サステナビリティに向けた実践手引き15~Holistic Steering and Reporting as Enabler~

作成者:福岡 浩二 投稿日:2022年9月26日

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今回は、業績評価をテーマに、国際的に収斂されつつある非財務データ開示の動向について触れてみたいと思います。

この領域は流動性が高いので、あくまで2022年9月26日時点での情報とご理解ください。

まず、収斂されつつある、ということは裏を返すとそれまではバラバラだったという言い方も出来ます。収斂の歴史は複雑で、覚えること自体は実践的でないので、割愛します。

ただ、主要なフレームワークについては経産省による下記レポート抜粋で示しておきます。実務の担当者でなければ流し見で構いません。(逆に言えば担当者はその経緯を追いかけるだけでも大変です・・・)

制度開示や国際的なサステナビリティ開示基準について(2021/11 経産省)

 

上記から見えてくるのは、まだ国際的には標準化されていないことと、個別分野としては「気候変動」と「人的資本」を経産省は重要視しているということです。

上記で触れた以外にも国際的に名の知れた(実際統合報告書でも引用されている)フレームワークはありますが、今はそれが”ISSB(International Sustainability Standards Board)”に収斂されつつあります。

 

ISSBによる標準化の状況

改めて、多くのフレームワーク乱立を経て、今はIFRS財団が2021年末に設立したISSB(国際サステナビリティ基準審議会)が非財務に関連する国際的な開示項目の標準化を進めているとご理解ください。

この組織が2022年3月末に、第一次草案として、
①サステナビリティ関連の財務情報開示
②気候変動開示項目
を公開し、幅広く意見を求めて(7月末で一旦締め切り)2022年末までに新基準を発行する、というのが今のスケジュールです。(ISSB発表サイトはこちら

その内容ですが、ざっくりいえば、従来使われてきた主要な方法論を意識したものです。

具体的には、①についてはSASB(Sustainability Accounting Standards Board:サステナビリティ会計基準審議会)、②についてはTCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosure:気候関連財務情報開示タスクフォース)をベースにしています。

TCFDについて補足すると、経産省が以前より関わっており、国内でTCFDコンソーシアムが2019年に設立されて、開示のガイドラインなどが整備されてきています。

2022/8/25時点の集計値は下図のとおり、国別にみて日本が加盟数世界一です。

イメージ

なお、具体的な企業名は公式サイトだけでなく、経産省もこちらで適時Updateしていますので、興味を持った方は訪れてみてください。

 

話をISSBの草案に戻します。意見募集についてですが、経産省が取りまとめた意見はこちらで公開していますので、もし詳細について関心を持った方は覗いてみてください。

ここではその詳細に踏み込まず、実践を重視してインパクトのありそうな論点を切りぬくと、以下の通りです。(ここは企業の立場によって濃淡は変わってきますので、ご注意ください)

①業界別に分けた標準化→SASBは米国発のため、日本の業界慣習との調整が必要

②GHGプロトコルSCOPE3開示の義務化→企業によっては収集から負担を強いる

特に、今世界中で話題になっているSCOPE3の取り扱いについては、業界・個社にとってはインパクトが大きいかもしれません。(念のためですが、開示要請時期までは現時点では未定)

このあたりはややテクニカルかつ業界固有の動向にも絡みますので、これ以上の深堀はここでは控えておきます。

ただ、製造業だけでいえば、下記の2つのガイドラインがSCOPE3の取り扱いに国際的に影響を与えつつあるというトピックだけは伝えておきます。関心のある方はそれぞれ訪れてみてください。

 CDPのSCOPE3ガイドライン

 WBCSDのPathFinder

 

今回は、非財務の外部開示に関わらない方にとっては、やや固有名称が多くてとっつきにくかったかもしれません。

ただ、今後財務開示でのIFRS(国際会計基準)のような動きが非財務でも進行中であり、その担い手はIFRS財団が作ったISSB、という動向はおさえておいた方がよいと思います。

そして何よりも、外部報告と内部活用は全く別物でなく、すべては「企業価値向上」のもとで生じている国際的なダイナミズムである点はご理解ください。

次回は、今回触れられなかった「人的資本」と、これらの非財務データ管理についてSAPが提供するソリューションについて触れてみたいと思います。

 


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