サステナビリティに向けた実践手引き13~ZERO INEQUALITY3 as Enabler~
作成者:福岡 浩二 投稿日:2022年9月5日
今回は、SAP Sustainability主要施策のうち、”ZERO INEQUALITY”の社外向けの活動(Enabler)を中心に紹介していきます。
最近よく、「ダイバーシティ経営」という言葉をよく見かけます。とても重要な考え方で総論としては多くの方が賛同すると思います。
ところが、BCGが行った2021年の調査によると、多くの企業でダイバーシティ プログラムを実施しているにもかかわらず、従業員の 75% が個人的なメリットまで感じていないそうです。
あくまで仮説ですが、従業員のニーズや想いを汲んでいない一方的な活動になっているのかもしれません。
これはダイバーシティ経営に限らず、Sustainabilityでは個々の価値観が問われる以上、従業員への教育(知識を詰め込むのでなく、関心を引き出し能力を高める)は必要不可欠な要素です。
教育にも、目的によってややアプローチが異なり、出来る限り多くの方に学ぶ機会を与えることと、本当にやりたいことを見つけ出して輝かせる、底上げ型と深堀り型のタイプがあります。
SAPのケースでは、オンラインで常に学べるコースを多数用意し、またやりたいことを伸ばすために、自社のPurposeも意識した「社会起業家育成」を重要な施策として実行しています。
この2つの視点を意識して、教育に関する社外の組織も巻き込んだ取り組み事例をいくつかご紹介したいと思います。
1.欧州でのデジタルスキル育成プログラムMeet and Code
まず、若年層(16-29歳)のデジタルスキル普及状況を表す下の図をご覧ください。、
国によって濃淡が分かれていることがわかり、まだ欧州全体として浸透しているとは言えません。
そこでSAPは、デジタルデバイドを解消するために、Meet And Codeと呼ぶ活動を社外向けに始動しました。
特に、同じ志を持ったTechSoup Europe と Haus des Stiftens と協働で、小さなころからデジタル テクノロジーに触れてもらうために、楽しく相互対話型のワークショップを実施してきました。
すでに6年以上も続けており、今ではヨーロッパ最大のデジタル スキル プログラムになりました。
しかも、サーベイ結果によると、参加者の IT スキルが 40% から 60% に向上し、さらに84% がコーディング全般についてもっと学びたいと回答してくれています。
上記公式サイトでは、実際に受講してプログラムコンテストにも優勝した16歳の女性のストーリー(こちら)なども載っており、ぜひ関心を持った方はアクセスしてみてください。
2.ピープル大学(University of the People: UoPeople)への出資
アメリカに「授業料無料で話題の大学」があることはご存じでしょうか?
「ピープル大学」と呼ばれる、2009年にイスラエル人起業家のシャイ・レシェフ氏(Shai Reshef)により設立された、非営利の高等教育機関です。
シャイ氏は、高等教育はすべての人にとって基本的な権利であるという信念に基づいて設立し、投稿時点では世界 200 か国 117,000 人を超える高校卒業生が登録してきました。
実は、ユニセフのデータによると、難民の中で高等教育を受けることができるのはわずか 3% です。ピープル大学は現在、10,000 人以上の難民を登録しており、これは、米国の他のすべての大学を合わせた数よりも多い数です。
SAPは、まさにこのような教育の機会が十分に与えられていない難民や避難民の若者のために、新しい奨学金プログラムの提供を2022年に開始しました。具体的には、コンピューター サイエンスや経営学のコースを対象としています。
「(私は)国際教育の分野で 30 年以上を過ごした後、伝統的な大学では、手頃な価格でアクセスしやすい高等教育を必死に求めている世界中の何百万もの人々の教育ニーズを満たしていないことに気付きました。
だからこそ私は、世界中のできるだけ多くの人々が教育の夢を実現できるように、高等教育の門を大きく開く、まったく新しいタイプの大学を作ることにしました。
SAP をパートナーとすることで、私たちの世界は、テクノロジーによる教育への共通の取り組みとなります。私たちは前例のない時代の真っ只中にいますが、SAP の寛大なサポートのおかげで、これらの学生への教育の先にある夢が現実になることを信じています。」
ピープル大学創設者 兼 同学長 シャイ・レシェフ氏
投稿時点では、既にSAPが提供を開始したプログラムの応募は完了してますが、ぜひこの取り組み自体に関心を持った方はピープル大学の公式サイトにアクセスしてみてください。
3.ある若者が叶えた宇宙への夢
フリン・ドハティ氏は、宇宙ロケットベンチャーで有名なロケットラボ(Rocket Lab)で、学生インターンとして研究を行い、UC Engineering Final Year Projects Showcase で 2020 People’s Choice Award を受賞しました。
彼は、人類に大きな影響を与える分野でスキルを適用することにより、今日と明日の地球上のすべての人の生活を改善したいと考えています。
卒業後も、幼いころからの夢がかなって、航空宇宙産業で働いています。
ドハティ氏の夢をかなえるきっかけとなったのは、SAP が支援するYoung ICT Explorersプログラムへの参加でした。
このプログラムは、もともとはSAP が立ち上げ、CSIRO Digital Careers と The Smith Family といった志を共にする団体が、オーストラリア全土の産業界と大学のパートナーの協力を得て支援しています。
そのアクセラレーションプログラムでは、世界が抱える問題を提示したり、テクノロジーを使用して解決を探ります。
とくに、社会的に厳しい立場に置かれた若者が出来るかぎり参加できることを目指しています。
ドハティ氏のように、オーストラリアとニュージーランドの約 850 の学校に所属する約 8,000 人の若者が、 Young ICT Explorers コンテストを通じて、自分がやりたいこと、方向性、そして専門家からのアドバイスを受けています。
今回取り上げた3つの事例のように、まだまだ世界中で志はあってもその教育機会を受けられていない層が相当数います。
改めて、冒頭に触れたデジタル人材教育の話に戻ります。
自身で学ぶことも勿論重要ですが、社外で教えることもそれ以上に教育的な効果が高いと思います。
SAP Japanでも、定期的にプログラミングなどICTを教えるCSR活動を行っていますが(こちらの記事参照)、単なる社会貢献活動にとどまらず参加者自身のデジタルスキルを高めることにもつながります。
社内の教育コンテンツがなかなか活用されない・・・という課題をお持ちの方は、ぜひ社外に目を向けてみてはいかがでしょうか?
以前の記事はこちら
- サステナビリティに向けた実践手引き
- サステナビリティに向けた実践手引き2 ~全体設計とPurpose~
- サステナビリティに向けた実践手引き3 ~全体方針~
- サステナビリティに向けた実践手引き4 ~SAPの構造~
- サステナビリティに向けた実践手引き5~ZERO EMISSION1 as Exemplar~
- サステナビリティに向けた実践手引き6~ZERO EMISSION2 as Enabler~
- サステナビリティに向けた実践手引き7~ZERO EMISSION3 as Enabler~
- サステナビリティに向けた実践手引き8~ZERO WASTE1 as Exemplar~
- サステナビリティに向けた実践手引き9~ZERO WASTE2 as Enabler~
- サステナビリティに向けた実践手引き10~ZERO WASTE3 as Enabler~
- サステナビリティに向けた実践手引き11~ZERO INEQUALITY1 as Exemplar~
- サステナビリティに向けた実践手引き12~ZERO INEQUALITY2 as Exemplar~