サステナビリティに向けた実践手引き12~ZERO INEQUALITY2 as Enabler~

作成者:福岡 浩二 投稿日:2022年8月23日

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今回は、SAP Sustainability主要施策のうち、”ZERO INEQUALITY”の社外を巻き込んだ活動(Enabler)を中心に紹介していきます。

共通テーマとして、なかなか消費者から見えにくいバリューチェーンの上流での社会問題(公正な取引や食の安全性)に取り組む事例を取り上げます。

1.コートジボワールでのカシューナッツ生産・加工を守る仕組み

カシューナッツは、乾燥した砂地でも生育可能であるため、西アフリカでもその栽培が広がって、コートジボワールも世界有数の生産国の1つです。

但し、多くが殻付きのまま海外加工業者に渡り、国際緑化推進センターによると、加工後の販売価格の15%しか生産者には届かないといわれています。

そこでコートジボワール政府をはじめとして、カシューナッツを現地で加工して質の良い状態で届けることで、社会問題になっている雇用の回復と、品質に応じた正当な利益を得ようというチャレンジをしています。

コートジボワールでカシュー ナッツ生産/販売事業を営むCashew Coast社も、その1つです。

簡単に収穫から販売までの流れを以下に示します。

まず、自国内の提携農家(近隣地域で協同化)が、木からカシューナッツの実を摘み取って、そこからナッツを手で分離します。(下図のようにくり抜くイメージ)

各農家が収穫したものを集めて自社の中央倉庫に直接送り、選別、計量、袋詰めしたうえで、殻を取り除く加工工場に送られて、最終的に国外に販売されていきます。

収穫から加工までの品質を維持するために、以前は上記の工程を紙に手書きで記録していました。


ところが規模が大きくなると、データを集める負荷がかさみ、また見たいときにすぐ情報がみれないという課題を抱えていました。

Cashew Coast社は、SAPと共同でこの紙による手続きをデジタル化し、より効率的でタイムリーにデータを見れる仕組みを構築しました。

この仕組みは、SAP Business Technology Platform (BTP)で開発されたSAP Rural Sourcing Management (RSM)と呼ぶソリューションで実現しています。

これによって、収穫を担う農家たちはスマホを使って簡単にデータを入力することで、時間を有効に使えます。また、全体を見る方もその集計を即時に見る事が出来、意思決定に役立てています。

今回は紙処理のデジタル化が中心ですが、次のフェースとして、栽培から販売につながるトレーサビリティの品質を高める仕組みづくりを進めています。

以下に本事例を紹介するビデオが公開されていますので、興味を持った方はご覧ください。

2.マグロの公正取引(フェアトレード)と安全性をBlockchainで実現

この事例は、まさに1の事例で次に取り組もうとしている「トレーサビリティ」を高めることを狙いにしています。

米国に本社を持つ、水産業及び食のサービスを提供するBumble Bee Foods は、 SAPのBlockchain サービスを使用して、インドネシアで獲れたキハダマグロが食卓に届けられるまでの経路を可視化して、自社の公正な取引(フェアトレード)と食の安全を実現しています。

消費者から見ると、スマートフォンを使用して該当製品パッケージの QR コードをスキャンするだけで、 キハダマグロの漁獲からの履歴を簡単に見ることができるようになります。
具体的には、漁獲量、捕獲ポイント、それを捕獲した漁業コミュニティなど、魚から市場への旅に関する情報を即座に提供し、公正(第三者のフェアトレード漁業認証を獲得)、鮮度を検証するための貴重な情報を提供します。

 

SAPのおかげで、マグロを捕獲したその瞬間から世界中の目的地に届けられるまでを追跡できるようになりました。
マグロ1匹ずつの来歴が分かるだけでなく、生態系のずっと先につながっている人々の暮らしにまで良い影響を与えられるのです。
Bumble Beeはシーフード製品のトレースにおいて長い間業界をリードしてきましたが、SAPのブロックチェーン技術の導入により、消費者や顧客と完全に透明な関係を構築する当社の取り組みがさらに強化されました。
それにより、お客様への魚は新鮮さを保ち、国際水産物持続財団(International Seafood Sustainability Foundation)への約束どおり公正に資源が供給されることを保証できるのです。

Bumble Bee Foods社の最高情報責任者、トニー・コスタ(Tony Costa)

上記コメントのとおり、生産者・検査側も、ブロックチェーン技術を通じてデータを保存することで、それを参加者が透明性を持って見ることができるため、改ざん困難なサプライ チェーンの履歴を実現できます。

最終消費者と一番遠い位置にいるマグロ漁業に携わる方々も、公正な取引と安全な検査で食卓まで提供されていることを知ることで、安心と満足度を高めることが出来ます。

これらのストーリは動画でも公開されています。ぜひ関心を持った方は下記よりご覧ください。

 

改めてですが、今回選んだ事例は、バリューチェーン上流での社会的な不正(特に個人や小規模組織に対する不公平)や、消費者にとって見えにくい食の安全を、テクノロジーで是正したケースです。

次回は同じく ZERO INQUIALITYをテーマに、経営における従業員という視点でお届けしたいと思います。


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