極化が進む世界において、サステナビリティこそが21世紀に生きる私たちの最大の課題」であることを改めて強調しました。

SAP SE Executive Boardメンバー、CFO ルカ・ムチッチ

ルカ・ムチッチ(Luka Mucic)
Member of the Executive Board, Chief Financial Officer, SAP SE

サステナビリティに関連する個々の取り組みを成功へ導くためには、バリューチェーン全体をうまく舵取りしていく必要があり、それはテクノロジーをベースとしたデータ主導型のアプローチによって可能になります。測定できないことは、行動に移すことができません。すべてのビジネスに共通するこの課題に対して、SAPのテクノロジー、ソリューションはサプライチェーンの透明化など、本当の意味での改善をもたらすとした上で、ムチッチは次のように話しました。
「ビジネスの変革は、やはりその中心であるビジネスプロセスの改善からスタートすべきです。SAPは1972年の創業以来、企業変革の支援に向けて、物理をデジタルの転換するさまざまな取り組みを進めてきました。この中から生まれた最新ソリューションであるSAP Signavioは、単一の企業にとどまらないエンド・ツー・エンドのプロセス改善、インテリジェンスでシームレスなサプライチェーンを支えるスイート製品となるはずです」
そして最後にムチッチは、こうしたビジネス変革におけるビジネスネットワークの重要性を指摘し、「SAPはSAP Business Networkの活用を通じて、皆様が相互に信頼できるパートナーとしてネットワーク上でインテリジェントにつながり、互いにサステナブルな企業になれるようにお手伝いをしていきたいと考えています」とSAPのコミットメントについて言及し、SAP Sapphire Tokyoの基調講演を締めくくりました。

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