研究開発に押し寄せる環境変化と日本企業の現状


化学業界に関する連載の2回目は、これまでは化学製品の競争力の核であるがゆえに、いわゆる管理や効率といった視点からはとらえられることの少なかった“聖域”である「研究開発」領域が抱える課題と、今後目指すべき研究開発マネージメントの方向性、およびその実現に貢献するSAPのツールをご紹介していきましょう。

グローバル化の中で“聖域”に押し寄せる変化の波

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化学業界をはじめとする研究開発型企業にとって、研究開発への投資のバランスは非常に重要で、しかももっとも頭を悩ませるテーマの1つです。真にイノベーティブな研究開発は、一朝一夕で利益につながるものではありません。毎四半期・毎年の利益を追求する一方で、企業としては確実に将来の利益を生み出してくれる研究開発もしっかりと押さえていく必要があります。このバランスをいかに最適化し、自社の経営の両輪として稼動させていくかが、経営者や現場のマネージャーに課せられた最重要課題と言えるでしょう。

近年、化学業界においても業務の効率化や組織の合理化が図られる中で、長らく“聖域”を保ってきたのが研究開発の領域です。こうした領域では、研究開発者のクリエイティブな発想や活動が優先されるため、いわゆる企業としての労務管理上の制約とは比較的無縁な世界でした。しかし近年、この聖域にも以下のような2つの大きな変化の波が押し寄せているのにお気づきでしょうか。

①   複雑性の増大:グローバル化に伴うニーズやスタッフの多様化

グローバル化の進展に伴い、海外企業や海外の生産拠点を持つ日本企業からは、現地の規格に準じた仕様や製品が要求されてきます。研究開発の拠点もテーマも世界規模で増えていき、さらに社外の大学や研究機関、顧客との協働も増えており、これらの拠点や組織間のコミュニケーションも複雑化する一方です。

②   スピード化:市場の変化や競合企業への迅速な対応

日本の化学企業は自動車や家電、ハイテクなどのコンシューマー市場からの要求が非常に高く、日常的に新製品開発や新しい用途を満たすための開発スピードのアップを迫られています。加えて、近年はアジア企業も力を伸ばしてきており、こうした地元企業との現地での競争に打ち勝つには、研究の質だけでなくイノベーションのスピードそのものが要求されてきます。

日本の特殊性を脱して、日々の利益を確保できるマネージメントを

Group Of Business People In Conference Room, Businesswoman Pointing At Presentation Board研究開発領域に押し寄せる大きな環境の変化を、日本企業も手をこまぬいて見ているわけにはいきません。これまでのように、研究開発者の自主性や「とにかく良いものを開発するのが大事」と任せきりにしておくことは、もはや許されません。複雑化とスピード化の進む市場で生き残るためには、真にイノベーティブな研究の一方で確実に日々の収益を担保できる、バランスと効率の良い研究開発マネージメントを確立する必要があるのです。

そこには、欧米型の利益追求型のマインドに基づいた研究開発管理の思想が不可欠です。彼らは常に明確な基準に基づいて、それぞれの研究開発プロジェクトの可能性とリスクを評価・判断し、必要とあればかなりドラスティックな取捨選択もいといません。選択と集中を研究開発の段階から厳しく管理するのです。

文化の違いということはもちろんありますが、この点日本の場合は「今までやってきたから」とか、「せっかく30年もかけて研究してきたんだから」といった理由で、何となく継続されているプロジェクトが決して少なくありません。また、将来生み出す潜在的経済価値の大小にかかわらず研究員が投入されていることもあります。もちろん、こうした情に厚い風土は日本企業の良さの1つではあります。しかし、グローバルでの生き残り競争が激しさを増す中、やはり企業として本当に儲かる研究を効率的にやっているのかということに、トップマネージメントから現場のプロジェクトマネージャーまで、すべての人が関心を持たなければならない時代に来ているのです。

標準化/自動化されたプロジェクトマネージメントを実現するSAP Product Lifecycle Management (SAP PLM

ここで誤解していただきたくないのは、決して「儲からないイノベーションはやめてしまえ」といった乱暴なことを言っているのではないということです。ご存じのように研究開発には、今は何に使えるかわからないが可能性を探っていく息の長い研究と、目前の利益に直結する短期決戦型の研究とがあります。重要なのは両者のバランスを常に最適かつ動的に配分し、短期的な収益と長期的な利益をトータルで最大化することなのです。

そして、その実現には「グローバルで標準化された評価・判断基準と、効率的で強力なITツール」が必要です。これまで一般に研究開発プロジェクトの評価や判断は、個々のプロジェクトマネージャーに委ねられていました。特に専門性の高い研究開発では、経営層がプロジェクト内容について深く判断することが難しく、「わかっている」誰かに任せきりといった属人的なプロジェクト評価が蔓延していたのも事実です。

こうした評価、判断を客観的かつ標準化された基準に基づいて実践し、研究開発から製品企画、製造、アフターサービスまでの製品関連プロセス全体にわたってトータルに管理できるソリューションが、SAP Product Lifecycle Management(SAP PLM)です。SAP PLMはアイデアの収集から社内外との協業による研究開発プロジェクト進行、製品リリース。さらにユーザーからのフィードバックを集めて改良を加えていくといった一連の製品開発ライフサイクルを、あらかじめ自社に最適化された評価・判断基準と手続きによって自動的に実行します。加えて、管理しているプロジェクトの中の将来性やリスクについても、同様に判断できるインフラを備えているのが大きな特長です。

SAP PLMを利用することによって、これまでのような「発言力のある人が続けているから」とか「長年続いているから」といった不明瞭な理由ではなく、属人性を排したグローバル統一基準によるプロジェクトの評価・判断が実現できるようになります。たとえば、基準を満たしていないプロジェクトを廃止するとか、もしくは同じようなプロジェクトが別々の場所で走っている場合、それらを取捨選択、統廃合するといった判断、管理も効率的かつ自動的に行えるのです。

プロジェクトの状況やリスクを「見える化」して迅速な判断を可能に

SAP PLMの機能について、実際の操作画面を見ながらいくつかご紹介していきましょう。下図は、ある医薬品メーカーで実際に利用されている管理画面です。医薬業界では激しい開発競争の中で、市場の求める最新の医薬品を迅速に開発することを生命線と考え、研究開発に莫大な投資を行っています。このプロジェクト管理にSAP PLMを活用することで、最大限の研究開発効果とリスクの最小化を実現し、収益性の高い研究開発を可能にしています。

すべてのプロジェクトを一枚のダッシュボード上でトータルに管理

この画面では、それぞれの医薬品開発プロジェクトの進ちょく状況や予実比較などを1つのダッシュボード上で統合的に管理しています。各々の研究開発フェーズに入る前の段階から、実際にプロジェクト化された後の進ちょく状況の把握まで、現在活動しているプロジェクト全体の状況をトータルに可視化することが可能になっています。

SAP PLMの管理モジュールは各個別プロジェクト管理の仕組みと統合されているため、データの集計作業をそのつど行うことなく、プロジェクトの状況、課題、リスクをタイムリーに分析可能です。

また問題がある場合は、ダッシュボード上に赤いアイコンが表示されるので、管理者はそれをクリックするとプロジェクトの詳細画面に飛んで、さらに状況を精査することができます。

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図:プロジェクト・ポートフォリオ管理

あらかじめ設定された項目を選ぶだけでプロジェクトのリスクを判定

SAP PLMには、プロジェクトのリスクや規模をあらかじめ入力したデータをもとに判断する予見分析的な機能も備わっています。プロジェクトの担当者は画面右に開いた質問形式のシートにあらかじめ設定された「投資予算規模」、「プロジェクト期間」などの項目を、該当する選択肢を選んで登録するだけです。あとは入力した回答をもとにSAP PLMがプロジェクトのリスクを分析し、アイコンで危険の度合いを示してくれます。

リスクなど数字では表現するのが難しく、また回答する人によって評価が変動しがちな項目を、あらかじめ設定された質問形式を用いることで、標準化された基準に基づいて回答させることができます。この回答を定量的に評価して、結果を「○・△・□」の赤、黄色、緑の信号で表示した一覧レポートとして、状況を視覚的にわかりやすく表示させることが可能です。

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図:信号の定義~定性的・定量的な情報に評価基準を定義

SAP PLMについては、より詳しい資料を豊富にご用意しています。関心を持たれた方はぜひお気軽にお問い合わせください。次回は「ITを活用したグローバル経営指標管理による競争力強化」についてお話しする予定です。

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